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天命騎士団、九死(5)

赤毛以外にも、あの組織のモノが暗躍していたとは!


自身の迂闊さを嘆きながらユーマは時空魔術で進むも、一手遅く、リリアンジェの首が飛んだ。


だが、数瞬後にはカトーがリリアンジェの頭を胴に据えて、右手を光らせている。


「ユーマ! 団長の時を止めろ!」


「止めることはできませんが、限界までは遅くしています!」


「ユーマ、カトー。リリおねーちゃんを絶対助けて……。そうじゃないと、僕は人間を滅ぼすかもしれない」アラタナが近くにきて、怒りで身体を震わせる。


彼が覚醒したら、ジョークじゃなくなりますねぇ。


そんな感想を口にする余裕はなく、「魔力を貸してください」と、ユーマはアラタナの肩に左手を置いた。


すでに右手はリリアンジェに触れており、一日を一年とするほど時を遅らせている。


だが、そんな無茶は長く続かない。すぐに魔力切れとなるところだったが、アラタナの無尽蔵な魔力で補完して、時の魔術を継続する。


「カトー、勝算はありますか?」


ユーマは問うが、カトーは無言で右手を輝かせた。


癒やしの力であることは間違いないが、その源はわからない。確実なのは、自身が使う光魔法とは根本が違うということだ。


世界最高峰の魔導士でもある時守は、何百年、数千年と魔術を研究し続けている。だからユーマは、自分が知らない魔術などないと自負している。


それを唯一覆すのは異世界人の転生ギフトだ。しかしカトーは、「ギフトはもらっていない。別の世界を渡り歩いて得た力だ」といった。にわかには信じ難いが、カトーの力が本物であることは間違いない。


その証拠に死体だったリリアンジェの身体に、かすかに生の鼓動を感じた。この世界には、それをなしえるヒーラーは存在しない。


「団長に復活の兆しあり! ジン、アナタの同僚の相手は、少しの間ひとりでお願いします!」




     □□□□




「無茶をいいやがる。こいつらがどれだけ強いかわかっているのか?」


そんな愚痴がこぼせる状況に、ジンは驚く。間違いなく自分ひとりでは詰みで、すごすごと、この場を去るしかなかっただろう。


「あら? ジンが私たちの相手をひとりでしてくれるのね」マミが柔和な表情でいう。


「お手柔らかに頼むぜ」ジンはそんな軽口を飛ばすが、同ランクを三人相手にするのは無理がある。マミでいうと格上だ。


組織の三人を同時に相手にすれば、戦力差はそのまま三倍。普通は回避するべき悪手だ。


だが実は、そのバランスにつきいる隙があった。


七犬牙(セィルドグ)にとって同僚などは、寝食をともにした仲間というのにほど遠い。任務によってはいつ敵になるかわからない存在なのだ。


ともに任務を遂行することになっても、個人主義であるスパイは、自分の切り札などは仲間にも晒すことはない。


だからマミたちは、七割の力しか発揮できないのだ。


そんな制限など捨てたジンは、奥義のひとつ、分身の術を発動した。人差し指を立てて東洋の呪文を唱えたジンの身体が三つに分かれた。


「聞いたことはあったけど、初めて見たわ。そんなことができるのね!」マミが目をぱちくり。


「分身なんてありえない。東洋の術系統なら、式神か、狐や狸を召喚して化けさせているだけだろう」ヤームが淡々という。


「うん、そんなところかな。まあ、分身なんて格落ちだから早く片付けちゃいましょう」


マミの言葉に、「そうですね」とヤームも軽く頷く。分身の二体がたいした強さではないと、タカをくくっているのだろう。


この分身は、アンタらの秘術でもって応じるべき強さだと、驚くがいい!


ジンの想いに呼応するように、分身たちは超高速連撃、雷遁舞姫を放つ。


分身に合わせて、ジンも同じ技を繰り出した。それは防がれたが、ふたりの顔色が変わった。なおも格闘術と忍術をおりまぜながら攻め続ける。


だが、その勢いは徐々に弱めていき、やがて防御主体に変えた。


「時間稼ぎが、みえみえよ」マミがいった。


多くの格闘術を極め、さらに魔術にかんしては時守と同等との噂もあるマミだ。


本気になれば、分身を蹴散らすことも難しくないのはわかっている。


とはいえ、マミ自身も秘術を披露するほど本気でないかぎり、ジンの時間稼ぎにつきあうしかない。それほど、分身たちは強力な存在なのだ。


その分身にマミとヤームはまかせて、ローズと対峙した。


「お前、本体だろ」ローズが目を細める。


「全て本体だ」と、うそぶく。


「そりゃいいや。お前を三回も殺せる!」ローズの瞳が殺意に煌めく。


くるっ! ジンは身がまえるも、ローズはジンの横を駆け抜けた。攻撃対象となったのはマミと交戦中の分身だった。


ジンはローズを追う。分身は二体一の不利な状況だが、数瞬であれば持ちこたえるはずだ。


との目測は、ハズレた。


禍々しいほどの紅い炎が彼女を包み、神速と評すべき手刀で分身はバラバラにされた。


ローズが炎のようなエネルギー体を扱うことは知っていたが、それを利用する体術がこんな完成度で存在するとは思っていなかった。


つまり、ローズも手の内をさらしてきたというわけだ。


ともあれ、これでバランスが一気に崩れた。ジン本体はローズと相対し、一体となった分身はマミとヤームに挟まれる。分身は善戦するも長くは持たなかった。


これで元の三対一に戻ったことになる。


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