239 流民と治安維持(三)
翌朝、王立能力学園の発明学科ミルーメ教授と、鑑定士学部のシリテーナ教授が興奮しながらやって来て、照明の魔術具だろうと予想していた魔術具が、起動できたと報告した。
「いやもう本当に、驚きの明るさですサンタさん! 徹夜して良かった」
シリテーナ教授が三センチの魔核を見せながら、これで起動しましたと目の下にクマを作って嬉しそうに言う。
見本として回収しておいた魔術具三台には、全て魔核が入っていなかったので、どの大きさで起動できるのか分からなかった。
一センチから順に試して、二センチだと起動しなかったそうだ。
「起動できたのが深夜だったので、その明るさたるや、お爺様のファイト子爵が発明した広域ランプと同等だと思います。
しかも、明るさが三段階で調節できる優れものでした。ああ、この感動を早く学園の皆にも伝えたい」
ミルーメ教授は瞳を輝かせ、興奮しながらグイグイと私に迫りながら話す。
探求心溢れる二人と他の工学部メンバーは、起動後も魔術具を分解してみたり、組み立て直してみたりしたから、徹夜してしまったようだ。
助手の三人は、ちゃんと早めに寝たらしく元気そうで良かった。
【サンタゲート】に到着後、今日と明日の予定を皆に伝えながら通路を下っていく。
第一扉の前から作業を開始するので、先にホワイトウルフ親子のことや、第一扉の周辺には、重要な施設がたくさんあることを、何も知らないメンバーに教える。
「神獣であるホワイトウルフ親子には、絶対に危害を加えてはいけません」
神獣という存在は、高額な値段で取引される商品にも成り得るから、私は最初にきちんと釘を刺しておく。
「なんと、伝説の生き物が本当に存在していたとは……」
バード商会のデルンさんが、自国にも白い神の使いの神話が残っていると言い、実は家でシルバーの毛並みの大型犬を飼っており、この春に子犬が三匹生まれて、本当に可愛いんですよと自慢した。
……う~ん、さすが灰色オオカミのデルンさんだ。やはり犬派だったかぁ。
ロード到着後、確認したホワイトウルフ親子は元気そうで、可愛い子犬を見た全員が、その愛らしさにメロメロになった。
灰色オオカミのデルンさんによると、二十日くらいの間は母乳を飲み、その後は母乳と柔らかい物も食べるようになり、運動も開始するらしい。
大型犬と神獣では成長過程が違うかもしれないけれど、参考にさせてもらおう。
第一扉から南に一キロ区間は公共重要施設が殆どで、まだ確認できていなかった他の扉を開けると、病院や役場的な広い事務所や、集会所や倉庫が多く、二つの倉庫から小型の時間停止装置と同じような魔術具を発見した。
片方は壊れており使用は不可能そうで、もう一つは壊れてはいなかったけれど、魔核が設置されていなかったので、現時点では使用できない。
その先の一キロは、一般住居というより様々な商会の事務所や倉庫群のようで、使えそうな金属製品が多数残されており、思わず神に感謝しちゃった。
そして、側道へと続く扉も発見した。
その扉には大きく数字と文字が書いてあり、他の扉と違って少し大きく、扉の下は地面より五センチくらい短く、角が金属で補強されていた。
ゴモラさんによると、北地区西の一番の三って書いてあるらしい。
最初に発見した側道は、念のために全員で入って探索してみた。
二十メートルくらい登ると、溶岩で道が塞がれていたけど、試しに大きな蝋燭に火をつけてみたら、煙が上へと流れていったから、溶岩が固まる過程で隙間ができて、地上まで風の通り道があるのではないかと推察した。
……まあ、一万年も放置されていた空間なのに、空気が澱んでいなかったし、側道へと続く扉は、換気用なのか下が五センチ空いている。
私とアレス君はヘロヘロになりながら、ロード東側の扉を全て魔法で封鎖し、初日の作業を終了した。
第一扉から二キロ地点で一般住居になっていたんだけど、途中に商店がぽつぽつとあり、五キロ地点までに西側で見つけた側道は五ケ所で、全て溶岩で塞がれてはいたけど、風が上に向かって流れていた。
ロードの東側にも、側道だと思われる扉が5つあったけど、時間がないので探索はしていない。
きっと商店や他の機能の部屋もあるだろうけど、今回は扉を開けず封鎖だけしておいた。お宝探しの楽しみは、部屋の中の遺物を販売する前に確認すればいい。
面白い発見としては、共同洗濯場や風呂が一キロ毎にあったことだろう。
扉の特徴も把握したので、五キロより先の区間の調査が楽になる。
嬉しい発見もあった。それは、洗濯場の水源が、八センチのカラ魔核に魔力充填したら復活したことだ。
これで奥の噴水まで行かなくても水が確保できるし、風呂の魔術具は壊れていたけど、洗濯場で体を拭くことは可能だ。
次の日の午前、アレス君と【ロードの申し子】五人は、五キロ地点に仕切り壁を作る。
大量の土や岩は、ゲートの手前二キロで採掘した。その時、亡くなったお父さんホワイトウルフを埋葬しておいた。
先に私の空間拡張ボックスに入っている岩を、ロードに並べていく。
その後で、アレス君の空間拡張ボックスから大量の土を取り出し盛っていく。
五メートル近い高さに盛った土は、アレス君が広域魔法陣を使って固める予定だ。
岩を並べた私はシリスと一緒に北に戻りながら、商品になる遺物を片っ端から空間拡張ボックスに収納していく。
残りのメンバーは、流民や調査隊が使えそうなモノをロードに出していく。
使えないゴミや朽ちた木製品などは、部屋を使う者が指定の場所に捨てることにする。
流民たちの最初の仕事は、寝泊まりする部屋の掃除になる。
昼前には空間拡張ボックスがいっぱいになり、東側の封鎖部屋の中でも広そうな部屋の扉を開け、中に出しておいた。
開けた部屋は偶然にも集会所のような場所だったので、全部出すことができ、その後も二回ほど同じように商品になる遺物を移して、扉を封鎖しておいた。
なんとかかんとか午後二時には作業が終了し、帰りの馬車の中で私とアレス君は爆睡した。
徹夜続きで魔力を大量に消費したから、もうヘロヘロだった。
使えるモノをロードに出したままになっているけど、助手の三人と教会の流民担当者二人の合計五人が、支援物資として流民に配布することになる。
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