233 迫る大飢饉(十二)
恐る恐る付いてきたハンター仲間たちは、私とアレス君が大トカゲを収納している間、第二扉を調べてくれる。
「この二枚の巨大扉自体は閉まっているけど、右側の扉の半分から下は、元々開いていたのか、この部分を塞ぐ専用の扉があったのかは分からないが、現時点で閉めることは不可能だ、サンタさん」
巨大扉の四分の一は、閉めることができないとリーダーが教えてくれる。
サブリーダーは、意図的に開けられている気がすると言い、本当に危険なら、この先の外に出る第三扉を完全に閉めてしまえば、ロードは安全だったんじゃないかと皆も同意する。
……確かにそうかも。第一扉には、第二扉との間で狩りをする絵が描かれていた。
大トカゲを収納し、私とアレス君も第二扉を観察する。
第一扉より頑丈で分厚い扉には、素晴らしい彫刻や絵も描かれておらず、右扉の下半分は角が丸くなり、地底生物が何万回と通り過ぎたことが想像できる。
これだけ厚い扉なら大トカゲが激突しようが、びくともしないだろう。
開いている空間を通って第二扉の向こう側に移動し、反対側の扉を見てみると、雄々しく地底生物と戦う男たちが描かれていた。
この先には、想像もできない凶暴な地底生物や地上生物が生存していることだろう。
用心しながら薄っすらと明りを灯し、ロードの先の様子を確認すると、これまでと同じように左右には扉のある部屋が続いていた。
でも、扉に一番近い部屋には鉄格子が嵌められ、まるで狩った獲物を入れる檻のような空間だった。
「あれは、殺処分前の獲物を捕らえておく場所なんじゃないかな。この先も偵察したいところだけど、危険度が高すぎる。
発見した部屋にあった武器が使えるなら、いつか、この先へ進もう」
「そうだねアレス君。暫く肉は必要ないけど、水や野菜なんかも必要だから、先に地上に水を引くことを優先しよう。
この穴というか塞がれていない部分は、このままにしておくね。今後も食料調達が必要だから」
探求心はあるけれど、今は地上の町づくりや畑づくりを急がなきゃ。
もうすぐ七月。今から直ぐに種を撒けば、二か月後くらいには食べられる野菜が育てられるかもしれない。
『ねえねえゴモラさん、あの荒地で栽培できる野菜ってあるかなぁ?』
側道の場所まで戻りながら、農学者だったゴモラさんに質問してみる。
『そうだーね、食料貯蔵庫にあった種はーね、僕たちの時代の主食だった麦だーよ。日照りにも強い品種に改良しーて、保管していたと思うーよ。他にも種があるかもだーよ』
「えっ、あれって麦なの? 今の時代の麦より大きいよね? 品種改良? そんな技術もあったんだ。他にも種があるかどうか調べてみなきゃ」
私はゴモラさんとの会話内容を皆に伝えて、試しに種を撒くつもりだと伝えた。
……ちょっとだけ希望が持てたんじゃない? 野菜は大事だけど、麦があればパンだって焼けるもんね。
なんだかんだで昼食が遅くなったから、側道を少し過ぎた場所で休憩し、急いで簡単なスープを作った。
それにしても、このロードの先は、何処に通じているんだろう?
数種類の大トカゲに巨大蜘蛛、そして神獣ホワイトウルフ……謎は深まるばかりだけど、探索欲は暫し封印して、流民対策に集中しよう。
明日にはシャングラの町に流民が到着してしまう。町から【サンタゲート】までの区間の移動だって大変だ。
やっと目的地のシャングラに到着したと思っていたら、自国ではない神聖領ガイアスラーに向かえと命じなければならない。
幸いにも、シャングラの町を統治している子爵は善人だから、流民に無体なことはしないだろう。
シャングラの町の井戸は枯れていないから、水だけでも飲ませてあげてとお願いしてある。
教会にも井戸があるけど、教会では豆を入れたスープを用意する段取りになっていて、流民は全員、水を飲んだら教会の敷地内に待機させる予定だ。
町の城壁の外に腰を据えてしまうと、移動したがらない者が必ず出てくる。だから、教会の指示に従うと同意した者にだけスープを提供する。
明日の午後には教会に戻るから、戻ってからの段取りを全員で確認する。
【最速踏破者】の六人には、教会で流民の護衛と警備をお願いしてある。
【ロードの申し子】の五人と【ロードの悪魔】の二人には、シャングラ支部のハンターと一緒に大トカゲの解体を手伝ってもらう。
この量を解体するのは大変だし、保管場所も……
「た、大変、この量の肉を保管する場所がない! ど、どうしよう、夏だから日持ちしないよね」
なんということだろう……重要なことを失念していた。せっかくの大量のお肉がダメになってしまう。
「う~ん、先日シャングラ支部に行った時に見た保管庫だと、確かに大トカゲ四頭が限界かもしれないなサンタさん」
サブリーダーがシャングラ支部の施設を思い出しながら、残酷な報告をしてくれる。
『ねえねえサンタさん、あの、時間停止装置は稼働できないの?』
「えっ、時間停止装置を稼働する? 確かにあの装置が起動可能なら、お肉も腐らないのかなあ? ねえゴモラさん、あれって肉にも対応できる?」
『もちろん、できるーよ。ただ、あの大きさの魔核が必要だーね』
ゴモラさんは、同じ大きさの魔核が必要だから、難しいかもねと付け加えた。
「アレス君、あの二十センチの魔核、二人で協力すれば充填できるかなぁ?」
守護霊との会話を説明しながら、魔核充填できるかどうかを訊いてみる。
「できるんじゃないかな? サーク爺はなんて?」
『やってみなければ分からんのう』
「やってみなきゃ分からないって。よし、これから私とアレス君は、ホワイトウルフの親子の様子を見ながら、時間停止装置の起動に挑戦する。
皆は、このペンキで扉に番号を書いて、扉の中の様子を記録して」
もしも重要な部屋を発見したら、番号を丸で囲んでおくよう追加で頼み、後から開かないように魔法を掛けることにした。
「了解。午後五時までに確認できる部屋には必ず番号を書き、中の様子も記録しとくぜ」
リーダーが笑顔で請け負ってくれ、他のメンバーも任せろと頼もしい返事をくれる。
「よし、それじゃあ巨大蜘蛛を浮かせる魔法陣を使うから、押すのは宜しく、リーダー」
「おう、任せろアレス君!」
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