辺境伯ラングレー家長男ルシアン02
やっぱりポンコツ王女は使えないな。メガネっ子で、しかも"ぼくっ子"。本当は趣味じゃない。けれど、守備範囲を大きく外れているわけでもない。だから、この王女をものにしてやろうと思っていたのに……完全に見込み違いだった。
バーンが負けた時点で打つ手なんてなかったのだ。どうせ誰がやっても同じ。なら、王女に指揮を押し付けておけば俺の責任にはならない。超ラッキーだ。
エルミナとの関係も最近は微妙になってきた。なら、王女に乗り換えるのもありだと思ったが……やっぱり逃げのびるのが先決だな。王女にはこの砦と心中してもらおう。俺は王都に戻って、エルミナのご機嫌を取ればいい。彼女は気まぐれだから、甘い言葉をかければまた元に戻るだろう。
その時、部屋をノックする音がした。
「傭兵の志望者を連れてまいりました」
「いまごろ?」
「ええ、戦士と魔導士と老人の三人です」
「入れ」
ドアが開き、三人が姿を現す。
剣を腰に下げた青年。鍋をかぶりフライパンを手にした奇妙な老人。そして、純白に金の刺繍が入ったローブをまとい、仮面で素顔を隠した魔導士。
「俺は騎士レオン。この砦の窮地を聞いて駆けつけた。すぐにでも戦場に案内してくれ」
なるほど、腕に覚えのある平民騎士か。見た目は悪くない。
「わしはアントン。料理人じゃ。といっても、そこらの若いもんには負けん。料理は格闘技なんじゃ」
間違いなく、戦場に出たら瞬殺されるタイプだな。だがまあ、肉壁くらいにはなるか。
「わたしは仮面魔女。氷の魔法が得意だわ」
その声にぞくりとした。仮面に隠れているが、アーモンド型の瞳、艶やかな赤い唇。間違いなく美人だ。しかも、俺の好みど真ん中。それに……どこかで見覚えがある気もする。気のせいか?
まあいい。いずれにせよ、渡りに船だ。この砦のことは王女とこいつらに押し付け、俺は逃げのびればいい。
「わたしは辺境伯代理、ルシアン・ド・ラングレーだ。助太刀感謝する」
俺はわざとらしく手を差し伸べ、騎士の青年と握手を交わした。
よしよし、これでまた俺の責任は薄まったな。




