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三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~  作者: 杵築しゅん
神聖領ガイアスラー

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232/244

232 迫る大飢饉(十一)

 シリスが後方を警戒して「ウーッ」と低く唸り始める。

 このズルズルした重い感じの音は、大蛇かそれに近いトカゲか……未知の地底生物か……


「アレス君、側道からも何か来る! 目の前の奴を速攻で倒すよ!」


 私はそう叫んでメインロードに走り出ると、持っていた杖に強く魔力を流してロードを明るく照らす。

 ここの大トカゲたちは、日頃暗闇の中で活動しているから、きっと驚くはずだ。

 シリスは二頭の大トカゲのことは見向きもせず、側道の方を見たまま威嚇を続けている。どうやら側道から来る何者かの方が、危険性が高いようだ。


「了解、サンタさん。大きい方は氷の攻撃で仕留めるから、サンタさんは、そっちを向いているトカゲをお願い」


 アレス君はそう言いながら、自分の身長と同じくらいの長さで、腕の太さと同じくらいの太さの尖った氷の塊を空中に浮かべて攻撃態勢に入った。

 私は得意の高温の炎の槍を二本作って、こちらを向いている大トカゲに狙いを定める。

 ほぼ同時に、私とアレス君の攻撃が大トカゲに命中し「ギョェー!」という断末魔の叫びを轟かせながら、ダーンと大きな音を立てて倒れた。


 私は直ぐに後ろを振り返り、今度は側道の先を明るく照らして、不気味な音の正体を探るように目を凝らす。

 動きの速い奴だと仲間が危険に晒されるから、ここで食い止めるしかない。

 シリスの警戒する唸り声は続いていて、ズルズル地を這う音はどんどん大きくなる。


「信じられない! 巨大な蜘蛛が獲物を糸で絡めて引き摺っているなんて……」


 私の隣に駆け寄ってきたアレス君が、魔核の明かりに照らし出された側道の奥に視線を向け、入口までやって来た、真黒の毛がいっぱい生えている高さ三メートルはある巨大蜘蛛を見て絶句する。


「ギヤーッ! 無理、あれは絶対に無理!」


 昆虫系の巨大地底生物が苦手な私は、ギャーッと叫んで鳥肌がたち、アレス君の後ろに避難する。


「サンタさんは下がって! 後方から火の攻撃をお願い」


 アレス君はそう言って、リュックの中から高度文明紀後期に作られた金属片を取り出し、先に攻撃を仕掛けていく。

 恐らくだけど、初めて人間に遭遇したであろう巨大蜘蛛は、自分より小さい人間を弱い餌だと認識したに違いない。

 だから、攻撃されるなんて思っていなかったようで、アレス君の攻撃をまともに受けて、たくさんある足の内、右側の二本を切り取られた。


「ピギー! ピギー!」


 高音の鳴き声、いや、威嚇音を出して、口をガチガチと鳴らしながら、アレス君に向かってお尻を高く上げ、私の腕の太さくらいある糸を吐き出した。

 アレス君と私はなんとか避けて、シリスは巨大蜘蛛の足元に飛び込んでいく。


「サンタさんは下がれ! 蜘蛛なら糸に気を付ければいいだけだから、俺たちに任せろ!」


 後方で様子を窺っていた【最速踏破者】のリーダーが、皆を連れて駆け寄ってきた。


「ごめんね、お願い!」


 私は涙目で言って、巨大蜘蛛の本体をできるだけ見ないよう足元に居るシリスに視線を向ける。

 この蜘蛛も光に慣れていない様子なので、私はどんどん杖の先の魔核に魔力を流してロード内を明るくしていく。


 アレス君は糸の攻撃を避けながら、持っていたもう一枚の金属片を魔法を使ってコントロールしながら、今度は左側の足を二本切断する。

 両側の前足を二本失った巨大蜘蛛は、バランスを崩して前のめりになり、その瞬間を待っていたハンター仲間が、左右から攻撃を仕掛けていく。


 私は巨大蜘蛛の視線をこちらに向けるため、大人の頭の大きさくらいのファイアーボールを、糸を吐き出すお尻に近い後部に向かって放った。

 攻撃は命中したけど、体中に生えている体毛みたいなモノを一部焼いただけで、大きな損傷を与えることはできなかった。

 直ぐに糸を吐き出し反撃されたけど、私の居る位置までは届かず、悔しそうにギーギーと嫌な音を出した。


 ……セーフ。でも、こんなに外殻の固い蜘蛛は初めてだ。


 その間にも、仲間が足を集中的に攻撃し、シリスも壁を駆け上がったりしながら縦横無尽に走り回り、巨大蜘蛛を攪乱してくれる。

 巨大蜘蛛は残った足でカサカサと動き、仲間が二人跳ね飛ばされていく。

 アレス君は、太ももくらいの大きさの尖った氷を空中に二個浮かべて、首と胴の関節部分を狙って攻撃を放つ。


「ギエー!」と大きな声を出した巨大蜘蛛は、最後の力を振り絞るように、辺りに糸をまき散らしていく。

 リーダーの剣とサバンヤさんの槍が糸に絡み取られ、【ロードの悪魔】のルーデンさんが、頭から糸を被ったけれど、スキンヘッドなので帽子だけを絡め取られて無事だった。


 そんな攻防戦も、アレス君の攻撃が効いて巨大蜘蛛は動かなくなり、なんとか勝利した。

 跳ね飛ばされた二人も、軽い打撲で済んだみたいで一安心だ。


 ……それにしても、巨大過ぎるし気持ち悪い。


「これだけ固けりゃ防具として使えるから、シャングラ支部に持ち込もうぜ」


 巨大蜘蛛の外殻をコンコンとナイフの柄で叩きながら、サブリーダーが嬉しそうに提案する。


「サンタさん、これ、要る」

「要らないよリーダー。あげるけど、この巨体を収納する予備の空間拡張ボックスがないよ。もしかしたら、商業連合の副会長が持ってるかもしれないから聞いてみて」


 私は見るのも嫌だから、視線を巨大蜘蛛に向けないようにして、倒した大トカゲ二頭を自分の空間拡張ボックスに収納した。

 この蜘蛛は仲間八人が解体し、外角だけ手分けして持ち帰ることに決まった。

 取り合えず第一扉の近くまで、アレス君が魔法で持ち上げて移動させるみたい。


「ふう、こっちの側道も危険だって分かったから、ちゃんと調査するまで、三分の二の高さまで塞いでおくことにする」


 シャングラ支部のロードから【サンアンシスロード】に進入するために、アレス君が掘った通路の土を、近くの部屋に置いてあるから、あの土を使って巨大な地底生物がやってこないよう、側道入口を塞ぐことにした。


「やることが多いけど、先ずは大トカゲの回収よ! さあ、もう一度第二扉まで戻るわよ」


 そろりそろりと用心しながら戻ったら、生きている大トカゲの姿はなかったのでダッシュで走り、息絶えている大トカゲを空間拡張ボックスに収納した。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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