01
俺の名はレオン・ハートランド。二十八歳。王国騎士団所属、中隊長を務めている。
子供のころ、俺の夢はただひとつだった。
白銀の鎧をまとい、民を守る誇り高き騎士になること。
幼いころから、俺は剣の神様に愛されていた。剣を習い始めたらすぐに頭角を現した。どんな相手も俺の剣の前では無力だった。大会に出れば常に優勝、剣聖だの天才だのと囁かれる。
その力が、俺を必然的に騎士団へと導いた。だが――現実は夢の延長線にはなかった。騎士団は国を守るための集団ではなかった。俺が信じていた「民の盾」ではなく、「貴族と王族の護衛兵」だった。
街角で貴族に刃向かう者がいれば、それを叩き潰すのが俺たちの仕事。人々にとって騎士は希望であるはずなのに、現実は恐怖の象徴だ。
もちろん、魔獣の討伐や辺境の防衛も仕事にはある。だがそれも「貴族の領地を守るため」に過ぎない。
しかし、俺はあきらめなかった。できるだけ、俺は民のための騎士であろうとした。平民の出身ながら、誰よりも剣を振るい、功績を積み上げ、中隊長にまで上り詰めた。
だが――所詮は平民。中隊長でも異例のことなのだ。そして、重んじられるのは、剣を振れぬ貴族の子弟たちだ。彼らは最前線に立たず、俺たち平民だけが血を流す。俺たちは"替えのきく駒"。死んでも代わりはいくらでもいる。
俺は駒として使い潰されながらも生き延びた。仲間を率い、魔獣や魔族の群れと剣を交え続けてきた。俺の隊はいつも危険な任務ばかり押し付けられる。貴族たちは後方から口を出し、戦果だけを横取りし、失敗すれば俺たちの責任。そのたびに「粛清」された騎士を何人も見た。
粛清の方法は決まっている。――諮問機関による審問を受けるのだ。
審査官たちは罪なき者を捕らえ、無実をでっちあげ、自白を強要し、処刑する。諮問機関は別名『拷問機関』とも呼ばれていた・
貴族に逆らったせいで、あの拷問室で命を落とした仲間は数知れないのだ。
だから俺は逆らわない。そうしなければ仲間も自分も簡単に潰されるのを、嫌というほど知っているからだ。俺は今潰されるわけにはいかない。その理由はここ数年、魔族の影が色濃くなってきているのだ。魔王の旗のもとに集う異形の軍勢――エルフ、ドワーフ、獣人、オーガ。その動きが活発になってきている。いままでに、なかったことだ。
彼らは人間とは違う。人間の剣を軽く折るほどの怪力を持つ者、風よりも速く動く者、魔法を自在に操る者。それぞれが人間を凌駕する特性を持っている。だが、彼らは団結することはなかった。それなのに、最近は魔王の名のもとに団結しているのだ。
辺境の村がいくつも蹂躙された。生き残った者の証言によると、彼らはまるで鍛えられた軍隊のように動いていたという。
そんな魔王軍に無力な民には抗う術はない。だからこそ、俺たち騎士が立たねばならない。
たとえ腐った貴族の下であろうと。たとえ駒の一つとして使い潰されようと。守るべきものは、俺の剣でしか守れないのだ。




