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天命騎士団、対決(2)

「時守さんはカトーの力が知りたくて、こんな茶番を仕込んだんだろ」


「ふふ、御名答です。ではもう、開き直ってしまいましょう。さあさあ、おふたりでその魔人と戦っていただきます。強いですよ、魔人さんは。ふたりがかりでないと倒せないでしょう」


岩に埋まっていた魔人が、ユーマに応じるように這い出てきた。


「じゃあ、いっちょやってみるか、カトー。俺たちが本気をだして魔人を倒さない限り、団長を無事に帰すのは困難だ」ジンはそういったが、自身は本気ではなくほどほどのつもりだ。


「魔人はジンにまかせる」


「高みの見物か? そんな都合のいい話は認めないぜ」


「俺は時守と戦う。ジンは俺の力が知りたいのだろ。だったら誰と戦っても同じだ」カトーは一度こちらに鋭い視線をよこしてから、ユーマに向き直る。


「たしかにそうだが……時守は世界最強の魔導士だ。あの魔人よりも数段上だぞ」


「だが、俺よりは数段落ちるかもしれん」


「いやいや、あまり調子に乗るものではありませんよ」ユーマの声は穏やかだったが、目は笑ってなかった。


「アンタも俺の力を知りたいんだろ。だったらじかに味わってみな」カトーはユーマを指差す。


「残念ですが、私はのんびり観覧の予定ですので」


ユーマがいうのとほぼ同時に、カトーを目がけて魔人が襲いかかってきた。だが、カトーに動く気配はなく、クソッ! ともらしてジンは駆ける。


「雷遁、舞姫!」電気を帯びたジンの手足が、電光石火で魔人の各種急所に十連撃を喰らわす。


魔人は吹き飛ぶも、すぐに立ち上がった。かなり頑丈な身体をしているようだ。


「てなわけで、魔人の相手はよろしく」カトーはいい、ユーマのほうに歩を進めた。



     □□□□

 


カトーがゆっくり向かってくる姿を眺めながら、「さてさて、困ったことになりました」とユーマはぼやくが、自身が高揚していることも自覚していた。


「俺以外の異世界人に会ったことはあるのか?」


「その質問をするということは、自分が異世界人であると認めるのですね?」


「まあな」


「ふふふ、ありますよ。百年以上前のことですが」


「そいつは今、どこでなにをしている」


「さあ?」


「俺のことを知ってどうするつもりだ?」


「ただの好奇心です」


「嘘をつくな」


「いえいえ、本当にただの好奇心ですから」


「ふんっ」と鼻を鳴らしたカトーの背後には光の槍があった。


ユーマは光魔法で魔源をひっぱり、攻撃的な光エネルギーに変換した。カトーを意識して、それは槍状に形を整える。


カトーの光の槍が飛んでくる、ユーマの光の槍がそれを迎え撃つ。


ユーマの槍は砕け散るも、カトーの槍の軌道を変えることには成功した。カトーの槍は、ユーマの頭上を奔り、やがて岩壁の上方を削ってから空のかなたに消えた。


「これはこれは、すさまじい威力ですね」


「巫女たちが数千年も練り上げた魔法だ。光をただ固めただけの攻撃と一緒にしないでほしいな」


「魔源を使ったようにはみえませんでしたが、その力のみなもとは?」


「創造神ラナーンの力だ」


「聞いたことがありません。カトーの世界の神ですね。元の世界でもカトーは魔導士だったのですか?」


「もとの世界じゃ、俺はただのサラリーマンだ」


「サラリーマン?」


「アイティーベンダーのシャチクだ」


「よくわかりませんが、特別な職業なのですね」


「ただの一般人さ。それに魔法なんてものも使えない、騎士のような強さもない。そもそも、そういう世界なんだ」


「なるほど。ではその力は転生を司った神、ラナーンから授かったギフトと呼ばれるものですね」


「それとは違うな。ギフトは転生させる側が与えるものだ。自主的に異世界に渡ったものにはギフトを与える神はいない」


「おおっ!?」ユーマは興奮した。異世界からの転生者を五人知っているが、全員がギフトを持っていた。カトーはそれとは違うというのだ。「では、なんの力です?」


「俺は異世界を渡り歩いてきた。今の光の槍はその世界で得た力だ」


「他にどんな世界があるというのです! どうやって自主的に異世界に渡ったというのですか?」永い永い生のなかで、初めての情報、初めての体験に、心が震える。


「俺のコトはここまでだ。次はアンタのことも教えてくれよ」


「あー、ごめんなさい。私からいうことは特にありません」


「まあそういわず、時守様の力を見せてくれ」


カトーの背後には五つの槍が控えていた。それを光魔法だけで防ぐのは非効率ではあった。だが、あえてその手段をとる。


槍が放たれた。


防御力に特化した光の珠を五つ造り、カトーの槍にぶつける。五つ分の衝撃があり、両者は相殺された。


「槍の形にこだわらなければ、カトーの槍を逸らすだけでなく、無効にすることもできるのですよ」


「お見事」と手を叩くカトーの背後に百を超える光の槍があった。「アンタが魔導士としてすごいのは充分に理解したが、そろそろ時守しか使えないという時空魔法を見せてもらおうか」


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