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天命騎士団、因縁(6)

三回戦、試合舞台中央で対戦チームと相対する。リリアンジェたちは三人だが、相手も三人だった。天命騎士団はリリアンジェひとりで圧勝してきたが、ぎりぎりで勝利をおさめたチームは怪我人も多くなる。


試合自体は、まったく危なげなくリリアンジェの三連勝で終わった。歓声も大きくうねりをあげていた。


控室に戻ると、五十代のどこかであろう貴族が声をかけてきた。


「はじめまして、ロエンハイム様。アイナ・ミューラルです」


アイナの挨拶でこの貴族が、かのロエンハイムだとリリアンジェは気づいた。


「はじめまして、ミューラル卿。いやはや、あなたが推薦した騎士は素晴らしいですな。美しく、そして強い。声援も我が騎士団のミガルド団長に匹敵するぐらいの盛り上がりようだ」


「いえ、伯爵様。私などミガルド様には遠く及びません」リリアンジェは敬礼で応じる。


「ほうほう、謙虚なことだ。決勝でお会いできることを楽しみにしていますぞ。では、これにて」


そう残して、ロエンハイムは去っていった。


「十一連覇を阻むもの許すまじ、といったところですかねぇ」ユーマが愉快そうにいった。



     □□□□



「いいか、あのガキだ。あのガキを人質に取れば、こっちのものだ」スレイが目をギラつかせる。


「あの女、ぜったいにぶっ潰してやる!」副将としてリリアンジェにノされたマーシュも、歯ぎしりをしながらうめく。


「それより全員でまわしてやろうぜ」先鋒の騎士が舌なめずりするも、次鋒が「さすがにやばくないか?」と、首をひねる。


「いや、それはすごく良い案だよ!」なぜそれに早く気づかなかったのだと、スレイは自身を罵った。「大丈夫大丈夫。リリが訴えを起こしても、ヒルド団長が喜んでもみ消してくれるさ!」


「だったら、いいや」と難色を示した次鋒も、にんまり頷く。


「殴りながらヤってもいいかな? 俺、そういうの好きなんだ」副将のマーシュがニヤつく。


「いいね、いいね。それ最高だよ」スレイは拍手してから、剣を持って立ち上がる。もちろん木刀などではない。「さあ、みんな行こう」



スレイたちは宿を出る。すでに日は落ちていたが、闘技場が近いせいもあって人通りも多く賑やかだ。早足で大通を進んでいると、ばったりローズにでくわした。


「今日はお疲れさま。残念だったね」


「不甲斐ないところを見せてしまって……」次鋒がシュンとしていった。


「その……油断が過ぎたというか……」先鋒も視線を落としながら言い訳がましい言葉を吐く。


「すごく立派に戦った、そうヒルドには伝えておくから安心してね」ローズは赤毛を掻き揚げながら、ウインクで応じた。


「ハイ!」と嬉しげな同僚たちを尻目に、スレイは「ヒルド団長っていえよ」とボソリ。


「うん?」ローズは目ざとく反応して首を傾げる。艶やかな赤毛が揺れる。


ヒルド団長の愛人だからって、騎士として底辺のアンタがC級の僕と対等にしないでくれますか?


そういいたい想いを押し下げて、「いや、朝まで一緒に呑んでいたというカトーとかいうヤツですが、試合に間に合いましたね」


「えーと……なんの話?」ローズは不思議そうな顔だ。


私と呑みあかしたからカトーは来ないだろう。だから脅迫に使ってみれば? そう自分だけにそっと囁いたのは、ローズだった。こんなふうに、とぼけてくるとは……。


「なんの話だ?」と、マーシュたちがいった。


たしかに彼らの前でする話ではないか……。


「ごめんごめん、なんでもない。では、ローズさん。僕たちは急ぎますので」そうスレイは返し、小走りで進んだ。



ほどなくして、リリアンジェたちが泊まる宿が見えた。闘技場から距離のある安宿だ。


ひとけは少ない。そこから細い路地に入った。しばらくすると、偵察として出ていた中堅が合流してきた。


「どうだった?」スレイが訊く。


「リリアンジェは軟弱そうな男と、貴族らしい若い女とで食事中だ。少し近づいて聞耳を立てたが、やはりガキは宿にいるようだぜ」


「よし。あとはどうにかしてガキを呼び出せば……」


「まどろっこしいな。俺が行って、さらってくる」副将のマーシュが手ぬぐいを顔に巻いた。顔の大半が隠れる。


「危険な役だけどお願いするよ」スレイがマーシュの肩に手をやる。


「なに、たいしたことはない」マーシュが首を振るのと同時に、「おにいさんたち、なにをしているの?」と声がして、スレイたちはその方を見る。十歳ほどの少年が路地の入口にいた。


リリのところのガキじゃないか! これはこれは、飛んで火にいるなんとやら。


スレイは顔が緩むのを抑えられないまま、少年に近づいた。


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