天命騎士団、対決(2)
「時守さんはカトーの力が知りたくて、こんな茶番を仕込んだんだろ」
「ふふ、御名答です。ではもう、開き直ってしまいましょう。さあさあ、おふたりでその魔人と戦っていただきます。強いですよ、魔人さんは。ふたりがかりでないと倒せないでしょう」
岩に埋まっていた魔人が、ユーマに応じるように這い出てきた。
「じゃあ、いっちょやってみるか、カトー。俺たちが本気をだして魔人を倒さない限り、団長を無事に帰すのは困難だ」ジンはそういったが、自身は本気ではなくほどほどのつもりだ。
「魔人はジンにまかせる」
「高みの見物か? そんな都合のいい話は認めないぜ」
「俺は時守と戦う。ジンは俺の力が知りたいのだろ。だったら誰と戦っても同じだ」カトーは一度こちらに鋭い視線をよこしてから、ユーマに向き直る。
「たしかにそうだが……時守は世界最強の魔導士だ。あの魔人よりも数段上だぞ」
「だが、俺よりは数段落ちるかもしれん」
「いやいや、あまり調子に乗るものではありませんよ」ユーマの声は穏やかだったが、目は笑ってなかった。
「アンタも俺の力を知りたいんだろ。だったらじかに味わってみな」カトーはユーマを指差す。
「残念ですが、私はのんびり観覧の予定ですので」
ユーマがいうのとほぼ同時に、カトーを目がけて魔人が襲いかかってきた。だが、カトーに動く気配はなく、クソッ! ともらしてジンは駆ける。
「雷遁、舞姫!」電気を帯びたジンの手足が、電光石火で魔人の各種急所に十連撃を喰らわす。
魔人は吹き飛ぶも、すぐに立ち上がった。かなり頑丈な身体をしているようだ。
「てなわけで、魔人の相手はよろしく」カトーはいい、ユーマのほうに歩を進めた。
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カトーがゆっくり向かってくる姿を眺めながら、「さてさて、困ったことになりました」とユーマはぼやくが、自身が高揚していることも自覚していた。
「俺以外の異世界人に会ったことはあるのか?」
「その質問をするということは、自分が異世界人であると認めるのですね?」
「まあな」
「ふふふ、ありますよ。百年以上前のことですが」
「そいつは今、どこでなにをしている」
「さあ?」
「俺のことを知ってどうするつもりだ?」
「ただの好奇心です」
「嘘をつくな」
「いえいえ、本当にただの好奇心ですから」
「ふんっ」と鼻を鳴らしたカトーの背後には光の槍があった。
ユーマは光魔法で魔源をひっぱり、攻撃的な光エネルギーに変換した。カトーを意識して、それは槍状に形を整える。
カトーの光の槍が飛んでくる、ユーマの光の槍がそれを迎え撃つ。
ユーマの槍は砕け散るも、カトーの槍の軌道を変えることには成功した。カトーの槍は、ユーマの頭上を奔り、やがて岩壁の上方を削ってから空のかなたに消えた。
「これはこれは、すさまじい威力ですね」
「巫女たちが数千年も練り上げた魔法だ。光をただ固めただけの攻撃と一緒にしないでほしいな」
「魔源を使ったようにはみえませんでしたが、その力のみなもとは?」
「創造神ラナーンの力だ」
「聞いたことがありません。カトーの世界の神ですね。元の世界でもカトーは魔導士だったのですか?」
「もとの世界じゃ、俺はただのサラリーマンだ」
「サラリーマン?」
「アイティーベンダーのシャチクだ」
「よくわかりませんが、特別な職業なのですね」
「ただの一般人さ。それに魔法なんてものも使えない、騎士のような強さもない。そもそも、そういう世界なんだ」
「なるほど。ではその力は転生を司った神、ラナーンから授かったギフトと呼ばれるものですね」
「それとは違うな。ギフトは転生させる側が与えるものだ。自主的に異世界に渡ったものにはギフトを与える神はいない」
「おおっ!?」ユーマは興奮した。異世界からの転生者を五人知っているが、全員がギフトを持っていた。カトーはそれとは違うというのだ。「では、なんの力です?」
「俺は異世界を渡り歩いてきた。今の光の槍はその世界で得た力だ」
「他にどんな世界があるというのです! どうやって自主的に異世界に渡ったというのですか?」永い永い生のなかで、初めての情報、初めての体験に、心が震える。
「俺のコトはここまでだ。次はアンタのことも教えてくれよ」
「あー、ごめんなさい。私からいうことは特にありません」
「まあそういわず、時守様の力を見せてくれ」
カトーの背後には五つの槍が控えていた。それを光魔法だけで防ぐのは非効率ではあった。だが、あえてその手段をとる。
槍が放たれた。
防御力に特化した光の珠を五つ造り、カトーの槍にぶつける。五つ分の衝撃があり、両者は相殺された。
「槍の形にこだわらなければ、カトーの槍を逸らすだけでなく、無効にすることもできるのですよ」
「お見事」と手を叩くカトーの背後に百を超える光の槍があった。「アンタが魔導士としてすごいのは充分に理解したが、そろそろ時守しか使えないという時空魔法を見せてもらおうか」




