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天命騎士団、因縁(3)

翌日、朝一番の試合は、街をおこして応援するロエンハイム騎士団の試合だった。リリアンジェは満員の観客席から立ち見で、せり上がった円形の闘技舞台に視線を注ぐ。


先鋒であらわれたのは、A級騎士ミガルド、四十間近ではあるがスラリと均整の取れた身体つきだ。


さらに甘いマスクをしており、観客席に手を振ると、女性からの叫声が湧きあがる。とくに同世代の女性からの声援が熱かった。


リリアンジェたちの試合は午後からだが、ひとりで視察にきていた。決勝まで進めば、このミガルドと戦うことになるのだ。


相手チームは、いかついナリをした五人の男たちだ。試合開始の太鼓が鳴るやいなや、ミガルドの木刀が水平に奔る。男は役者かというように派手な倒れかたをした。


まずは一勝。大きな歓声があがる。


次の男はぶんぶん木刀を振りまわしているだけだった。ミガルドは華麗に躱しながら進み、肩口に一閃。


二勝目。


続けて三人目、四人目も倒し、相手チームの大将がでてきた。全身に彫物が入った大男で、「ぶっ殺してやる!」としきりに挑発している。


そして試合となれば、退治されるかのごとく負け、涙を流して先ほどの非礼を詫びていた。その光景に観客も大満足し、声援が飛び交う。


「まるでショーね」


今の相手ではミガルドの力を推し量ることはできなかったが、格上のようには感じなかった。その後の試合も観覧したが、これはと思う騎士はいなかった。



リリアンジェたちの試合がはじまる少し前、のんびり昼食をとっていた残りのメンバーがやってきた。


自分が戦わないとはいえ、この緊張感のなさはいかがなものか! 説教でもしてやろうと思ったが、生憎その時間はなかった。



石で組みあげられた円形の試合舞台中央に五人が並び、相手チームの『剣星会』と対面した。全員が高齢の剣士だ。顔に深いシワを刻み、髪には白いモノが目立つ。それでも、ピンと背筋の伸びた立ち姿がさまになっていた。全盛期はかなりの実力者だったと思われる。


立会人に木刀を渡されてから、先鋒リリアンジェを残して他の四人は試合舞台から降りた。


太鼓が鳴る。試合開始の合図だ。


大きな歓声があがる。どうやら女騎士が珍しいようだ。なかには性的に汚いヤジも混ざっているが、それで気を乱すような鍛錬はしていない。


剣星会先鋒が木刀をかまえながらにじりよってくる。リリアンジェも木刀をかまえる。


喉元めがけて放たれた突きを、斜め前に動いて躱しながら、胴を薙ぎ払う。


先鋒は倒れた。またたく間の攻防と決着に歓声が大きくなる。


一勝目。


次鋒が出てきた。


次鋒との戦いも、さきほどと同じく一刀で終わらせた。


二勝目。


中堅戦は長引いていた。相手が防御主体で攻めてこようとしない。だとしたらこちらから行くまでだ。


大きく一歩踏み込み、相手の木刀を払ってからの二連突きでしとめた。


三勝目。


副将は二刀流だった。変幻自在の技を披露してくるも、リリアンジェの剣筋の鋭さ、速さ、強さには遠く及ばなかった。


四勝目。


大将は、今までとは別格の強さだった。それでもリリアンジェと五合渡りあうのが限界だった。


立会人が天命騎士団の勝利を宣言する。わっと会場全体が湧いた。ロエンハイム騎士団を別にすると、今日一番の盛り上がりだ。


「若くて強くて美しい。もう会場中が団長の虜です」ユーマが手を叩く。


「そんなお世辞になんて、のせられませんよ」そうリリアンジェは冷めた声でいうが、内心では嬉しかった。


剣星会の大将がわざわざこちらの陣にきて、「お見事でした。私の全盛期は三十年前ですが、そのときでもまったく歯が立たなかったでしょう」と褒め称えてくれたのも、心にぐっときた。


「今日は一回戦だけなので、もう出番はありません。とりあえず控室に戻りましょう」リリアンジェは明るい声でいい、闘技場をあとにした。



闘技場には北門と南門があり、対戦チームがそれぞれの門から入ってくる。北門側の控室に戻ったリリアンジェは、次の試合にそなえていた騎士たちが目に入って固まった。


スレイがいたのだ。


「やあ、リリ。元気してた?」友達かというような気軽さで、話しかけてくる。


「あ……」それ以上、言葉が出なかった。

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