↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者かわいい ~知らんけど、たぶん猫ちゃんがオワコン世界を救うお話~  作者: PYON
第三章 アルゴス王国第五王女セレス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/58

仮面魔女シャーリー・メルク01

 ルシアンはレオンと握手を交わす。作り笑いを浮かべながら、あの頃と同じように爽やかさを装っていた。でも、もう心は微動だにしない。全然ときめかない。胸がざらつくだけだ。

 あの頃のわたしは、この笑顔に騙されていたのか。いや、騙されたいと思っていたのかもしれない。目を細めてこちらを見てくる視線は、やっぱり薄汚い。身体を値踏みされるような、ぞわりとした感覚。

「あなたは?」

「仮面魔女と呼ばれているわ」

「そうですか。それにしても美しい……。仮面を取っていただけませんか」

 その声色。人の心を試すような、底の浅い甘さ。ほんとうに、昔はこんな台詞に頬を染めていたのか。思い出すたびに、自分が情けなくなる。

「それは遠慮しておきます。この仮面はわたしの心を隠しているの」

「そう、ではあなたはわたしの護衛として王都までご一緒願えませんか。わたしはこれから、王都に現状を報告しに行くのです」

 やっぱり逃げるのね。王女を置いて、兵を見捨てて。あのときと同じ……責任から逃げる背中。

「わたしたちは三人でひとつのグループ。……いいえ、四人ね」

 机の上で、猫が「にゃ」と鳴く。かわいいの頭をなでる王女を横目に、わたしは冷ややかに言い放った。

「残念です。……でも無理はなさらず」

 軽薄にウィンクしてみせるルシアン。本当ならその眼球を氷の槍で貫いてやりたい。

「ええ、ありがとうございます」

 唇だけで笑って返す。心の奥では……いつか必ず殺す、と刻む。

 

 ルシアンは本来、才能のある男だった。剣の腕も、魔法の素養も、人を惹きつける力も。だからこそ、余計に腹立たしい。努力すれば強くなれたはずなのに、怠け、甘え、女にすがりついて生きている。わたしが惹かれたのは、きっと「可能性」だけだったのだ。

「では、わたしは準備がありますので……。一刻を争うのです」

 アントンさんへの挨拶すらなく、背を向けるルシアン。その背中を見ながら、氷のように冷たい怒りが胸に沈んでいく。

 レオンが王女に戦況を尋ねていた。わたしも机に歩み寄り、王女のそばで耳を澄ませる。今は、この場に残った者だけが頼りなのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。