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-魔導師去りし王都にて-Side 五十嵐

みんなー、イガさんの時間だよー

「ヒースさん、無事だったか。」


 オレは見知った顔を見つけて若干安堵する。ここまでの道中、生きている人の姿がなかったからだ。


「ああ、イガラシ。君も来てくれたのか。」

「ってことは坊主とは既に会ったんだな? アイツはどこに行ったか知らないか?」


 今もどこかで戦っているとすればあの坊主のことだ。派手な魔法でもぶっ放して目立ちそうなもんだが。


「私達を助けてくれた後、どこかに行ってしまった。だが先程までは近くで何かと戦っていたと思う。上空で物凄い魔法を何度も使っていたようだからね。」

何度も(・・・)?」

「ああ、あれだけの規模の魔法なら並の魔物はひとたまりもないだろう。だがそれが連発されていた。ということは、だ。」

「それだけ強敵だってことか。クソッ!」


 そして今の王都上空は静かなもんだ。それはつまり、坊主が勝ったか、あるいは負けたかで決着がついたってこったろう。しかしその後の動きがないのも気になるな。


「もしかしたらあれだけの魔法を連続で使用したんだ。魔力が練れずにどこかで休憩しているのかもしれない。それに彼が負けたとしたらその相手が侵攻を再開しないのも腑に落ちないしね。」

「確かにそうだ。となると坊主は勝ったには勝ったが、満身創痍か、あるいは別の理由があるのかもしれないな。」

「私もそう思う。イガラシ君。悪いが付近を探してみてくれないか。万が一満身創痍だと言うのが当たっていた場合は我々が保護すべきだと思う。もはやの彼の存在は大きすぎる。友人としても、ギルド職員としても、彼を失うわけにはいかない。」

「承知した。ここは大丈夫そうだしな。ちょっくら探してくるぜ。」


 ギルド周辺には魔物は見当たらない。というかなんだこの地面の悲惨な有り様は。これも坊主がやったってことか。


「しかし人は見かけによらねえってことか。剣術では二刀流なんてちまちましたことする割に、魔法に関しちゃオレよりタチわりぃじゃねえか。」


 辺りを探すが坊主の姿は見当たらない。遠くにいる可能性もあるが、この一帯は坊主が吹き飛ばしたんだろう。それならここにいた方が多祥なりとも安全なはずだ。わざわざ遠くに行って魔物が残っているかもしれない場所に行く意味はない。


「こりゃやっぱなんかあったかな。ったく、またテメェの仲間を悲しませるつもりかあのバカは。」


 ここに来るまでに銀の字、いや、アランにこれまでのあらましは聞いた。自分を犠牲にして仲間を助けたことは評価できる。だがいくら助けられたとは言え、残された人間は、そして死に目に会えなかった人間がどれだけ悲しむことか。


「人間は普通死んだら終わりだ。」


 そう、自分の親でさえも自分の知らないところで死んでしまった。その後知った自分が抱いていた両親への誤解を謝罪することも出来ず、育てて貰った恩も返せず、礼も言えない。一生後悔し続けるしかないのだから。


「っと、考えてる場合じゃねえな。オイそこの、とっとと出て来やがれ。」


 前方の建物の影に微かに気配を感じて呼び掛ける。だが返事はない。


「気のせいだと思わせて後ろから襲うつもりか? はっ、随分セコい手を使うじゃねえか。」

「ヤレヤレ、せっかく見逃して上げようと思ったのに、セコいとはそれこそ随分な言い草デスね。」


 やっぱりいやがったか。獣くせえんだよお前らは。


「生憎だが見逃して欲しいなんて頼んだ覚えはねえ。」

「ソレもそうデスね。確かに見逃す理由もありませんデシた。ならワタシはアナタをコロス。ソレでイイデスか?」


 甲高い声でキイキイ喚くんじゃねえようっせえな。馬みたいな顔しやがって。そのくせ二足歩行かよ。


「ほざいてんじゃねえよ馬面。それにテメェ、今殺すっつったな?」

「エエ、言いまシタとも。そろそろワタシ達の仕事も終わりデスし、最後にアナタをコロしてその首を土産にシテ帰るとシマショウ。」

「土産にゃもっと風情のあるもんを選べ。それにオレはまだ死ぬわけにはいかねえ。だから……」

「ダカラ?」

「殺すぜ。」


 刀を抜き放ち、馬面に斬りかかる。逸るな、まずは相手の動きに呼吸を合わせろ。


 いつものように戦いの高揚感を感じながら、頭の中は冷やしておく。頭は冷静に、身体は熱く。最低限の動きで最大限の一撃を。


「フム、コロスなどと言うワリにはかかってこないのデスか?」


 刀を構えながらゆっくり、ゆっくりと馬面に向かって歩いていく。相手の動きを見逃すな。


「まっタク、これだからニンゲ」


 --今!!


 全く、で言葉を切った直後を狙って接近する。足は地面から放すな。常に身体は真っ直ぐ。


「ンは!? ナニッ!?」


 オレの接近に気付かなかった馬面が驚きの表情を浮かべる。おせえよ。


「オラァッ!!」


 肩口から袈裟斬りに斬りかかる。


 --ブオンッ!


 だが肉を断った感触はなく、宙を斬った虚しさが手に残る。野郎、かわしやがったか。


「アブナイアブナイ、いつ近付かれたのか分かりまセンデシタよ。ニンゲンというのは不思議な動きをスルものデスね。」

「オレはテメェがいつ避けたのか分からなかったがな。魔物ってのは不可解な動きをしやがる。」


 今のは入ったと思った。が、かわされたからといってどうということはない。もう一度、今度こそ斬り伏せる。


「テッチャンもそうでデスが、己の力に振り回サレル生き物は皆気性が荒くて困りマスね。ワタシのようにもっとスマートに動かなくてハ。」

「ハッ! テメェのどこがスマートだってんだ。単なる馬の化けもんじゃねえか。」

「ナラ見せてあげまショウ。魔王サマの部下の中デモ最速を誇ル、このハツサマの実力ヲ!」


 テッチャンやらハツやらうるせえよ。このホルモン野郎が。


「ハアッ!」


 ホルモン野郎がオレに向かって駆け出す。ヤツの獲物は槍か。--はええな。


 奇しくもヒースさんとの一戦を思い出す。あの人の槍さばきも相当だったが、コイツは技術よりも身体能力としての速度がどんでもない。目で追える程度ではあるが、身体が反応出来なければ意味がない。


 一撃目、顔を正面から狙ってきた突きを首を捻って紙一重でかわす。


 二撃目、心臓を狙ってきた突きを横に動くことでかわす。


 三撃目、足を狙ってきたところを刀で払う。


「なるほど、ツラに似合って動きだきゃ相当だな。」

「よくかわしまシタね。」


 動きははええが槍自体の軌道は単調だ。それに殺気を纏いすぎてどこを狙ってるか教えてくれてるようなもんだ。


「所詮は獣。身体は熱く、頭は冷やせ。武の理を理解できねえ輩にオレは殺せやしねえ。」

「ナラ試してみまショウ。」


 再びハツが槍を構えて迫ってくる。だから言ってんだろ。殺気を纏いすぎだってよ。


「肩。」


 身体を横に向けてかわす。


「心臓。」


 刀で払う。


「眉間。」


 僅かに屈む。


「喉。」


 身体を少し横に移動させ、かわしてそのまま前に出る。


「ナッ! ナゼワタシの狙いが分かるんデス!!」

「言ってもわかんねえよ。」


 確かに動きははええ、突きの威力も相当だろう。だがそれだけだ。


「テメェの一撃には意志がねえ、魂がねえ。ただ突いて刺し殺す。それだけが透けて見えてんだよ。」

「ナニヲ……」

「そんな槍には当たってやる義理もねえし。怖くもねえ。だから冥土の土産に見せてやるよ。」


 既にハツの懐に入り込んだオレは刀を腰だめに。ちょうど居合いの抜刀のような構えになる。


「魂の篭った一撃ってヤツをな。」


 下半身を機転に、螺旋をイメージして身体を捻る。とは言っても表面からは捻っているようには見えないだろう。


 そして引き絞った弦を一気に解放する。食らえ!!


「村雲流剣技。暴風。」


 オレの一番得意な技だ。何故かこの技名だけは師範の教えてくれた技の中でも異色の派手な技だ。なんでも古い友人が得意としていた技を師範が剣技として編み出したとか言ってたな。


 --ズパアッ!!


 肉の爆ぜる音とともに、刀を振り切る。ほぼゼロ距離での攻撃だが、その分全身の力を刀に乗せることが出来るので、その威力は師範のお墨付きだ。


「コンナ、コン……ナ。」

「わりぃが看取ってやる義理もねえんでな。そのまま果てろ、獣。」


 刀を鞘に納める。もはや振り返って確認するまでもないだろう。


「さて、坊主を探さないとな。」


 オレはまた坊主を探すべく駆け出した。

あ、あれ? ライトニングは?

なんていうかこの方がイガさんっぽいですよね(汗)

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