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保護惑星の魔石採集者  作者: あおおに


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2/7

初宴

 恐れる様子もなく、ズンズンと森に分け入って行くアヅマ。

 やはり不思議と恐怖を感じる事もなく、その巨体を追って行く俺、虎須大吉。

 やがて何か獣臭い気がした途端、アヅマが足を止めた。

「何か、いるな」

「ああ」

 アヅマの言葉に頷く。


 もう少し慎重に進むと、木の根を掘り返すイノシシの姿が目に入ってきた。が、その身体は子牛程もある。デカいなんてものじゃない。

「まず、魔法を頭にぶち込むぞ。突っ込むのは、それからな」

「うっす」

 そう言いながら、飛び出したがっているのがバレバレなアヅマ。こいつは、本当に戦うのが好きなんだな。


 俺が狙いを付けようとするとイノシシがこちらに気付き、いきなり突進して来た。

 速いと言うより、重そうだ。細い木の枝がバキバキと折れ飛んで行く。

 若干慌てながら、俺は中級魔法のファイヤージャベリンを放った。1メートル近い炎の槍が、狙いあやまたずに巨大イノシシの頭部に突き刺さる。

 が、その突進は止まない。

「げっ!」


 とっさにアヅマが前に出る。その身体が、また薄く発光している。

 ガシッと巨体の突進を受け止める。

 ズザザッと地面を滑るアヅマ。が、1メートルも滑った所でどっしり腰を下ろし、その突進を完全に止めてしまう。

 まさに怪獣大決戦!

 更にイノシシの牙を掴んで、「ふん!」とその巨体をすっ転ばすアヅマ。


 ドーンという音を立てて横倒しになったイノシシは、すでに事切れていた。最初のファイヤージャベリンで頭を撃ち抜かれ、即死していたのだ。

 それでも突進を止めないとは、なんというアグレッシブさ。これが魔獣というものか。

「こりゃ、1人じゃヤバかったわ。ありがとな」

「いやいや。正直、俺も舐めてたわ。怖いな、こいつら」

「ああ」


 とりあえず肉の量は充分に確保出来たので、拠点に戻る事にする。

 驚いた事に、子牛サイズのイノシシは、アヅマが1人で抱え上げた。パワー系の特殊能力があるのだろう。元々の身体が身体だけに、倍数強化をしていたらエラい事になっているだろう。

 ついでに、戦闘中に薄く発光していたのはシールドの類だろうから、人間要塞と言っても過言じゃない存在だ。今後も仲良くしておこう。





 拠点に戻ると、また高校生たちが騒いでいた。

 今度は仲間がいないと騒いでいる様だ。確かに、旅客機に乗っていた全員がここにいるとしては、人数が少なすぎる。他の連中は、この惑星に来なかったのか。それとも、別の場所に振り分けられているのか。

 が、騒がれるのは鬱陶しい。

 委員長ぽい真面目そうな生徒とCAさんたちが宥めているが、イキった一団が森の中に入ろうとしている。

 そこに立ち塞がったのが、人間要塞アヅマだ。


 無言で、高校生たちの前に巨大イノシシを落とし置く。

 ズシィン!という地響きに、その場の全員が動きを止める。

「森に入るんなら、ついでに食い物を採って来てくれよ。こんなのがウヨウヨしてるからさ」

 ニヤリと笑うアヅマ。

 怯む高校生たち。

 イノシシに怯んだのか、アヅマに怯んだのか……。


 そこに駆け寄ったのは、榊原。料理人だ。

「おぉ、すごいイノシシだな。血抜きとか手伝ってくれ」

 料理人の血が騒ぐのか、テンションが上がりまくっている。

 アヅマが高校生たちを使って、血抜きをやる様だ。

「榊原、魔石が出たら、アヅマに渡してくれよ」

 俺がお願いすると、榊原が親指を立てて頷いた。ゴブリンからぶん取った短剣を渡した。


 俺がテントに戻ると、痩せた男が1人で寛いでいた。榊原がテントに招いたらしい。

「間久部です」

「虎須大吉。よろしくな」

 ちょっとひねくれた、暗めな雰囲気の男だが、頭はキレそうだ。アヅマや榊原に比べるとクセが強そうだが、味方になってくれそうな匂いがする。分からんけど。


 テントの奥に腰を下ろすと、俺は魔石の交換システムを試す事にした。

「これか……」

 左腕にハメられていた銀色の腕輪。これが銀河通販のデバイスだと、いつの間にか刷り込まれていた俺の記憶が言っている。魔石を対価に、銀河文明の様々な物品を買えるのだ。

 ポケットからゴブリンの魔石を取り出す。計12個。

 デバイスに近づけると、魔石は吸収される様に消えてしまった。


「むむ?」

 デバイスからホログラム状の画面が出て、その中のポイントとという所が120になっていた。どうやら、ゴブリンサイズだと、魔石1個で10ポイントらしい。

「120ポイントで何が買えますか?」

 気づくと、横から間久部がのぞき込んでいた。

「うーむ、ロクなのが買えないな。簡易食料や使い捨ての食器や水とか?」


「こっちのは、吸収出来ないのですか?」

 俺が持ち込んだゴブリンの槍やこん棒を手にする間久部。

「魔石だけって言ってたけどな。それ、試していいぜ」

 俺が許可すると、間久部が自分の腕輪に槍やこん棒を押し当て始める。

「ダメですね。反応する気配なし、です」

「そうか。じゃ、そこらは自分たちで使うだけだな」


 そこにアヅマが入って来た。

「おう。榊原から魔石はもらったか?」

「ああ、これか」

 アヅマの手には、ゴブリンのビー玉サイズより一回り大きな茶色い魔石があった。

「それ、自分の腕輪に吸収させて、何ポイントになるか見てくれないか?」

「うん?こうか?……あー、100ポイントだそうだ」

「なるほど。ゴブリンで10ポイント、イノシシで100ポイントか。渋いな」


「渋いのか?」

「渋い。それぐらいじゃ、ロクな物が買えん」

「まあ、しばらくはイノシシ食ってれば……」

「飽きるだろ」

「湖もあるし、魚も捕れるんじゃないですかね」

「なるほど。釣り竿か網を買うか?」


「まあ、俺たちだけじゃないしな。自然と役割が分かれてくれるんじゃないか」

 アヅマは楽観的だ。

 そこに高校生の1人が、食事の準備が出来たと迎えに来た。

 テントを出ると、石組みのカマドがいくつか作られ、盛大にイノシシ肉が焼かれているのが目に入る。

「これは、紙皿や割り箸がいるな」

「水もな。塩ぐらいもあれば……」


 アヅマと合計220ポイントの割り振りを考え、結局、紙皿と紙コップ、割り箸、水を買った。塩までは買えなかった。とにかく水の量が多かった。

 それらを榊原に提供しようとすると、CA軍団が横からかっさらって、皆に配り始めた。

 最初の騒ぎの時に俺を睨んでいた美人CAさんは、なぜか得意気な笑みをこちらに向けている。意味不明だ。

 肉は榊原かゴブリン短剣で切り分け、皆に配った。ちなみに短剣は、鍛冶スキルを持つ者が綺麗にしたらしい。


「これは、美味い!」

 イノシシ肉はロクに下処理もしてないというのに、ひどく美味かった。

 何と言うか、身体が喜んでいるのが分かる味だ。塩さえ使ってないというのに、信じられない。

 俺とアヅマは、肉を頬張りながら「明日も狩るぞ」とアイコンタクトをかわす。

 この味の前には、高校生たちも静かにならざるを得ない様だった。少なくとも、今晩一晩ぐらいは大人しくしているだろう。


 



 俺たちがイノシシ肉の余韻に浸っていると、CAさんが2人やって来た。1人は、あの怖い美人さんだ。

「貴方たちとも情報交換してた方が良いと思って」

 もう1人のCAさん、清水さんが話し出す。俺より少し若いぐらいだが、姿勢の良い理知的な人である。

「この拠点にいるのは、37人。うち、高校生が22人。CA5人。他の人たちは不明です。それと、テント以外に持ち込めた物品は、各人が身に着けた物、実質的には服だけですね」

「親切なんだか不親切なんだか」

「不親切でしょう」

 美人さんが怒っている。


「これから、どうしたら良いと思います?」

「しばらくは、ここで力を付けるべきかな?」

 俺が言うと、美人さんが「街を目指そうとは?」と突っ込んで来た。

「いずれ街は目指すべきだと思うけど、移動の為にもここで装備等をそろえた方が良いと思う。森は深そうだったし、けっこう凶暴な手合いがいたしね」

 言ってアヅマを向くと、アヅマも大きく頷いてくれた。


「そうなの?アヅマさんがいれば大丈夫と思うのは、甘い?」

「人数が少なければともかく、37人もいちゃあ、アヅマ1人じゃどうにも出来ないだろ。まあ、他の連中も戦える能力はある筈だから、慣れる為にもしばらくはここでやるのが賢いと思うぞ」

「なるほどね」

 途端、オオカミっぽい鳴き声が遠くから聞こえた。遠吠えってヤツだ。 

 会話が止まる。


 ファンタジー惑星、最初の夜が始まろうとしていた。


 


 

読んでいただいて、ありがとうございます。

こんなお話でも面白いと思って下さったら、『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にしてポイントを入れてもらえたら嬉しいです。

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