02
「そろそろ到着にゃん」
かわいいが尻尾をぴんと立てて言う。俺たちは砦の近くまで来ていた。
「あの、城壁に囲まれた町がアンガスの町よ」
シャーリーが指をさす。岩山を生かして作られた砦と町。防衛拠点というより、要塞都市に近い。シャーリーは何度か仕事でここに来たことがあるらしい。拷問機関の仕事だったそうで……正直、あまり詳しくは聞きたくない。
それにしても、この女。美人で頭もよくて魔法も使える。道にも詳しい。隣で腹を鳴らしている、料理も作れないじじい……アントンとは雲泥の差だ。
「そろそろね」
そう言ってシャーリーは懐から仮面を取り出し、顔にかけた。
「なんで仮面が必要なんだ。もう、おまえは拷問機関の人間じゃないんだろ」
「ええ、ちょっと訳アリでね。この砦には素顔を見せたくない人がいるの」
「そうか」
もしかして、この町の出身か? あるいは昔の同僚でもいるのか。でも、仮面をつけていたら余計に目立つんじゃ……まあいい。余計な詮索はやめておこう。
「シャーリーは仮面しても美人にゃん」
猫ちゃんはシャーリーの足元をくるくると回る。
「ありがとう、猫ちゃん」
シャーリーは猫を見下ろして微笑む。そんなやり取りをしているうちに町の門に到着する。
「なんだ、おまえらは」
槍を持った衛兵が声を張った。
「ああ、この町を救いに来た。魔王軍に攻められていると聞いてな」
「ああ、傭兵か? 確かに魔王軍と戦争状態だ。今はひとりでも戦力が必要だ。……身分証を出せ」
俺たちはそれぞれ身分証を出す。もちろんイゴールさんが用意してくれた偽造のものだ。裏社会の人間らしく、こういうのは朝飯前らしい。
役人は一通り確認してから頷いた。
「入ってよし。傭兵の受付はここをまっすぐ行った騎士団の本部にある」
「わかった」
俺たちは城門をくぐり、騎士団の本部へと向かう。
まさかこのあと、戦場で地獄が待っているなんて、このときの俺たちはまだ知らなかった。




