第四章~新たな仲間~(11)
一方、シルキアは気絶したカズンを彼女の部屋へ連れて行くと、ベットに寝かせて壁に寄りかかっていた。
しかし、数分としないうちにコンコンっとドアがノックされ、返事もしていないのに鍵を閉めてない扉は音を小さく立てて開く。
「シルキア、カズンの様子はどうだい?」
寝ているカズンを見ながら、白衣を纏った女性キヴィはゆっくりと中に入ってくる。そして、寝入ってるカズンの顔から、視線をシルキアへと向けた。
「……寝てる」
「そんなのみりゃわかるよ! ……寝言とか言ってなかったかい?」
シルキアの返答においおいっと思わず突っ込むキヴィ。大声にはっとして口元を押さえ、慌ててシルキアの傍まで歩み寄る。そして、小さな声で質問をもう少し具体的な物にする。
「……特には」
「そうかい」
しばらく考えた後、出てきたシルキアの言葉に詰まらなそうにキヴィは口を尖らせた。彼女の動作をたしなめる様にシルキアが視線を投げる。その視線に対して、キヴィは口を尖らせるのを止めて、彼の隣の壁へと寄りかかると、真剣な表情で視線を絡めてきた。
「なんだ?」
キヴィの視線にシルキアは怪訝そうに顔を顰める。キヴィは少し眉尻を下げて小さく口を動かした後、ふっと息を吐いて肩の力を抜いた。そして、苦笑交じりの笑みを浮かべてシルキアに問う。
「やっぱり……心配……かい?」
「あぁ……」
相変わらずシルキアはそっけない返事を返した。キヴィはぷっと吹き出して笑う。
「そうかい……もしさ、あたしが同じように倒れたら心配してくれるのかね?」
によっと口端を上げてからかう様に問うキヴィの言葉に、シルキアは眉を潜めて額に皺を刻む。からかっているのか、それとも本気なのかつかめない彼女の表情に一瞬、何を返していいのかわからなかったからだ。
しかし、シルキアは表情を変えないまま結論が出た返答を返す。
「……当たり前だ」
「なんだい、変な答えだね。あんたらしいっちゃ、あんたらしいけど。せーっかくからかって遊んでやろうと思ったのにねぇ」
口調は不満そうに間延びしたものだったが、キヴィの表情はどこか嬉しそうに緩んでいる。
シルキアは肩を竦めてそれ以上何かを言うのを止めた。キヴィはその動作を見ると可笑しそうに笑い、彼の肩を軽く叩く。
「さーて、カズン起こさなきゃね」
ひと段落といった感じで、キヴィがさらりと話題を変える。シルキアも頷いて未だに寝ているカズンを見た。
キヴィがつかつかと彼女が寝ているベッドへと近づく。
ごっ
「いったー!? な、なに!? なんかの襲来!!?」
何をするかと思えば、キヴィは容赦なくカズンの頭に肘鉄を食らわしたのだった。もちろん、カズンは痛さのあまり飛び起きる。そして、喚きながらじんじんと痛む額を押さえて涙目になりつつ、肘鉄を食らわした張本人を目を瞬きながら見つめた。
どうやら元気そうなカズンの様子を見ると、シルキアは何も言わずにその場からすっと姿を消した。キヴィの後ろからちらりと見えたシルキアが消えるのに、カズンはあっと小さく声を漏らす。
「はーいはい、キヴィさんの襲来だよ。さぁ、起きた起きた。お兄さん帰っちゃうかもしれないだろ?」
「え? あ、うん」
キヴィは焦らせるように早口で捲くし立てあげながら、カズンの腕を引いて引っ張り起こした。目を白黒させながらカズンはキヴィに言われるままにベッドから降り、端にあった化粧台へと座った。
キヴィがカズンの小さなピンクのリボンを解いて、髪を梳かし始める。
カズンは何がなんだか分からないままだったが、キヴィが何か自分のためにしてくれようとしていることは、なんとなくわかった。だから、そのままなすがままに彼女に身を任せたのだった。




