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三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~  作者: 杵築しゅん
神聖領ガイアスラー

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242 流民と治安維持(六)

 まだまだ問題は山積みだ。

 流民だからって、全員が可哀そうな弱者だとは限らない。

 乱暴者や嫌われ者は、この機会に領主から追い出されている可能性もある。

 薄暗いロードに、真っ暗な家の中……。危険はいっぱいだ。


 ……治安維持のために自警団も必要だし、女性だけの家には、中から施錠できるようにした方がいいかも。 


 そう言えば、最初にシャングラの町に辿り着いた三百人は、子供から年配者まで幅広い年齢層が居たけど、その後に辿り着いた者たちの中には、若い独身女性が居なかった。高齢の女性は多かったけどね。

 色々と思うところはあるけれど、子供を連れた女性はまあまあ居たから、針仕事や炊き出しの調理は任せよう。


 ……う~ん、トレジャーハンターとして大陸中の古代遺跡を巡り、新ロードを発見し、お宝をいっぱいゲットするという夢が遠い。


『何を言っているのサンタさん。新ロードを発見するという夢は一つ叶ったでしょう?』


『せやで、ここのお宝と言ったら、それもう凄い物ばかりや』


『それはそうなんだけどね、パトリシアさん、トキニさん。確かに見たこともない魔術具は山のようにあるし、高額間違いなしのお宝だっていっぱいあるけど、何故か、何故か大喜びするワクワク感がないのよ』


【サンアンシスロード】を発見した時は、夢のようだったしワクワクもした。飛び上がって喜んだ記憶もあるけれど、ここのお宝は、私とアレス君とシリスと教会のものであっても、大干ばつで苦しむ人々のために使うって大前提がある。


『そうねぇ、サンタさんの当初の目的でもあった、お母様や兄様のために住む家を買うって目標は達成しちゃったし、爵位も得たわよね。

 家族のためにがむしゃらに頑張っていた時は、お宝さがしに夢や希望を持てたけど、今はお宝探しが責務になっているからじゃない?』


『責務? う~ん、確かにそうかもマーガレットさん。王都に家を買うまでは、トカゲを討伐して大喜びし、魔術具を見付けて小躍りしてたもん。

 今回だってお宝を発見して嬉しいんだけど、責務かぁ……きっと、無責任なギューメラ王国の王族や貴族に腹が立つから、喜びが半減しているんだと思う』


 確かに、ゲートルの町でハンターになった当初は、お宝を見付けるのが楽しくて、お金が貯まると嬉しくて、毎日がキラキラしてた。

 私が大賢者じゃなくて、ただのトレジャーハンターだったら、今回の大発見を心からの笑顔で喜んだのかもしれない。


『サンタさん、そう難しく考えなくていいんじゃないか? サンタさんは、最強の魔法使いであり、最強のトレジャーハンターでもあるけど、大賢者として僕たち守護霊を従えている。

 世界中の古代遺跡を巡る夢は、いつか必ず叶うさ。まだ九歳だ。生き急ぐ必要はない。今はたまたま困難にぶち当たっているけど、ロードに名は刻んだだろう?』


 今日のショーニスさんは、いつもより雄弁だ。


『そうだね。夢は一つずつ叶えていけばいいよね。今は大賢者のサンタさんだけど、大干ばつが収束したら、金級トレジャーハンターとして頑張ればいい』


 うん、忙し過ぎて気分が落ちちゃったんだな。私は九才。人生これからだ!


『サンタや、魔法を現代に広めるわしの願いを叶えることも、忘れずに頼むぞ』


『もう、サーク爺ったら、仕事を増やさないでよ! 心配しなくても、世界中を旅しながら広めていくよ。

 エイバル王国には、もう種は撒いたし、バーリアン連合国の王族にも、魔力循環とカラ魔核充填は教えたもん』


 私は管理事務所で部屋割り表を書きながら、守護霊たちと会話して気持ちを切り替えようとする。


『あとは……そうだなぁ……四歳や五歳の頃と気持ちが違うのは、サンタさんが大人に近付いているからだと思うぞ。

 昔は気付かなかったことに気付き、見えなかったものが見えてきて、他人の行動や思考に疑問を持つようになった。それが大人になっていくってことだ』


 ショーニスさんに続いて、ダイトンさんまで今日は雄弁だ。

 物づくり系の二人は、いつも相槌を打ったり励ましてくれることが多かったから、今日みたいに教え導く感じの会話は珍しい。


『みんな、ありがとう! そうか、これが大人になっていくってことなんだね。

 五歳児で三十五歳の知能とかって言われていたから、もう気分は大人のつもりだったけど、心はゆっくり成長してたんだ。ほうほう。そうだよね。わたし、少女だもんね。えへへ』


 そう考えたら、なんだか気持ちが軽くなった。

 九歳児が、大人以上に責務を負う必要なんてないよね。

 大賢者だって子供だもん。よし、流民の皆さんが到着する前にロードで叫ぼう。


「ギューメラ王国の王族と貴族、いい加減にしろー! 他人任せにするんじゃなーい! バカヤロー!」


「ガウガウ、ガオーン」


 私の大声が、バカヤロー、バカヤローって、ロードに木霊していく。シリスの遠吠えも、続いて木霊していく。


 ……フフフ、ちょっとスッキリしたんじゃない?



 さあ、部屋割り表ができたから、照明の魔術具に三センチの魔核をセットしていこう。

 昨日お宝を片っ端から空間拡張ボックスに入れていったけど、照明の魔術具三十台だけは、東側の販売用の部屋に移さずに収納したままにしておいた。


「さてさて照明さんたち、ちゃんと灯ってくれるかな? 頑張って灯ったら、ご褒美に撫でてあげるね」


 子供でいいやと思ったら、なんだか楽しくなってきた。言葉使いだって子供でいいや。誰も聞いてないし。

 シャングラ支部が集めてくれた三センチのカラ魔核に、自分の魔力を充填してセットしていく。

 スイッチを押して確認したら、三十台の内、二十七台が無事に点灯してくれた。


 ……えへへ、これで洗濯場等の公共施設の灯りが確保できたよん。


「高度文明紀後期の魔術具、恐るべし。一万年後でも使えるって、凄すぎだよ」


「さっきは急に叫んでびっくりしたぞ。今度は何やら独り言をいっているけど、何かあったのか? まあ、あの叫びには俺らも同感したがな」


 いつの間にか、下ゲートの入場扉を設置し終わった【ロードの申し子】の五人が直ぐ後ろに立っていて、リーダーが心配そうに訊いてきた。


「いや、ちゃっとモヤモヤしたから叫んでみただけ。これ見て、この魔術具、凄く明るいよ」


 私は照れ笑いしながら、辺りを明るく照らしていく。 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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