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上げ膳据え膳希望なので、王子様譲ります!!  作者: 弥湖 夕來
貴族の生まれも楽じゃない?
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 まずいなぁ。

 

 いや、まだ大丈夫。

 何しろ試験のある十八までは後十三年ある。

 それまで、このことを頭に入れてしっかり行動しないと! 

 

 気を取り直して、頭を上げる。

 

「それで、ケネスさま。

 今日は、何のご用ですか? 」

 

 王子様だって王子様なりに忙しいはずなのに、何しに来たんだろう? 

 

「実はね、父上に新しい馬を貰ったんだ。

 それで、ロレッタに一番にみせようと思ってさ」

 

 向けられた笑顔は極上すぎてしかもこの気遣い。

 もう、ちびっこでなくても好きになりそう。

 

「ロレッタのことだから、きっとまたキッチンに篭ってばかりいるんだろうなって。

 おいでよ、乗せてあげるから遠乗りに行こう」

 

 そう言って手を差し出してくれた。

 

 

 

「それで、どうだったんですか? 」

 

「どうって、何が? 」

 

 ボールの中に小麦粉を溶いて、刻みキャベツを入れかき混ぜながらあたしはケイトの問いに首を傾げた。

 

「ケネス王子さまですよ」

 

「どうって、別に? 

 子供だけで馬の二人乗りなんてとんでもないってお付きの侍従に止められて、けっきょく馬には乗せてもらえなかったし」

 

 いいながらボールの中身を暖めたフライパンに流して伸ばす。

 豚バラ、チーズ、たまごなどなど、身近にあった適当な物をその上に並べて、焼けてきたらひっくり返す。

 

「でも、綺麗な馬だったのよ。

 鹿毛で真っ黒な鬣の、綺麗な目をしてたの! 」

 

 正直、あたしの記憶だけなら、馬なんか間近で初めてみたわ。

 躯がちっこくなっていたこともあって、半端じゃないほど大きくて怖いくらいだった。

 けど、優しい瞳の綺麗な生き物だったことには感動。

 

「よかったですね、お嬢様。

 聞いた話なんですけど、ケネス王子さまが先日国王様からいただいた、初めてのご自分の馬なんだそうです。

 それを、早速お披露目に来て下さるなんて…… 」

 

 ケイトの声が上ずっている。

 まるで脈があるとでも言いたそうな? 

 

 じゃなくて、自慢しに来たんだよね? 

 初めて手にした自分の馬だし、そうだよね? そうだと言ってぇ。

 

「あ、お嬢様、焦げそうですよ? 」

 

 うっかり目を離したら、すかさずケイトに言われた。

 

 焼けたものをお皿に移して、ソースとマヨ。それからジンジャーピクルスを千切りにしたのを散らして。

 青海苔とか、鰹節とか、その他もろもろ足りないけど、そこはご愛嬌。

 

「どうぞ、召し上がれ」

 

 お皿をケイトに差し出した。

 

「今度は、なんです? 」

 

 ケイトが不思議そうに眉を寄せお皿の中を覗き込む。

 

「お好み焼、もどき」

 

 もどきがつくところがなんとも悔しいけど、材料の足りないものが多くて、もどきとしか言い様がない。

 とりあえず、ソースにはあった物で一番香りの近そうなものにシロップ混ぜて甘くして、マヨは自分で作った。

 紅生姜はちびっこが作りおきしてあったジンジャーピクルスなるものが色こそ違うけどほぼ同じ味だった。

 

 朝焼いたケークサレをみてお好み焼を連想しちゃったら、どうしても食べたくなったんだもん。

 

 毎晩出てくる母親の料理を見るに、フランス料理みたいなのが味付けも盛り付けも一般的みたいだから、ケイトの目に異様なものに映っても仕方がない。

 

 とりあえず、甘いだけのホットケーキよりは多分、マシ。 

 

 欲を言えば、白いご飯炊きたいけど、お鍋でご飯は、ねぇ。

 

 

 キッチンの片隅に設えられたテーブルにつくと、あたしは一足先にそれをフォークで切り分け口に入れる。

 当然なのかどうなのかは判らないけど、お箸なんて食器はなかった。

 

 うん、とりあえず、「みたい」なものにはなってる。

 

「お嬢様! なんですか、これはっ! 」

 

 向かいのケイトが声をあげた。

 

「不味い? 」

 

 やっぱり、お上品なものばかり食べている人の口には合わなかったか。

 

 そう思いながら恐る恐る訊いてみる。

 

「いえ、そうじゃなくて、逆です。

 特にこのクリーム色のソース、絶品ですよ」

 

「マヨネーズ、知らないの? 」

 

 一応調味料の棚みたけど、ソースや酢、蜂蜜は数種類並んでいるけど、見当たらないから作ってみたけど、やっぱり存在していなかったんだ。

 

「まったり、こってり、上品な酸味と塩味でうまみがあって、食材によく絡みますねぇ…… 」

 

 なんだか知らないけどうっとりしてる。

 よっぽど気に入ったみたい。

 

 たまごと、お酢と、オリーブオイル混ぜただけなんだけどな。

 やっぱり材料がいいせい? 

 

「それにしても、お嬢様。

 舌が急にオトナになりましたね」

 

「そうぉ? まさか、毎日ホットケーキだったから? 」

 

 お好み焼もどきを突っつきながらあたしは首を傾げた。

 

 それは申し訳ないことをした。

 だって、炊飯器も電子レンジどころかコンロもなくて、竈であたしができたのはホットケーキだけだったんだもん。

 

「いえ、その。

 その前から…… 

 甘口のバターオムレツに、甘いスクランブルエックのサンドウィッチ、エッグタルトが一度に出てきたこともありましたよね? 

 お嬢様、覚えたお料理一度に全部並べましたから」

 

 げ、何その組み合わせ。

 たまごとたまごとたまごが全部甘いって。

 

 そんなの毎日食べてたら栄養偏るよ。

 その前に、野菜とかくだものとか違う味のもの欲しくならなかったのかな? 

 

 さすがにちびっこの舌。

 自分の好きな甘い味のたまごだけ考えもなく並べたんだろうな。

 

 言葉だけでも思わず胸焼けを覚えてしまう。

 付き合わされるケイトにしてみたら、なおさらだっただろう。

 

「ごめんなさい。

 言ってくれればよかったのに」

 

「いいんですよ。

 そんな、お気になさらないで下さい。

 だんな様からも、今はまだ自由に好きな物を作らせなさいって、言い付かっていますから。

 聞かなかったことにして下さい」

 

 ケイトが慌てて首を横に振る。

 

 きっと、はじめたばかりで一番面白いと思っている時期に、あれこれ口を出して、料理すること嫌いになられちゃ困るとでも思ったんだよね。

 

 ちびっこの書いていたレシピノートから察するに、その献立はまだ改善されていなさそうだよね。

 

 誰もしてくれないから、面倒だけど、献立少し考えなくちゃ。

 

 このまま、いい加減なことしてたら、毎日ホットケーキの羽目になる。

 

 さすがに、それだけは避けたい。

 

「カップ麺でもあればなぁ…… 」

 

「お嬢様、そのカップ麺ってなんですか? 

 以前にも言ってらっしゃいましたよね? 」

 

 やばっ、頭の中で呟いていたことうっかり口に出ていたみたい。

 

「え? わたし、そんなこと言った? 」

 

 説明するのも面倒だし、その知識をどこから仕入れたのかを説明するのは更に困難だから、ここはすっとぼけておこう。

 

「言いましたよ、確かに」

 

 ケイトははぐらかされる気はないみたいだ。

 

 どうしようかなぁ? 

 


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