天命騎士団、救世(4)
「助かるの? リリおねーちゃん助かるの!?」半分ほどにまで縮んだアラタナが、カトーにまとわりつく。
「心臓が潰れただけなら簡単だ。首を落とされたこの前よりずっとな」
「カトー……どうして生きて……いるの」ジンはなんとか声を絞り出した。
「あとで説明してやるから、しゃべらず休んでろ。オマエも死にかけてるんだから」
カトーは呆れた口調でいい、光る右手をリリアンジェの胸に置いた。みるみるリリアンジェの顔に生気が満ちていき、呼吸も始まった。
「リリおねーちゃん! リリおねーちゃん!」すっかり元のサイズに戻ったアラタナが仔犬のようにはしゃぎだす。
「やったな、団長。掲げた目標のとおり、天命騎士団は世界を救ったぞ。まあ、誰に気づかれることもないがな」
カトーはいい、寝息を立てるリリアンジェの頭を優しくなでた。
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青く澄んだ空に、チカチカと光が舞う。真っ白なスズメが陽の光を浴びて、飛び交っているのだ。
「この世界のスズメは白くていいなぁー」公園のベンチにだらしなく座り、伸びをしながら加藤は呟く。
そのまま空を見上げていると、人が近づく気配がした。視線を前に向ける。ジンが歩き来るのが見えた。ツンツン尖らせたピンクの髪に、鍛えられた筋肉を見せつけるような薄手のシャツ、街のゴロツキ風に戻っている。
「よう、カトー」
「ああ」と頷く。
「団長は元気か?」
「とっくに完治してるが、大事をとってユーマが眠らせている。それでも、今日には起こすってさ」
あの日、加藤がジンの心臓を治してやってから、ちょっと目を離した隙にジンはいなくなった。だが、どこかで会いに来るだろうとは予想していた。例の答えを訊くために……。
ジンはベンチの隣に生える喬木に背を預け、空を見上げて眩しそうに目を細める。「初めて修行をした公園だな」
「そうだな」
「俺の秘術で間違いなく死んだはずなのに、なぜ生きているんだ?」
前置きなしにジンはいい、加藤もさらりと答えてやった。
「一度は死んだが、転生者ギフトで生き返った」
「ギフト? 自分の意思で異世界を渡っているからギフトはない、そういってなかったか?」
「俺もそう思ってたんだが、死んだときにこの世界の神に会って、俺が第一王子として産まれた経緯を教えてもらえた。別の世界に流れようとしていた俺をひっつかまえて、無理くり第一王子に転生させたんだとよ。厄災の主が産まれてこないように、異世界人の俺で上書きしたってわけだ。神の都合でなされた転生だったから、ギフトが与えられてた」
「……なるほど。だが、厄災の主はしぶとく、第二王子として産まれた。ただ、カトーの上書き転生のせいで、その力は失っていたのか」
「ああ。だから俺が一度死んだことで、厄災の主の力が、第二王子に戻ったってわけさ」
「まいったまいった、俺のせいで危うく世界を滅ぼすところだったぜ」ジンは肩をすくめた。「それにしても、カトーのギフトは不死だなんて、無敵の異世界人様だな」
「その神がいうには、生き返れるのは一回だけだとよ。ちょっと行き先を変えただけだから、そんな大層なギフトは貰えなかった」
「そうか」と頷いたジンは、顔を空に向けた。
加藤も視線を空にやる。しばらくの沈黙があってから、「これからどうすんだ?」と訊いた。
「帝国に戻るさ。カトーは?」
「俺も今から旅に出る。そろそろ次の世界に行く準備をしたい」深々と座っていたベンチから腰を上げる。
「今すぐ出るのか? 団長には会ってやれよ。俺は帝国スパイとバレているから、このまま消えるけど……」
「やる気のない騎士見習いは天命騎士団に不要だ。会わずに去るのがいいだろう」加藤は歩きだし、手を上げた。「じゃあな。もう会うこともないだろう」
「ああ、たっしゃでな」
背中でジンの言葉を受けながら、加藤は振り返ることなく歩を進めたが、目の前にいきなりユーマが現れた。
「そんなこと、私が許すとでも!」
次が最終話となります。




