天命騎士団、対決(3)
槍がいっせいに放たれる。
別の手法もありますが、その挑発、のってあげましょう!
ユーマはカトーの背後に移動した。直後に、はるか先で轟音、光の槍が岩壁を砕いたのだ。
「チェックメイトです。異世界人さん」ユーマは後ろからカトーの肩に手をおいた。
「瞬間移動か?」カトーが振り返る。
「まあ、そのようなものです」
「ところで、そんな不用意に近づいてもいいのか?」
「はい?」ユーマが首をかしげた瞬間に、カトーの左手がその首に迫っていた。碧く輝く手刀だ。A級騎士さえしのぐ動きだった。
このタイミングで防げるような筋力を、私は持ち合わせていない。
そう判断したユーマは時守のなかでも極秘事項となっている術をカトーに発動した。正確にいうと、自身にかけられた術をカトーに移した。
カトーの動きが遅くなり、ユーマは手刀を回避。続けて空間を歪め、後方に移動する。
「今、なにをした?」カトーは驚いた様子もなくいった。
「秘密ですよ」
時間の流れを操れる時守だけが知る秘術だった。この術を時守は自身の身体にほどこし、時の流れを遅くしている。おかげで時守の身体は、一ヶ月で一日しか歳を取らない。
不老不死なんていうのは尾ひれのついた逸話だが、ユーマは六歳でこの術を発動させてから七百年ほどを生きているのだ。
「一瞬だけ時を操り、俺の時間を遅くしたんだろ」
なぜわかった? カトーには、私が早く動いたようにしか感じられないはずだ!?
「時を操る? 時の流れは不変のものです。なにをバカバカしいことを……」ユーマはそう惚ける。
「そうか? 別の時守が、時の流れは絶対的ではなく相対的だと教えてくれたぞ」
柔和なイメージを与えるユーマの細い眼が、カッと見開く。「その時守の名を、いえっ! 掟を破ったモノは、粛清せねばならない!」
「アインシュタイン・ソウタイセイリロン」
「そのような名の時守など、今も過去にも存在しない!」
「カマをかけただけさ。時守に知り合いなどいない」
「キサマ!」怒りにまかせ、最速で魔法を起動した。
ユーマの頭上には光の珠が輝いている。それはユーマの屋敷と同等の大きさで、最上級光魔法のひとつだ。この速度でこれをなしえる魔導士は、時守以外では現世に十人もいない。
巨大な光の塊がカトーに向かって飛ぶ。
ユーマとしてはカトーを殺すつもりなどなかった。時守を嵌めるような態度をとったカトーに自分の力を見せつけてやりたいだけだ。
体術もA級ランクであることを示したカトーだ。跳ね返すのは不可能だろうが、逃げて回避するとこぐらいはできるはずだ。
だが、カトーは数歩左に動いて止まった。そこでは光魔法の射程距離内だ。そしてジンも、魔人をほっぽりだしてカトーの隣にかけてきた。
ヒカリがふたりを呑み込んだ。
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ジンは水遁と土遁で自身を守りはしたが、かなりのダメージを負った。
カトーも蒼く光る左手で身体を護っていたようだが、無事ではない。服はボロボロでいたるところから出血がある。
自分も似たような姿となっているのだろうと思いながら、まずは後方を確認した。
土にまみれているが、リリアンジェはほぼ無傷だった。
「アレをなんとかして、団長を背負って逃げれるか?」カトーがいい、来た道を塞いでいる光の壁を顎で指す。
「まあ、やれんこともないが……。俺が離脱してからは、カトーが魔人と時守の相手をするのか?」
「あるていどの時間稼ぎはできるだろう」
「安全な場所に団長を降ろしたら、すぐに戻る」
「だめだ。そのまま王都まで逃げろ」
「死ぬきか?」
「時間を稼いだら、俺も逃げる」
「逃げる必要はないよ!」
アラタナの甲高い声が響き、ジンはギョッとした。ほんのさっきまで戦っていた魔人の位置に少年……アラタナがいるのだ。




