おデート-後編の後編-
後編の後編です。
ようやく、ですね。
「シャル、待たせたな。」
「コウさん、あの子は?」
「ああ、ギルドに母親の捜索依頼を出しておいた。そこまで大きな街でもないし、すぐに見つかると思う。」
「そっか、良かった。お疲れさま。コウさん。」
シャルが俺を労ってくれる。
「なぁシャル、さっきあの子に言ったことって。」
「うん、やっぱり気付いてたよね。そうだよ、コウさんが私に言ってくれた言葉だよ。」
「だよな。最初はどうするのかと思ったけど。」
シャルと初めて会った時、俺がシャルにかけた言葉だ。
「ねえコウさん、コウさんはなんで戻ってきたの?」
「えっ?」
唐突な質問に虚をつかれて聞き返してしまう。
「イガラシさんに色々話聞いたよ。お父さんもお母さんも優しかったみたいだし、イガラシさんだっていい人だし、あっちにお友達だっていたんでしょ? それに争いがないわけじゃないけど、コウさんの生まれたところは平和で不自由もなかったって聞いたよ? それなのに、なんで?」
「約束、したからな。」
「約束……だから?」
シャルが少し表情を陰らせる。俺の馬鹿! そうじゃないだろう!?
「ああ、だけどそれだけじゃない。約束は約束だ。絶対に守る。けれど俺が戻ってきた理由はシャル、お前との約束だったからだ。」
「私との……?」
こんな言い方でいいんだろうか。合ってるようで違ってるような。一体どう言えば伝えられる?
「……私ね? コウさんがいなくなってから、コウさんと出会ってからのことをずっと考えてたんだ。」
「俺の?」
「うん、思えば私を助けてくれたのもコウさんだったし、ただ助けるだけじゃなくて、諦めずに自分のやれることをやれって教えてくれたのもコウさんだった。」
「我ながら偉そうだったかなと思ってるよ。」
あの時は俺も若かったしな。いや、年齢的なものは今とそう変わりないか。
「それでもね。私にとってはそれがとても大事なことだったんだ。それにコウさんは本当に戻ってきてくれた。」
なんだろう、何が言いたいんだろうか。
「最初はコウさんだって気付かなかったよ。全然外見が変わってるんだもん。」
「まあ……そりゃ気付けって方が無理だよな。それにシャルだって人のこと言えないぞ?」
「そう……かな。」
色々大きくなってたしな……
「それで王都が襲われてるって聞いた時にね。ミリィさんに会って話を聞いたんだ。まさかミリィさんが王女様だなんて思いもしなかったからびっくりしたけどね。」
「ああ、それは俺も驚いた。」
今ではあの親にしてこの子有り、といった感じだが。
「でも王都に辿り着いた時にはもうコウさんはいなくて、また会えないんだって思った。」
「あの時はまさか俺も別の場所に飛ばされるなんて思ってなかったからな……急すぎて伝言を頼むことすら出来なかったんだ。」
ビゼンのせいだな。あとでいたずらしてやろう。
「それでね、またフラッグがやってきて、イガラシさんが怪我をして、治そうと思って駆け寄ったらフラッグが迫ってきて……」
シャルが自分の肩を抱く。やはり恐ろしかったんだろう。
「あ、もうダメだ。と思ったとき、色んなことを考えたよ。でもその時思い出したんだ。」
「何を?」
「諦めちゃいけない。まだ私はやれることをやってない、って。それで初めて助けてって言ったんだ。」
「で、俺が間に合ったのか。本当に危なかったんだな。」
「うん、その時に思ったんだ。コウさんは正しかったんだって。だから今日あの子にも同じことを教えようと思ったの。」
「そうだったのか。なんというかアレだな。俺がいない間にシャルも成長したんだな。」
「子供扱いはよしてよ。もうコウさんと年齢だって変わらないよ?」
「まあ……そうだな。」
ただ結局この話の流れはどこに行くんだろう。思い出話に花を咲かせる。というような雰囲気でもないし。
「それで私思ったんだ。私が危ない時には必ずコウさんが助けてくれた。コウさんが私を守ってくれてたんだって。」
「それは俺がやりたいようにやってるだけだからな。」
「でもコウさんの周りには色んな人がいる。それにコウさんを慕ってる子達だっている。私だけがコウさんに守られてるのは不公平だと思うんだ。だから私ね。」
おいおいちょっと待て、この話の流れはマズいだろ。
「ストップ、ストオオオオオオップ!!」
「え? なにどうしたの?」
「いやいや、どうしたのじゃないだろ。この話の流れだと、まるで守られてばっかりなのは申し訳ないから自分は去る。みたいな流れじゃないか。」
「う……」
図星かい。……にしてもそこまでシャルを追い詰めてたか。くそっ、なんで今まで気付いてやれなかったんだ! いや、今そんなこと後悔したって仕方ないだろ!?
--男ならハッキリしないと、か。
「なあシャル。」
「な、なに?」
「俺が戻ってきたのは約束したからだって言ったよな?」
「う、うん。言った。」
ならハッキリ言ってやるよ。
「つまりそれは俺がお前とデートしたかったから戻ってきたってことだ。それにな、お前は俺に守られてばかりだっていうけどそうじゃない。俺だってお前に守られながら、ここまで来たんだ。」
「どういうこと……?」
「お前が言う通り、向こうの世界は平和だったさ。向こうにいれば魔物に襲われて死ぬような危険だってない。ちゃんとルールさえ守ってれば寿命まで生きて死ねるんだ。」
「だったらなんで……それこそ約束なんて忘れても……」
「だから!」
「っ!?」
シャルの手を取る。逃げることは許さない。最後まで聞いてもらうからな。
「俺はお前に会いたくて戻ってきたんだ! シャル、俺はお前がいるから! 今度こそ強くなってお前を守るために戻ってきたんだ!!」
「コウさん……それって……」
もうここまで来たら勢いだ。後のことなんぞ知らん。
「惚れた女を守るために! ただの約束なんかじゃない。俺が守りたい物を守るために戻ってきた!! ただ、それだけなんだ。」
「コウ……さん。本当に……?」
「ああ! 今さら自分の気持ちを誤魔化したりなんてしない。シャル。俺はお前が好きだ。だからお前に会うために戻ってきた。だから俺は諦めなかった!! だから!!」
取った手を自分の方に強く引き寄せる。シャルからの抵抗はなくて。
「俺の側にいてくれ。二度と離れるなんて言うな。言わないでくれ。」
「っ……」
そのままシャルを抱き締める。二度と離さないように、強く。
「俺の気持ちは伝えた。あとはシャル、お前次第だ。」
「コウさん、ずるいよ……そんなこと言ったってもう離すつもりないじゃない……」
「ああ、ない。あるわけがない。」
お互い見つめ合う。そのまま俺は答えを待つ。
「私だって、私だってコウさんが好き!! もう二度とどこにも行かないで欲しい!!」
「どこにも行かない。例えどんなに離ればなれになったとしても、必ず俺はシャルの元へ帰ってくるよ。」
俺とシャルの顔が近付く。
「だから、約束だ。俺達はもう二度と離れない。俺の居場所はシャル、お前だ。」
「コウさん……うん、うんっ!!」
そしてそのままお互いの唇を触れ合わせる。それが制約の証だというように。
ほんの数秒が永遠とも思えるほどの長い時間に感じられ、どちらからともなく唇を離す。
「コウさん、信じて、いいんだよね?」
「ああ、信じてくれ。俺はもうどこにも行かない。」
例え神が相手だろうと、シャルと離れることはない。もしもう一度死んでしまったとしても、どんな手を使ってでもシャルの元に戻ると誓う。
「え、えへへ。なんだか安心したら急に力が抜けちゃった……あれ? おかしいな。嬉しいのになんで……」
「シャル……」
「なんで私泣いてるんだろ。おかしいよね?」
言葉は返さず、もう一度シャルに口付ける。
「さあ、あの子を送ったせいで結構遅くなったしな。そろそろみんなも心配するだろうし戻るとするか。」
「う、うん。あの……コウさん。」
「どうした?」
なんとなく歯切れが悪い。まだ何か心配事でもあるんだろうか。
「うん、あのね。えっと、出来れば今日はずっと一緒にいてもいい?」
「え? あ、ああ、そうだな。いや、俺も一緒にいたい。」
つまりそういうことだよな……自意識過剰じゃないよな!?
「じゃ、じゃあ私、一度着替え取りに戻るね。」
「お、おお。じゃあちょっと汗もかいたし、風呂にでも入りに行くか。」
なにこれなんかぎこちない。でも何故かとても心地よくて。
「よし、じゃあ戻ろう。ほら。」
手を差し出す。今度は成り行きなんかじゃなく、お互いの意思を持って。
「うん、戻ろう!」
シャルが俺の手を握り返す。
このかけがえの日常を、大切な人を守るために、必ず俺は強くなる。
そう誓いながら、繋いだ手の感触を確かめるように、ゆっくり、ゆっくりと俺達は歩き出した。
--後の展開はお察しの通りってやつだ。明日ちゃんと起きれるかな……
感想、評価お待ちしております!(困ったときのテンプレ)
じゃなくて、次回より本編に戻ります。




