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保護惑星の魔石採集者  作者: あおおに


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4/9

気持ちだけではダメなんだ

 澤村くんたちの遺体を回収して拠点に戻って来ると、生き残った少年たちがひどく叱責されていた。

 少年たちを地面に正座させ、へんに慣れた調子で説教しているのは、見慣れない初老の男だ。

「誰、あれ?」

 CAさんに訊くと、「ああ、浜部っていうどこかの教頭のおっさんよ」という返事だった。教頭といっても少年たちの高校とは関係ないらしい。ないらしいが……。

「今頃出て来て、偉そうにすんなよな」

 それが、俺が思った事だった。


 俺は浜部たちに近づくと、ぱんぱんと手を叩いた。

「はいはい。そんなもんで良いでしょう。解散、解散」

「なんだね、君は!?まだ話は終わっとらんぞ!」

「澤村くんたちを連れて帰って来たんでね、こんな事してる場合じゃないでしょう?……さあ、お前ら、澤村くんたちをちゃんと弔ってやれよ」


「いや、まだだ!彼らには自分たちの行動がどれほど愚かだったか、骨身に染みて理解させる必要がある!」

「仲間2人が死んでて、骨身に染みてない訳がないでしょう!さあ、お前ら行って良いぞ!」

「は、はい!」

 正座で痺れた足で、ふらふらと駆けて行く3人。


「ちっ……!」

 舌打ちして、浜部も去って行く。

 最後にすごく睨まれた。

「態度悪ぃな」

 浜部の禿げた後ろ姿を見送ると、俺はテントに戻った。

 高校生たちのテントの方から泣き声が聞こえたが、俺は足を止めなかった。澤村くんとのお別れは、高校生たちだけでやるのが良いだろう。俺は引率の教師じゃないし。





 

 昨日の肉の残りと、拠点の近場で採ったという果物を堪能していると、またしてもCAさんたちがやって来た。美人さんが訪ねてくれるのは嬉しいが、色っぽい目的であって欲しいというのが本音だ。

「高校生たちの事が心配で……」

 リーダー格の清水さんが、予想通りの事を言い出す。

「放っておけば、いいんじゃない?」

 俺が軽口を叩くと、いつも俺を睨む美人さんが「高校生たちは、あなたみたいな鉄の心臓持ってないんですからね!」と怒り出す。


「俺だって、鉄の心臓なんか持ってねぇわ!」

「だったら、もっと子どもたちに優しくしてあげて下さい!」

「俺たちが優しくしてやりゃ良いってもんじゃないと思うけどね」

 それに異星人の精神コントロールがかかっているから、これで潰れたりはしないだろう。これは、口にしなかったが。


「あなたとアヅマさんが高校生たちに一番慕われてるんですから、声ぐらいかけてやって下さい!」

「俺も?アヅマだけの間違いだろ?」

「あなたもです、本当にどうしてか」

「おいおい。本音がダダ漏れだろ」

「とにかく、お願いします。一言で良いですから」

 最後は、やけに神妙な態度で頼んで来た。調子が狂う。


「あんた、名前は?」

「私?竜ヶ原です。竜ヶ原(りゅうがはら)咲子(さきこ)

「俺は虎須(とらす)大吉(だいきち)だ」

 そう言って、俺はテントを後にした。

 基本、美人のお願いは無碍に出来ないタイプなのである。

 後ろを、アヅマが当たり前の様に付いて来る。





 高校生たちの所に行くと、当然の様にモメていた。面倒くさい。

 生き残り3人組と工藤さんたちが何かを言い合っている。

「おーい、どうした、どうした?」

「あ、大吉さん、志堂くんたちがまた……!」

 3人組のリーダー格が志堂くんらしい。

「お前ら、澤村くんはちゃんと葬ってやったのか?」

「え、あ、いや……」

「おいぃ……!澤村くんは、お前たちを生かす為に犠牲になったんだろうが!」


「だから!だからこそ、俺たちは澤村に報いる為にも、少しでも早く強くならないといけないんだ!」

「そうだ!俺たちがあいつの代わりに、みんなを守れるぐらいにならないと!」

 勢いだけはある少年たち。

 本気は本気なのだろう。

 良い事を言ってるつもりなのだろうが、半分は自分に酔っているセリフだ。

 しかし、その目は赤い。残りの半分は、焦りか?


「気持ちだけで先走ったって死ぬだけだぞ」

「だからって、じっとしてられないよ!」

「ふーむ。面倒くせぇなぁ。じゃあ、俺とアヅマの狩りに一回付いて来い。ただし、付いて来るだけで、手は出すなよ」

「そ、それでも……!」

「よし。約束だぞ」

 アヅマを見ると、俺が勝手に決めた事なのに気を悪くする様子もなく、黙って頷いた。


「大吉さん、良いんですか?」

 納得してないのは、工藤さんの方だ。

「ああ、押さえつけたって、いつかは勝手に飛び出すだろうし、だったらちゃんと生き残る術を教えてやってた方が良いだろ?」

「そうですけど……」

「悪いが、俺たちが取れる方法なんて、これぐらいだ。もっとちゃんとした大人なら、違う方法も思いつくのかも知れんがね」


 俺はヘラヘラしながら、工藤さんに手を振った。

 俺って、ここまでヘラヘラしてたかなぁ?

 で、そのまま森に向かう。

 どうせ、今晩の肉は取って来ないといけなかったし、志堂くんたちから目を離すのもイヤだったので。

 あー、ゴブリンの武器、返してもらってないや。まあ、いいか。今から調達出来るだろうし。


 拠点から結界を越え、森に入る。

 途端に空気の匂いが変わる。

 いつもと違う。はっきり言って、イヤな予感しかしない。

「アヅマ……なんか、変じゃないか?」

「ああ、空気が重い。セメントやる時の空気だ」

「セメントって、本気で潰し合う時だろ?ヤバいな。撤退しよう」


「悪い!お前ら、撤退……」言いながら後ろを振り向いた俺の腰が抜けそうになった。

 高校生たちの更に後ろに、アヅマに匹敵する巨漢が立っていたのだ。

 ただし、普通の人間ではない。全身を覆う黒色剛毛。顔は、どう見てもオオカミ。鋭い牙、鋭い爪。言わば、オオカミ獣人!

 そんな化け物が、ニヤニヤした笑いを浮かべながら、俺たちの後を付いて来ていたのだ。


 俺は反射的にファイヤージャベリンを叩き込んでいた。

 が、肩口に当たった炎の槍は剛毛に弾かれて、方向を変えただけだ。

 アヅマが前蹴りをかます。

 どん!という重低音の響き。しかし、オオカミ獣人の立ち姿は小揺るぎもしない。

「お前らは後ろに!」言いながら、腰を抜かした3人をポイポイ後方に投げる。

 

 しかし、拠点に通じる道を塞がれてるのが痛い。

 俺たちが逃げるのはもちろん、先に高校生たちを逃す訳にもいかない。

 それに、拠点の周りにこんな強敵が出て来る事なんて、予想もしていなかった自分を殴ってやりたい。どこかゲームに毒されて、強敵の周りにはゴブリンやオークぐらいしか出ないと、知らず知らずのうちに決めつけていたのだ。

 

「しゃっ!」

 鋭い呼気とともにオオカミ獣人が手を振ると、アヅマの巨体があっさりと吹っ飛んだ。同時に、アヅマの身体を包む光が砕け散った。

「アヅマ!!」

 叫びながら、ファイヤージャベリンの連発に挑戦。これまでは、3発が最高。今回は、5発のファイヤージャベリンがオオカミ獣人の胸に命中!!

 

 今度は弾かれなかった。ちゃんと命中した。命中したのに……。

 オオカミ獣人は二、三歩よろめいただけだった。

 胸に開いた穴が、すぐさまシュウシュウと煙を上げて塞がっていく。

「げろげろ……。高校生、何か大技持ってるか?」

「えー、手出さないでいいって……」

「状況は変わるのだよ」


「ふん!」

 アヅマがまた光を纏って復活。

 しかし、またやられるのは目に見えている。

「お、俺、光魔法が中級まで……」

「中級か」

 ジャベリンクラスじゃ、どうにも出来ないのは分かっている。火が光に変わろうと、違いはないだろう。それとも、属性が変われば、効くのか?


「光、初級のをぶつけてみろ」

「初級で良いの?」

「相性が見たい」

「わ、分かった。……ライトブリット!」

 パシンという音を立てて、光の弾丸は獣人の剛毛に弾かれた。

「うわ、ダメかー」


 この間、オオカミ獣人はアヅマと睨み合っているだけだ。

 俺たちには注意も割いていない。

「くそっ、どういう気だ。遊んでるのか」

「大吉さん……!」

「もう2人の能力は何だ!?」

「アイテムボックス」

「鑑定」


「……。で、鑑定結果は?」

「ワーウルフ、聖銀が弱点とだけ……」

「よし、ありがと!」

 俺は仕方なく、またファイヤージャベリンを起動した。

 倒せる公算もないのに、中途半端にダメージを出す様な魔法を、高校生に撃たせる訳にはいかない。ライトジャベリンは封印だ。


 さて、どうしよう?

読んでいただいて、ありがとうございます。

こんなお話でも面白いと思って下さったら、『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にしてポイントを入れてもらえたら嬉しいです。

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