表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~  作者: 杵築しゅん
神聖領ガイアスラー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

230/246

230 迫る大飢饉(九)

 シリスに続き、耳を澄ましながら部屋の中を進むと、その部屋はかなり広い倉庫で、奥の方からキューキューと可愛らしい鳴き声と、グーッ、ウーッという低い唸り声が聞こえてきた。


『サンタさん、この先にホワイトウルフの親子がいるわ。どうやら父親はケガをしているようで、かなり危険な状態よ』


 先行して様子を見に行ってくれたパトリシアさんが、この先にホワイトウルフの親子が居ると教えてくれた。


「ホワイトウルフ? アレス君、ホワイトウルフって知ってる?」

「サンタさん、それってお伽噺に出てくる森の守り神じゃない?」

「えっ、ウルフなのに守り神なの?」


 私は杖の明かりを少し落として、驚かせないよう気を付けながらアレス君と会話する。


『本当にホワイトウルフなら、私の生きた頃には、山神の使いって言われていた気がするな』


 高度文明紀後期のエンジニアだったショーニスさんが、追加情報をくれる。


『ああ、白くて巨大なヤツだーね。僕の時代にもいたーよ。火の山の使い様って言われていたーね』


 高度文明紀前期の農学者だったゴモラさんまで、似たような神さまっぽい感じの動物の話をする。


『サンタや、あれは確かにホワイトウルフじゃ。絶滅したかと思っておったが、生きていたとは驚きじゃ。恐らく大トカゲと戦ってケガをしたんじゃろう。わしの時代には神獣と呼ばれておったが、母親は子を産んだばかりじゃ』


「アレス君、どうやらこの先に、聖獣である光猫のシリスと同じように、大昔から神獣と呼ばれてたホワイトウルフの親子が居るみたい。

 しかも父親は瀕死のケガをしていて、母親は子供を産んだばかりらしいよ」


 私は一旦立ち止まって、他のメンバーとも情報を共有し、子を産んだばかりの親は警戒心が強いだろうから、慎重に確かめる方が良いだろうと意見が一致した。

 シリスがそのまま先行して、私だけが杖の明かりを薄っすら光らせて、確認することにした。


 警戒する唸り声は続いていて、近付いてきたシリスを見ると、唸り声はより大きくなった。


「ガウ、ガウ」


 ちょっとだけ大きな声でシリスが警戒するような声を出すと、先ほどまでの唸り声がピタリと止んだ。

 シリスは全く警戒していないし、寧ろ心配しているような気がするから、少しだけ明かりを強くして、ホワイトウルフの方を照らしていく。


 私の目に映ったのは、シリスの倍の大きさはあろうかという巨大な白い狼が、体中に赤い血を付けて、家族を守るように懸命に立っている姿だった。

 その後ろには、二匹の子狼を守るようにして伏せている母親狼が見える。

 体はシリスより少し大きいくらいだけど、こちらも前足から血を流している。


『出産のために安全な場所を探していたんでしょうね。でも、きっと大トカゲの群れに遭遇したんだわ。可哀そうに。あっ、父親が倒れるわ』


 マーガレットさんの話を聞いている最中に、血だらけで懸命に立っていた父親狼の体が、ゆらりと揺れたかと思ったら、傾いて倒れていく。

 気付いたら走り出していた私は、頭を地面に打ち付けないよう、浮遊魔法を放っていた。

 地面すれすれの所で父親狼の体は止まっていて、私は直ぐ傍まで行き、ゆっくりと父親狼の体を地面に横たわらせた。


「可哀そうに、こんなになっても……け……懸命に……家族を守ったのね。よしよし、頑張ったね。もう大丈夫。これからは私が家族を守ってあげるからね」


 唯一血がついていなかった頭を撫でながら、息を引き取った父親狼に労いの言葉を掛ける。

 シリスも父親狼が亡くなったと気付いたようで、「ガオーン」と悲しそうに鳴いた。

 私に警戒の視線を向けながら、子狼を腹の下に隠すようにしていた母親狼が、フラフラと立ち上がり、亡くなったパートナーの頬を舐めてから、「クオーン」とひと鳴きしてドサリと倒れるように伏した。


 私はなんだか水を飲ませなきゃいけないような気がして、空間拡張リュックから急いで大きな水筒と深皿を取り出し、母親狼の顔の横で水を注いでいく。

 トクトクと注ぐ水音を聞き、母親狼は重そうな首を懸命に上げて体を起こして、なんとか水を飲もうとする。


「大丈夫、ゆっくり、ゆっくりでいいよ。もしも、トカゲが襲ってきたら、私が仇を取ってあげるからね」


 そう言いながら母親狼の背中を撫でて、心細そうにキューキュー鳴いている二匹の子狼の頭をそっと優しく撫でる。

 水を飲んで少し落ち着いた様子のホワイトウルフの親子に、私の仲間を紹介する。


「みんな、神獣様だからね。ちゃんと敬意を持って接してよ」


「了解」と皆は頷いて、可愛い子狼に目が釘付けだ。


「生まれて半日くらいかなぁ?」

「どうだろろうね、サンタさん。本当に可愛いね」


 アレス君も傍に来て、子狼の頭を優しく撫で始める。


『サンタや、父親は地上に埋めてやれ』


「了解、サーク爺。地上に埋葬したいので、ご遺体をお預かりしてもいいですか? 神獣ホワイトウルフ様」


「ガウガウガウ」


 まるで通訳するように、シリスが母親狼に向かって話し掛けた。


「ワン」と一声鳴いて、母親狼はもう一度父親狼の顔を舐めると、何かを訴え掛けるように私を真っすぐ見て、再びその場に伏せた。

 きっと了解してくれたんだろうなって解釈し、簡単な祈りの言葉を唱えてから、昨夜新しく作った空間拡張ポーチに納めた。


「これからどうする?」


「食糧難の解消はしなきゃいけないから、もっと先に進むよリーダー。ホワイトウルフの親子には、扉が閉まる部屋に移動してもらって、暫く休んでもらう」


 そうと決まれば行動あるのみ。

 シリスがガウガウと母親狼に何か話し掛けて、私とアレス君は子狼を一匹ずつ抱っこして、頑丈そうな扉の部屋を探して移動を開始する。

 向かい側の部屋は金属で補強された扉だったので、先にサブリーダーが扉を開けて中を確認してくれる。


「なんだ此処は!」


 扉を開けたサブリーダーが、驚いて扉から三歩下がった。

 何事? って、皆で部屋の中を覗くと、そこは貯蔵庫みたいで、大きな壺や木箱、大小様々な瓶に金属製の箱などが、所狭しと金属の棚に並べられていた。

 ひと際目を引きたのは、一辺が二メートル四方の高さ三メートルの魔術具で、近くには同じような四角い魔術具が四台並んでいた。


『あれが時間停止装置だーよ』

『えっ!』 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ