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天命騎士団、初陣(3)

「アイナ様は貴族だからあまり無茶はできないが、お前ら騎士モドキならいくら痛めつけても問題にはならないんだよなぁ」ふたりがにじりよってきた。


ジンは左右を見た。カトーはつまらなさそうにしている。対象的にユーマは満面の笑みだ。そのユーマが急変、顔を歪めて頭をかかえる。


「しまった! アイナ様はジンに追いかけさせて、アラタナをここに残すべきだった! 少年のアラタナにコテンパンにされるほうが、よっぽど屈辱的だったというのに!」


ユーマの言動に呆れながら、ジンはいう。「ユーマが相手してやったらどうだ? 俺みたいなガタイがいいのより、貧弱そうなアンタにやられるほうが屈辱を喰らうと思うぜ」


「時守の掟では、不要にヒトを傷つけてはダメなんですよ、それなりの理由がないと。ただ、煽るのは禁止されていません。とういうわけでジン、よろしくです」


ジンはため息を呑み込み、ふたりと対峙した。


「いい身体はしているが、しょせん街のゴロツキだろう。騎士ランクC級の力を見せてやる」デブがいう。


「C級? こっちも?」ジンはガリガリを指差した。


「そうだよ! なんだぁ、おめぇー、俺をなめてんのか!?」ガリガリは高い声で喚く。いいかげん、耳をふさぎたくなる声だ。


「いや、すまんすまん。なんか小物感にあふれていて」


「なめんじゃねぇ!」ガリガリがデブを押しのけて、ジンに飛びかかってきた。


ほんとうにC級かと疑うような緩慢な動きだ。


冒険者ランクや剣士ランクは数年で更新が必要だが、騎士ランクと魔導士ランクは取ったら永年有効だ。若くして得たC級が、鍛錬もせずに酒におぼれて劣化の一途をたどっていても、ランクを降格されることはないのだ。


飛びかかってきたガリガリの拳を避け、腹に蹴りを入れた。劇場で活躍する役者のように派手に転がり、ガリガリは表情と動きで痛みをじつに豊かに表現する。


いっときは痛みに支配されても、すぐに復讐の視線をよこしてきたスレイとは、同じC級でもずいぶんと違う。永久ライセンスなのをいいことに、鍛錬を怠っていたのはあきらかだ。


怒声を上げてデブのほうも殴りかかってきた。その拳を払い、腹を蹴る。脂肪の盾にさほどの防御力はなく、デブもただただ痛みにゆだねて草むらを転がる。


「やーいやーい、ざまぁみろぉー!」


ユーマが苦しむ男たちの近くにより、ぴょんぴょん飛び跳ねる。


「アイツ……今年で七百歳になるらしいぞ」カトーがぼやいた。


七歳の間違いではなかろうか、との言葉をジンは呑み込んだ。



しばらくすると騎士たちはヨロヨロと立ち上がり、「覚えてろよ」と独創性のない捨てゼリフを吐いて去っていった。


やがて、リリアンジェたちも無事に戻ってきた。狩猟犬も尻尾を振り、アラタナの後ろについてくる。生物としての格の違いを感じとったのだろう。


「ご迷惑おかけしました」そうアイナはいうが、「いえいえ」とユーマが首を振る。


「あの……さっきの騎士たちは……」


「私たちに危害をくわえようとしたので、ジンがやっつけました!」意気揚々とユーマがいった。


「たしか……あの方たちはC級騎士かと……」アイナが驚きの視線を向けてきた。


「ジンがC級騎士を?」リリアンジェもまた、同じ視線だった。


「永久ライセンスだから死にかけのジジイでもC級はC級だ。正直アイツら、騎士を名乗るに値しなかった」そうジンは返したが、腐ってもC級騎士、デブとガリは騎士見習いが勝てるほどは弱くなかった。


「ともあれ、やっつけたんで、ご安心を!」ユーマが朗らかにいう。


「はい。みなさんがご無事でなによりです」そういうアイナの表情は安堵にあふれていたが、ある種の覚悟も漂っていた。


「ひょっとして、オガイア侯爵に絶好の口実をあたえてしまったか?」ジンが訊く。


「どういう意味ですか?」


アイナがとぼけて見せたことなど、ジンには手にとるようにわかった。


実際にその日の夜、オガイア侯爵が私兵をつれて、ミューラル家邸宅になだれこんできた。


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