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三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~  作者: 杵築しゅん
神聖領ガイアスラー

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243 流民と治安維持(七)

 ◇◇ ホッパー商会 トルバート◇◇


 私はホッパー商会のキース侯爵領支店を任されていた、次男のトルバートで二十三歳。

 キース侯爵領には古代都市ロルツの最南端ゲートがあり、古代都市の遺物をメインに商売をしているホッパー商会の中では、三番目に大きな支店の責任者だ。

 それが急に父から、神聖国ガリアに行くから集められるだけの乾物や小麦を集めて、大至急本店であるゲートルの町に来るようにと指示がきた。


「オヤジ、納品先が大賢者でありエイバル王国の名誉侯爵ってことくらい、知らせておいて欲しかったよ」


 私は安い乾物や小麦を仕入れてしまい、信用を失うのではと青くなった。

 まあ量は確保できたが、侯爵様とか大賢者様に納めるような品質じゃないぞ。

 はあ? それで全く問題ない? ギューメラ王国の流民用だから? 


 そして気付けば、神聖国ガリアから独立したという、神聖領ガイアスラーの立ち上げと、大干ばつで苦しむギューメラ王国の流民を救う手伝いをすることになってしまった。

 領主になられたのは納品先だった大賢者様であり、父が本店で前に預かっていた幼女なのだという。


 ……九歳で新しい国の領主……う~ん、私の常識では理解できない。


 現実についていくのに数日かかったが、目の前にいる領主様は、まだ九歳になったばかりだというのに、日々、倒れる寸前まで仕事をして、何の得にもならない流民を救うために頑張られている。

 大賢者だからって、あまりにも可哀そうだってオヤジに言ったら、今回のザルツ帝国との戦争に勝てたのも、裏で大賢者様が活躍されたからだって聞かされ絶句した。

 

 大賢者様に寄り添っておられるアレス君……いや、アレス様は、アロー公爵家の後継者候補の筆頭だという。

 平凡に商売だけしてきた私には、あまりに高位過ぎる人たちだから、対応の仕方が分からないじゃないか!

 はあ? 普通で構わない? いや、でも、大賢者様であり領主様ですよね? てご本人に言ったら、本当はサンタさんでいいんだけど、なんて笑って仰った。


 発見された【サンアンシスロード】に初めて潜った時は、言葉が何も出てこないほどに感動した。

 古代都市ロルツとは全く様相が違うし、文明のレベルが高く、お宝の数々に目が飛び出しそうだった。

 商人として、これほどのお宝の山を見せられては、死ぬ気で頑張らざるを得ないじゃないか。


 今回エイバル王国からは、うちとモステル商会が声を掛けられたそうだが、モステル商会は国内最大の商会だ。

 到着後の会議で、モステル商会は領主屋敷の建築を一手に任され、まさかの巨額受注に驚き、直ぐに人材と資材をエイバル王国から取り寄せる段取りをしていた。


 ホッパー商会はというと、当面の間、流民のための物資を調達する仕事を振られている。

 シャングラの町だけではなく近隣の町にも出掛ける必要があり、本日は干ばつの影響が大きく出ている西の町に来ている。

 町は閑散として、商店はどこも扉を半分閉めており、食料品店と思われる店は、完全に扉を閉ざしていた。


 こういう状態の時は、現金ではなく食料と物品を交換する方が、確実に必要な物を確保できるとオヤジが言うから、試してみることにした。

 最初は現金を出して古着を購入しようとしたが、店主に首を横に振られてしまった。

 では、五キロの小麦と十キロの豆ではどうかと切り替えたら、店の商品の八割と交換してくれた。


 現金で買えば金貨五枚はする古着が、大銀貨一枚分にも満たない食料で購入できることに驚いたが、きっと店主は、自分の家族のための小麦を残して、信じられない高額な値段で、残りの小麦と豆を転売するのだろう。

 商人とはそういうものだし、売れる物をできるだけ高く売って利益を得るのだ。



「この町も、領主はまだ民に食料を配給していないようだ」


 次の町の路地で倒れている人に視線を向け、オヤジが忌々しそうに呟いた。

 この町に到着する道中でも、行き倒れた者たちを見掛けた。

 もしも馬車ではなく徒歩で移動していたら、追い剝ぎや盗賊に襲われていたかもしれない。

 何処の畑も作物は枯れ、井戸も底が見えるようになり、人々は飲み水さえ確保するのに苦労していた。


「大神官様が、大賢者様の代わりに様子を見てこいと仰った理由が分かりました。

 こんな状態の人々を見たら、優しい大賢者様は、きっとお心を痛められるでしょうね」


「ああ、そうだなトルバート。サンタさんは人一倍優しいからな。

 だがな、大神官様が決してサンタさんの視察を許可されないのは、安全面もあるが、この国の腐った貴族たちへの怒りを、大賢者様が抑えられるかどうかを不安に思われたからだろう」


 そう言った後、サンタさんが本気で怒ったら、王城や領主屋敷を魔法で破壊する可能性があるからなと、オヤジは真顔で凄く怖いことを付け加えた。


 ……王城を破壊? いやいや、訳が分からない。


 二つの町を急いで回り、中古服や木の食器や毛布や布などを、二つの空間拡張バッグが一杯になるまで購入した。

 特に中古服は、金に困った住民が売りに来るそうで、予想以上の量が豆と交換できた。嬉しい誤算だが、それだけ生活がひっ迫しているってことだ。

 結局、用意しておいた食料全てを使い、生活必需品と交換することができた。


「今頃は、流民たちがロードの中に移って生活を始めているだろうな。大賢者様は、何もかもが足らないと嘆いておられたが、私はそう思えない」


 他国の人間である私に言わせれば、雨風が防げて、夏だと言うのに涼しいロードの中に住めて、一日一食は炊き出しを食べられるなんて、道中の道端で行き倒れている者たちに比べたら天国だと思える。


「私も最初に流民を見た時は、あまりの様相に同情したが、今なら、あの者たちは領主に捨てられて良かったんじゃないかと思えるよ」


「ああ、そうだなオヤジ」


 

 五日後にシャングラの町に戻った私たちは、流民の数が千二百人になってしまったと聞き、心底この国の貴族に呆れた。

 しかもシャングラの町の領主は、王宮や高位貴族たちから、流民は見殺しにして構わないし領民を飢えさせてもいいから、王都に食料を送れと命令されたのだという。


 ……相談を受けた大神官様がブチ切れるのは当然だ。何故、民を見ないんだよ!  

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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