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保護惑星の魔石採集者  作者: あおおに


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9/23

冒険者たち

 男たちからは剣呑な匂いしかしなかった。

「青山くん、魔法反射の準備しとけ」

 俺はそう言うと、CAさんたちの前に出た。

 わずか数歩前に進むだけだが、今にも矢が飛んで来るんじゃないか、魔法が撃たれるんじゃないかというプレッシャーが半端ない。

「何だ、あんたら?」


 俺の口から出たのは、現地語の筈である。元々、俺たちにデフォルトで与えられていた能力だ。

 男たちはニヤニヤしたまま、互いに顔を見合わせる。そして、リーダーらしい男が一歩前に出た。

「俺たちは、しがない冒険者ですよ、旦那方」

 俺たちを嘲る様な返事。しかし、言葉がちゃんと伝わっているのは確認出来た。

「その冒険者さんたちが、何の用だい?」

「いやいや、見たところ大変な様だし、俺たちが手伝ってさしあげようかと思いましてね」


「ありがたいが手は足りている。気持ちだけ受け取っておくよ」

「そんな水臭ぇ事言わないでさ。お礼は、その森林牛まるごと。ついでに、女たちの身の安全も俺たちが見てさしあげますよ」

 男が凄みをきかせた笑みを浮かべる。

「それは、冗談かい?」

 俺は右手を横に向けると、ウォータージャベリンを放った。


「……!!」

 水の槍が立ち木にぶち当たり、幹を折り砕く。

 メリメリメリッという音とともに立ち木が倒れ、ドスンと地響きを立てた。

 男たちの顔が白くなった。どうやら、中級魔法はかなりの威嚇になるらしい。

 続いて。

「サンダーシャワー」

 竜ヶ原さんの声が聞こえたと思ったら、俺がウォータージャベリンを撃ち込んだ辺りに、雷の驟雨が降り注いだ。


 無数の稲光が走り抜け、連鎖的な爆発が生じる。

 砕け散る立ち木。

 折れ飛ぶ枝葉。

 目がチカチカし、耳がキーンと鳴る。そんな状態で、俺は平然を装って男たちに視線を向けていた。チカチカした目では分かりにくいが、男たちが動揺してるのは伝わって来る。


「で、もう一度訊くけど、今のは冗談だったのかい?」

「え……、あ、ああ、冗談だ。冗談に決まってるじゃないか」

「そうか。悪いな、こちらは外国人なんで冗談が分かりにくいんだ。本気にしかけたぞ」

「あ、ああ、そうか」

 その途端、男たちの背後から炎の塊が俺めがけて飛んで来た。

 ファイヤーバレット───。


 しかし炎の弾丸は俺の眼前で透明な壁に阻まれ、明後日の方向に軌道を変える。

 青山くんの魔法反射だ。

 炎の弾丸は立ち木に当たり、その幹を燃え上がらせる。

 俺はゴクッと唾を呑み込んだ。初魔法攻撃を食らってしまった。笑えない。青山くんがいなかったら、俺の顔面が燃え上がっていた。

 頭に血が上りそうになるが、ここで切れては意味がない。CAさんたちに必要ない対人戦をさせる訳にはいかない。


「今のも、冗談かい?」

「お、おぅ、そうだ。冗談だ、冗談!おい、お前ら、出て来い!」

 男に呼ばれ、冒険者たちの背後から更に2人の男が姿を見せる。1人は弓矢を持っており、もう1人は魔法使いっぽい出で立ちだ。

 サンダーシャワーなんて上級魔法を見せられた後で、ファイヤーバレットごとき初級魔法を撃って来るんじゃないよ。どうやら、魔法使いが暴走したらしい。もちろん初級魔法でも、当たってたら只じゃ済まなかった。


「これ以上冗談を続けるなら、サンダーシャワーをお見舞いするぞ?」

「いやいや、もう大丈夫だ。冗談は終わりだ」

 俺は芦屋くんに目を向け、「火、消せるか?」と訊く。

 芦屋くんは頷くと、燃える木の根元の土を操作し、幹に纏い付かせるとバキバキと音を立てて砕いてしまった。そうして、燃える破片を残らず土に埋めてしまう。だいぶ予想と違う消火方法だったが、更に冒険者たちの顔を白くさせる事には役立った様だ。


「で、あんた、名前は?」

「ガイアスだ」

「ガイアス、ここには何をしに来た?」

「こ、この帰らずの森は、高く売れる魔物が多いんだ。だから、金儲けに……」

「ふーん、それが例えば、この森林牛って訳か?」

「そ、そうだ。それだけの個体なら、高く売れるんだ」

「悪いが、これは俺たちの獲物だ。お前たちには、やれん」

 落胆するガイアスたち。弓矢やファイヤーバレット程度じゃ、この牛を狩るのは厳しいだろう。


「売れるって事は、街は近いのか?」

「森から一日ぐらいの距離だ」

「森を抜けるには、どれぐらいかかる?」

「やっぱり一日ぐらいだ」

 丸二日で街に着けるのか。思ったよりも近い。芦屋くんと青山くんが息を呑む。


 そこから、しばらく尋問を続ける。

 話を聞いてみれば、ガイアスたちもそれなりの腕利きであるらしかった。デカいイノシシぐらいなら、確実に狩れるらしい。下手に対人戦をやってたら、大怪我をしてたかも知れない。

 こちらは、あくまで森に住み着いた外国人のフリだ。いや、そのままか。

 とにかく、まだ下手な情報を与える訳にはいかないので、発言には注意した。


「さて、聞いておきたいのは、こんなものかな」

「お、おい、どうする気だ……?」

「情報が洩れるのはイヤだし、殺っちゃうでしょう?」

 竜ヶ原さんが芝居じみた口調で、そう言う。

「ま、待ってくれ!もう、おかしな冗談はしねぇし、あんたたちの事は黙ってる!」


「ちょっと新しい魔法も試してみたいのよねー」

「あ、なら俺も使いたい魔法があるんだけど」

 竜ヶ原さんのノリに、芦屋くんも乗っかって来る。芦屋くんは、もしかして本気じゃない?

「な、何でも言う事きくから、勘弁してくれ!!」

「ほう。そうか。じゃあ、地図は持ってるか?それと引き換えに生命だけは助けてやる」

「お、おぅ」


 ガイアスが懐から折り畳んだ紙を取り出すと、その場に置いた。

「そのまま帰っていいぜ。ただし、それが偽物だったら、魔法が追いかけるがな」

「だ、大丈夫だ。普段から俺たちが使ってるちゃんとした地図だ。……じゃ、じゃあ、引き上げるぜ?」

「ああ、気をつけてな」

 俺がヒラヒラと手を振ると、ガイアスたちは凄い勢いで森の中を駆け去って行った。


 しばらく、そのまま待った。

 ガイアスたちの伏兵がまだいないとは限らない。

 地図も確かめにはいかない。地図が偽物なら偽物だって良かった。とにかく、安全第一だ。

 やっぱり索敵役は必要だなぁと思いながら二〜三分待ち、何も変化がないので、俺はその場に座り込んだ。

「あー、緊張したー!」


「ふぅーっ」という声に振り向くと、竜ヶ原さんもその場にしゃがみ込んでいた。

「ナイスアシスト、竜ヶ原さん」

「どういたしまして」

「青山くんもナイスタイミングだった。お陰で助かった」

「いえいえ。お役に立てて嬉しかったです」


 芦屋くんが呑気に地図の所まで歩いて行き、持って帰って来た。もしかして罠が……と思ったが、大丈夫だった様だ。

 地図は、2枚あった。

「この森と、近隣の街の地図みたいですね」

「ほほぉ。ここを帰らずの森って呼んでたな。一番近い街は、タグマンて所か」

「この情報、浜部さんたちに流しても?」

「ああ、どうせ情報は共有するしな。ただ、この地図を取られたりしちゃ、たまらんな」


「腕輪の通販システムに、コピーサービスがあるわよ」

「どこのコンビニだよ」

 俺たちは地図のコピーを取ると、大急ぎで森林牛を解体し、帰宅の途についた。

 恐らく、ガイアスたちは情報を洩らすだろう。

 その時の為に、準備が必要であった。



 

 

読んでいただいて、ありがとうございます。

こんなお話でも面白いと思って下さったら、『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にしてポイントを入れてもらえたら嬉しいです。

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