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三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~  作者: 杵築しゅん
神聖領ガイアスラー

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235 迫る大飢饉(十四)

 美味い美味いという皆の声がするので、私とアレス君は疲れた体に鞭打って、皆の所へ行くことにした。

 いや、だって、なんだか香ばしくて美味しそうな匂いがするんだもん。

 横になっていたお母さんホワイトウルフとシリスも起き上がり、私たちと一緒にロードに出て移動する。


「サンタさん、アレス君、信じられないくらい美味いぞ、これ」


 まるでカニみたいに少しだけ黒い外殻を残し、白い身の部分を火で炙りながらサブリーダーが言う。

 ちょうど焼きあがった感じのモノを二つの皿に取り分けて、リーダーが渡してくれた。


 ……こ、この黒い外殻と毛が見えなかったら、カニだと思って食べられたのに。


 皿をじっと見て迷っていたら、お母さんホワイトウルフが「クゥーン」と鳴いて、私の横でお座りした。


「食べる?」って訊くと、私の頬をペロリと舐めてから、がぶりと食い付いた。

 隣では、アレス君が恐る恐る白い身をつついて、少しだけ口に運んでいく。

 じっとアレス君を見ていたら、困惑していた顔がパーッと明るくなり「美味しい」と言って目を見開いた。


「いや、だから美味いって言っただろう? ん、神獣様は生が食いたいのかな?」


 サブリーダーが解体したばかりの足の肉を切り分けながら呆れたように言い、寄ってきたお母さんホワイトウルフとシリスに、小分けした十センチくらいを皿に載せて差し出す。

 するとお母さんホワイトウルフは「ワン」と元気よく吠えて、シリスと一緒にバクバクと食べ始めた。


「よし、少女は度胸よ!」と自分を励ましながら、私もパクリと口に入れて咀嚼する。


 ……ん? んん? 何これ! 高級カニのような、高級鶏肉のような、表現が難しいけど間違いなく美味しいわ!


「よし(もぐもぐ)、これは月に一度の頑張ったご褒美に(もぐもぐ)するのがいいわね。明日の午前中までに全て解体し(ごくん)、全部を時間停止装置に入れるわ」


 私は口に中のご馳走を飲み込んで、皆に巨大蜘蛛の身を保存すると告げた。


「そうしようサンタさん。これはシャングラ支部に出したら大騒ぎになるレベルだ。お金にはなるだろうけど、僕たちの食料だって確保する必要があるもんね」


「いいことを言ってくれる、アレス君。これは第一扉より中には持ち込めない代物だ。どれだけ保存が効くのかも検証しなきゃならないからな」


 サブリーダーが嬉しそうに言って、今時点で解体したモノから順次、時間停止装置に保管していこうと皆に号令を掛けた。


「起動させてみないと分からないよサブリーダー。でも、動くと信じて挑戦しよう。これだけの量があれば、私たちや教会メンバー、教授たちにも分けられる」


 どうか起動できますようにと祈りながら、ゴモラさんの指導で、いろいろな部屋に置いてあった金属の箱の内、結構大きな物を綺麗に洗って、捌いた蜘蛛の身を詰めていく。

 魔術具の中は何も匂いがしないから、肉とか魚が入っていたとは思えないけど、今は緊急時だから蜘蛛の身を保存させてもらおう。


 蜘蛛の身……いや違う。美味しい白身を詰めた金属のひと箱を、時間停止装置に繋がれている縦横二メートル、高さは二・五メートルの銀色の箱にリーダーが収納し、アレス君が中央の時間停止装置の起動スイッチをポチっと押した。

 すると、低音でゴウンゴウンという音がなり始め、中央の時間停止装置にパパパパッと赤や青の光が点っていく。


 次に、見たこともない金色のキラキラした光が、美味しい白身を入れた銀色の箱の正面の上部で輝き、ずっと明るく点っている。

 美味しい白身を入れた方の銀色の箱は、キュインキュインと少し高い音を響かせ始めた。

 いったいどんな仕掛けなのか皆目見当もつかないけれど、どうやら時間停止装置は無事に起動できたようだ。



「あれ? おかしい。結構な量を入れているのに……」


 ハンター仲間たちが、代わる代わる美味しい白身を詰めた箱を入れていくけど、なかなか一杯にならない。


「サンタさん、これって、空間拡張ボックスなんじゃない?」


 一緒に様子を見ていたアレス君が、意外なことを言い出して驚いた。


『サンタさん、このひと箱にーは、この部屋と同じくらいの分量が収納できるーよ。ごめんね、言ってなかったーよ』


「えぇーっ! この箱って、この部屋くらいの物が入るの? ゴモラさん」

「なんだって!」


 私の話を聞いたハンター仲間も、私同様に驚いて目を丸くする。


 ……なんて素晴らしい技術なんだろう。これこそが、私とアレス君が製作を夢見ていた金属製の空間拡張ボックスじゃないの!


 そこから、すっかりテンションが上がった仲間たちは、夜通し解体作業をして、私とアレス君が目覚めた時には、美味しい白身を全て捌き終わって収納さえも終えていた。

 私とアレス君は魔力枯渇状態だったから、ぐっすりと深く寝入っていて、夜中に美味しい白身パーティーを皆がしていたなんて、全く気付かなかったよ。


 ここから皆は仮眠して、私たちは扉にペンキで書いてある数字の内、丸がしてある扉を開けて、使えそうな魔術具や武器などを空間拡張ボックスに回収し、重要部屋を魔法で封印していく。

 お宝部屋と名付けた大きな倉庫も発見し、噴水に使われていたパイプと呼ばれる管を見つけた時は、思わず喜びのダンスを踊っちゃったよ。


「これがあれば、地上に水を汲み上げられるね、サンタさん」


「うん、凄く嬉しい。地上までの距離分は無理でも、これだけあれば凄く助かるし、居住区の噴水をたくさん壊さなくて済むよ」


 いやもう幸運が続きすぎて、不安になるくらいだよ。

 お宝倉庫には、工具類もたくさんあったし、農機具らしき物も多数あった。

 今日は時間がないから、次に来た時にゴモラさんとショーニスさんに確認して、必要な物を持ちだそう。



 午前十時、私たちはホワイトウルフ親子を伴って、第一扉を開け居住区に戻った。

 もちろんハンター仲間は、巨大蜘蛛の固い外殻をアレス君の浮遊魔法でお持ち帰りしている。

 五分の一の量をリヤカーに積み、もしも商業連合の副会長が空間拡張ボックスを持っていたらお借りして、残りは収納して持ち帰る予定だ。


 ホワイトウルフ親子は、まだあまり動かさない方がいいので、第一扉の近くの倉庫に毛布を敷き、水と干し肉とランプを置いて留守番をしてもらう。 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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