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勇者かわいい ~知らんけど、たぶん猫ちゃんがオワコン世界を救うお話~  作者: PYON
第三章 アルゴス王国第五王女セレス

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アルゴス王国第五王女セレス04

「兵士に大きな被害が出ているみたいじゃないか」

「どうするんだ」

「次の手は、さっき"ぼくの力があれば大丈夫"とか言ってたよな」

 貴族たちは戦況を知り、ぼくに詰め寄ってくる。でも、もう……打つ手なんてない。

 魔力は枯れた。いや、もし残っていたとしても、あの四天王には勝てない。こちらには飛車も角もない。棋士なら負けを認める局面。それに、これはゲームじゃない。

「みんなを……逃がして。町の人たちも、残った兵士も……」

「なにをいまさら言い出すんですか。そんなことは不可能です」

「全部、あなたの責任ですよ。わたしたちは戦況を維持していたのに、あなたが出しゃばって混乱させたんだ!」

 ルシアンの声が頭に響く。責任を押し付けられても、もう反論する気力すら湧かなかった。本当に、どうでもよかった。

「そうだ、私は王都に急報しなければならない!」

 ルシアンは勝ち誇ったように叫ぶ。

「兵たちに足止めをさせろ! 私はすぐに出発する! お前たちは護衛につけ!」

 ……好きにすればいい。どうせ、王国は魔王軍には勝てない。ぼくは机に突っ伏しかけていた。


 そのときだった。

 ドアが勢いよく開き、金色に輝く毛並みが滑り込んできた。ひらり、と机に飛び乗った小さな影。

「……猫ちゃん?」

 金色の猫ちゃんはまっすぐぼくの顔を覗き込み、柔らかく頬をすり寄せてきた。その毛並みの温かさに、不思議と力が戻ってくる。

「勇者魔法、がんばれにゃん」

「……え?」

 その子は小さな声で、はっきりそう言った。ぼくは思わず撫でてしまう。

「ぼくは勇者、かわいいだにゃん」

 その言葉に、全身に電流が走った。勇者?この子が……?

 状況を呑み込めずにいると、続けざまに背後から聞こえた。

「それで、戦況はどうなってるんだ。すぐにでも行けるぜ」

 若い戦士が、気安く声をかけてきた。

 その瞬間、アカシックレコードの盤面が光を放つ。新しい駒が置かれる。空白だった場所に、鮮やかにピースがはまる。

 詰みだと思っていた盤面に、思いもしなかった"大駒"が現れたのだ。

 これなら勝てる。ぼくは顔を上げる。まだ戦える。いや、勝利の未来が見える。

 絶望に沈んでいた胸に、熱い炎が蘇るのを感じながら……ぼくは戦略を練り直すのだった。


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