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三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~  作者: 杵築しゅん
神聖領ガイアスラー

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234 迫る大飢饉(十三)

 時間停止装置のある食料保存部屋に戻ると、ホワイトウルフの親子は疲れてぐっすり眠っていた。

 置いていた水も飲んで干し肉も完食されていたから、なんとか早く元気になってもらいたい。

 私とアレス君の足音を聞いてピクリと起き上がったけど、安心したのか再び横になった。


「ごめんね、これから部屋の中でいろいろと作業をするから、煩いと思うの。静かな部屋が良かったら、違う部屋に移る?」


 お母さんホワイトウルフの頭を優しく撫でながら、私は質問してみる。


「ガウガウ、ガウ?」


 通訳するようにシリスが話し掛けると、お母さんホワイトウルフは首を横に振って再び横になった。


「煩くても、僕たちが居た方が安心なのかもしれない。特にシリスがね」

「確かに。不思議だけどシリスとは会話もできるみたいだし」


 赤ちゃんホワイトウルフの寝顔に癒され、私もアレス君も笑顔になる。


「さて、魔核に魔力充填する前に、現在、保管箱? の中に何が入っているのか確認しよう」


「そうだねアレス君。大トカゲの肉を入れるスペースを確保しなきゃいけないし、麦の種以外にも種があるかもしれないもんね」


 部屋の中心に置いてある大きな時間停止装置に繋がれている、四つの金属の箱の中を確認するため、箱の開閉口をそっと開いてみた。

 すると、四つの箱の中は全て空だった。


『きっと、生で食べることができる食料が保存してあったはずだから、逃げる時に持ち出したんじゃないかしら?』


『そうねマーガレットさん。逃げる時も食料は確保すると思うわ。再び戻ることができないと思ったら、何が何でも持ち出したはずだわ』


 パトリシアさんがマーガレットさんに同意して、逃げる時に持ち出したんだろうって考えることにした。

 折角だから、棚に保管してある瓶や箱の中のモノを一つずつ確認して、種・調味料・小麦・大麦・豆類・乾燥した野菜って紙に書いて、瓶や金属の箱に貼っていく。


 三分の二くらいは不明だったけど、それは原形を留めていなかったり腐っていたからで、殆どのモノは高度文明紀後期のショーニスさんと、前期のゴモラさんが何なのかを教えてくれた。

 予想以上に野菜や果物の種が残されており、干からびてはいるけれど、もしかしたらという奇跡を期待して、栽培に挑戦することにした。


 ……農学者が居るって、本当に有難い。他の守護霊のみんなも、本当にありがとう。


 高度文明紀後期に生きていたショーニスさんは、大陸の東で生活していたから見たことがない果物の種もあったけど、ゴモラさんが凄くおいしい果物だと教えてくれたから、テンションが上がっちゃうよ。

 もしも実がなったら、この時代に存在していない果物だから、神聖領ガイアスラーの特産品にできるかもしれないって、夢が膨らむよね。うふふ。


「じゃあ、魔核に魔力充填してみようか、サンタさん」

「うん、そうしよう」


 二十センチより少し大きいかもしれない透明のカラ魔核に、二人で両手を当てて深呼吸をする。

 見つめ合って同時に頷き、全力で魔力を充填していく。

 私もアレス君も一人で十センチ以上の魔核に魔力充填できるから、なんとかなるんじゃないかと思っていたけど、現実は想像を超えていた。


『サンタや、見える部分じゃと二十センチくらいじゃが、この魔核は奥まで機械に組み込まれており。実際はもっと大きいはずじゃ』


『エェーッ! そんなぁ……もう、魔力が無くなりそうなのに』


「サンタさん、僕はもう限界みたいだ」


 アレス君がそう言って魔核から手を離した時、これ以上魔力が充填できず反発を感じた。


「や、やった~! でも、私も限界だよ~」


 そう言って私は、へなへなと地面に座り込んだ。


「限界まで魔力を注いだことなんてなかったけど、これは結構な疲労感だね」


「うんうん、本当にねアレス君。危なかった~」


 へたり込んだ私とアレス君を心配して、シリスがペロペロと頬を舐めてくれる。すると心なしか、魔力が少し戻った気がした。


「ありがとうシリス。魔力を分けてくれたの?」

「ガウ」


 シリスが胸を張って、得意そうにガウと返事した。


 ……ほえ~っ、シリスったら、さすが聖獣様だ。


 疲れて休憩していたら、いつの間にか午後五時になっていたようで、仲間が調査から戻ってきた。

 透明だった魔核が美しい七色に染まっているのを見て、「やったな」って、皆が私とアレス君を褒めてくれた。


「でも、まだ起動してないよ。新しい守護霊のゴモラさんが、中に何か入れないと起動させられないって言うから」


「そうなのかサンタさん。それなら、大トカゲでも入れるか?」


 リーダーが魔核を見ながら残念そうに言って、大トカゲを入れたらと提案する。


『あのねサンタさん。昔この辺りを冒険した時に、巨大蜘蛛を食べた気がするの。記憶が曖昧だけど、村の人がお祭りの時くらいしか食べられないご馳走なんだと言っていたわ』


「えっ、巨大蜘蛛って食べられるの、パトリシアさん?」


『俺は食べたことはないんやけど、身が黒いと毒があって、白か透明に近いと食べられるって聞いた記憶があるで』


 星の再生紀に生きていたパトリシアさんと、その後の王国紀に生きていたトキニさんも、食べられる蜘蛛が居たという情報を出してきた。

 正直、聞きたくなかった情報だけど、ご馳走というくらいに美味しいのなら、食べてみたい気もする。いや、でも、蜘蛛だし……うむ~。


 渋々皆にも、あの巨大蜘蛛が食用になる可能性があることを伝えた。

 どうせ今から解体するんだから、白か透明に近かったら、焼いたりスープに入れてみればいいと、なんでも食べる【ロードの悪魔】の二人が提案してきた。

 よくよく話を聞いたら、モエナ支部のある町には、拳大の蜘蛛を素揚げにして食べる習慣があるらしい。しかも、結構美味しいんだとか……



 夕食後、私とアレス君は魔力枯渇に近い状態だったので、ホワイトウルフ親子の横で休み、ハンター仲間は少し離れた場所で、巨大蜘蛛の解体に挑戦した。

 先ず、然程固くない足を切って、身の色を確認したら綺麗な白色だったからと、湯を沸かしている火を使って焼いてみたらしい。


「なんじゃこりゃ! うめー!」


 うとうとしていたら、リーダーの興奮した声が、私たちの居る部屋の中まで聞こえてきた。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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