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天命騎士団、対決(4)

「まさか……」


「そうだよ、僕があの魔人さ」アラタナがニコリと頷く。「ジンさんすごく強いねー。びっくりしちゃった。この前、A級騎士の相手をしたけど、ジンさんに比べると全然だったよ」


「アラタナ、私は……」ボソリとユーマがつぶやいた。


「反省しなよ、ユーマ! 危うくリリおねーちゃんを傷つけるところだったよ。いや、殺していたかもしれない!」


「はい……熱くなりすぎました……」ユーマは蚊の鳴くような声でいう。


どうやらこれ以上戦う意思はないようだ。正直、ほっとした。


「団長を命がけで守るために、こっちはボロボロだ。どう落とし前つけてくれるんだ!」すぐさまカトーがユーマを責めたてる。うらやましいくらいに切替が早い。


カトーの言葉でうなだれるユーマの肩に、アラタナが手をおいた。


「僕は天命騎士団に入って、リリおねーちゃんを助ける! ユーマもそうしなよ!」


「はい、そうします……。『厄災の主(ドミリィーナ)』の件もありますので、拠点を王都に移そうかとも考えていたところですし」


時守から『厄災の主』という言葉が出るとは驚いた。ジンは心を静めてからユーマに尋ねようとしたが、カトーが先んじた。


「『厄災の主』だと?」


「子供でも知ってる言葉ですが……異世界人の耳には入りませんでしたか?」


「その言葉自体は知っている。千年に一度現れては、戦乱を世界中に広げて秩序を崩し、文明を蹂躙する悪魔のようなヤツなんだろ。なんでも、『厄災の主』が存命の数十年で、世界の人口が半分になってしまうとか」


「その『厄災の主』ですが、ついに復活するのです」


「本当なのか?」カトーが目を細めた。


「はい。時守のなかには未来視ができるモノがおり、『厄災の主』が近々復活すると予言しています」


帝国にもたらされた神託に、稀代の魔導一族の予言。出どころは違えど、同じ結論にいたっているようだ。


「どうせなら、天命騎士団で『厄災の主』を倒して、世界を救っちゃおうよ」軽い口調でアラタナがいう。


「ちなみに、アラタナ君の本体は、あのでっかい魔人なのか? それとも今の子供の姿なのか?」ジンが尋ねた。


「今の姿だよ。でっかいのは演出。みんな子供相手じゃ本気になれないでしょ」アラタナが胸を張る。「ちなみに変身する余分なエネルギーを使わない今のほうが、僕はずっと強いんだよ」


ジンは頷いてから、心中でぼやく。「異世界人、魔人、時守、そして帝国スパイ。なんか、とんでもない騎士団になってしまったなぁ」




     □□□□




ベッドで目を覚ましたリリアンジェは、あれっ? と首をひねる。


「私は魔人と対峙して、それから……」


もう一度首を傾けてから窓に視線をやると、朝の日差しにあふれ、小鳥がさえずいていた。


あれは夢だったのかしら? ふわふわとした気持ちのまま下の階に降りて食堂に入ると、カトーにジン、ユーマとアラタナが座っていた。


「さあ、朝ごはんにしましょう」


そうユーマがいうので頷く。たしかに、かなりの空腹だった。


食事のあと、ジンからあの日の顛末を聞かされた。


「団長の気迫で魔人は逃げてった。しかし、直後に団長も倒れるように眠っちまった。前日、カトーのために走りまわったのが、よっぽど堪えたんだろうな」


そうなのかしら? そのあとゆっくり寝たし……敵地において私が眠ってしまうなんて、ちょっとありえない……。


リリアンジェは顔をしかめるも、疑念などはアラタナの言葉で吹き飛んだ。


「僕を天命騎士団に入れてよ。リリおねーちゃんみたいに強くなりたい、頑張って修行するよ!」


ああ、やっと真面目な騎士見習いがきてくれた!


「はい! 一緒に立派な騎士を目指しましょう!」


リリアンジェの心は大きく弾み、「私も入団します」とのユーマの言葉には、「はいはい、どうぞ」とぞんざいに返していた。




その日の昼に、リリアンジェたちは王都に戻るため、屋敷をあとにした。さっそく、ユーマとアラタナもついてきた。「あの立派な屋敷はどうするの?」との問いには、「別にどうとでもなります」とユーマは気軽な返答だ。


王都に着くと解散となったが、ユーマとアラタナの家がない。


「狭いですけど、私の家でよければ泊まりますか?」


「いえいえ、今日は宿に泊まりますよ」


「それよりリリおねーちゃん。騎士になるための修行はいつから? 明日?」


さすがにそれはアラタナの負担が大きいと思ったものの、嬉しくて「では、明日から!」と答えてしまった。



そして翌日、 修行のために公園に集まったのは、アラタナとユーマだけだった。ジンとカトーは疲れているからパスとのことだ。


ああ、アラタナの爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいと、心底リリアンジェは思った。


アラタナに素振りをさせると、じつに筋がよかった。このまま鍛錬に励めば、すぐに見習いから騎士となれるだろう。


ユーマも隣で木刀を振っていたが、まったくセンスは感じなかった。それでも、鍛錬すらしないカトーよりかはマシであろうが。


素振りを始めて半刻、ユーマがふらふらと揺れてツラそうだったので、休憩をいいわたした。


「次は、団長殿の鍛錬ですね」長い時間をかけて息を整えてから、ユーマがいう。


「私の!?」


「はい」と返すユーマの背後に、土でできた大きな人形があらわれた。高さも厚さもリリアンジェよりふた回り大きい。


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