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おデート-後編の中編-

後編の中編です。

「な、なんだお前は。いいところだったのに邪魔しやがって!!」

「いいところ? あんな幼い子が魔物に襲われてるところがか? ふざけるのも大概にしろよ?」

「ふざける? ふざけてるのは貴様の方だろうが!! せっかくちょうどいい少女が手に入ったっていうのに!!」


 やはり人拐いか、クソが。


「おい!! なんだお前は!! お前も売られたいのか?」


 別の方向から違う男の怒声が聞こえた。俺に声をかけてるんじゃないってことは……


「あれ? シャル?」


 シャルが一人の男の前に進み出ていた。


「ねえおじさん。おじさん達はあの子を拐ったの?」

「ハッ! テメェみたいな奴に答える必要は……グホァッ!!」


 シャルの右拳が男のわき腹に突き刺さる。


 ……流石いいリバーブローだ。俺はいつもあんなのを喰らっていたのか。


「シャ、シャルさん?」

「ねえおじさん達。ボク(・・)は怒ってるんだよ? こんな年端もいかない女の子を拐って、魔物に襲わせて何が楽しいの?」

「う、うるせえ!! テメェらには関係ねえだろうが!!」


 また別の男が怒鳴る。が、シャルはそれを無視して少女に話しかけた。


「ねえキミ。キミはどうして欲しい?」

「え……? わた……し?」


 少女はいきなり話を振られて戸惑っているようだ。


「おいシャ……」

「ごめん、コウさんは少し黙ってて。」


 うん怖い。黙ってみてよう。


「そう、キミはどうしたいのかな? お母さんのところに帰りたい? それともこのまま何もせずに、また魔物に襲われるような目にあいたい?」

「う……それはイヤ……」


 これは……そうか。シャル、そういうことなんだな。


「ならどうする? このままじゃ何も変わらない。諦めてちゃ何も変わらないよ。」

「でも……わたしなんかじゃどうすることも……」

「出来るよ。」

「えっ?」


 黙ってシャルと少女のやり取りを見つめる。


「だってまだキミは何もしてない。自分じゃどうにも出来ないから諦めちゃってる。それじゃダメだよ。それじゃダメなんだ。」

「じゃあ! わたしはどうすれば!?」

「簡単だよ。」


 そうだな。簡単なことだ。


 俺はベレッタに手をかけ、その時を待つ。


「簡単なんだよ。たった一度だけでいいから言えばいい。助けて(・・・)って、ね?」

「おねえちゃ……た……」

「た?」

「助けて!! あの人達にさらわれたの!! お母さんのおつかいをしてる時にいきなり……う……ひっく。」


 少女が叫び、そのまま泣き始める。辛かったな。でももう大丈夫だ。


「分かった。じゃあお兄ちゃんとお姉ちゃんが助けてあげるからね。」

「シャル!」

「コウさん! お願い!!」

「任された!!」


 シャルのリバーブローを受けて悶絶している男を除き、残りは男が4人。助けを呼ばれても面倒だし、一気に片付けるとするか!!


 べレッタは既に左手に用意してある。なに、殺しはしない。ちょっとボコボコにするだけだ。


 ブースターを発動し、一人、また一人とぶん殴って昏倒させていく。そして最後の一人。


「どっせええええええええええい!!」


 お馴染みのドロップキックで吹っ飛ばす。よし、任務完了!!


「シャル、終わったよ。」

「ありがとうコウさん。」


 そしてシャルは微笑み、少女の方へ向き直る。


「ほら、もう大丈夫だよ。よく頑張ったね。」

「おねえちゃっ……おにいちゃっ……あいがとう!!」


 もはや涙と鼻水でグジュグジュになって何を言っているかもよく分からないが、お姉ちゃん、お兄ちゃんありがとう。ってところだろう。


「さーて、それじゃ頑張った子にはご褒美だ。お兄ちゃんがお母さんのところまで送ってやるよ。どこから来たか分かるか?」

「えっと……あっち。」


 少女は王都の方向とは反対側を指差す。うーん、特に馬車とかも使ってなかったし、カナリアかな?


「多分カナリアだね。コウさん、お願いしていい?」

「ああ、シャルはどうするんだ?」

「私は門番さんにこのことを話してくるよ。」

「そうか、じゃあ頼む。送り届けたらすぐ戻ってくるから。」

「うん、待ってるよ。」


 なるべく早く帰ってこよう。そう思いながら、少女を背中に背負う。うん、柔らかいけどやっぱりシャルとは比べ物にならないな。


「ぐふっ……」

「コウさん、今なにか変なこと考えてなかった?」

「気のせいです……あと痛いです……」


 俺の考えが読めるのか、質問する前にリバーにブローがヒットした。マジ痛い。


 しっかりお仕置きを頂戴した俺はスラスターを発動し、出来るだけゆっくりと上昇する。


「わぁ……おにいちゃん飛べるんだね!!」

「おっと、あんまりはしゃぐなよ?」


 すっかり機嫌の治った少女が背中ではしゃぐ。頼むから落ちないようにしてくれよ……?


「ねえおにいちゃん、おにいちゃんとおねえちゃんはこいびとどうしなの?」

「なぬっ!?」


 虚をつかれて一瞬スラスターを中断してしまう。


「きゃあああっ!!」

「うおっと!!」


 再度スラスターを発動させ、慌てて体制を戻す。


「あー、びっくりした!!」

「びっくりしたのはこっちだよ。いきなり何言い出すのかと思えば。」

「えー? でもさっきも仲良さそうだったし、こいびとさんなんでしょ?」


 最近のがきんちょはマセてやがる。こういうところはこっちも地球も同じだな。


「うーん、なんていうか、恋人、とはまだ言えない、か?」


 我ながら子供相手に歯切れの悪い答えを返したもんだと自嘲してしまう。


「えーなにそれ変なの。おとこだったらもっとはっきりしなきゃ!!」


 うっ、子供に言われてしまった。


「そうか、でもそうだな。分かった。戻ったらハッキリしてくるよ。ありがとうな。」

「どういたしましてー!」


 そうだ、俺がハッキリしないでどうする。何もしなければ何も変わらない。さっきシャルがこの子に言ったばかりじゃないか。それに……


 そうこう考えているうちにカナリアについた。やっぱり空飛んでくと楽でいいな。


 少女の身元についてはカナリアの冒険者ギルドで母親の捜索依頼を出しておいた。恐らく母親もこの子を探しているだろうし、すぐに見つかることだろう。


「おにいちゃん! ほんとうにありがとう!! おねえちゃんにもよろしくね。」

「ああ、今度一緒に会いに来るよ。」

「ほんとう!? わたし待ってるね!! ぜったいだよ!!」

「ああ、約束だ。お兄ちゃんは約束だけは守るんだ。」

「うん!! やくそく!!」


 少女と約束を交わし、スラスターを発動してまた上昇する。そしてそこからブースターを発動し続け、先程の場所へ戻った。

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