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魔導師去りし王都にて-半年後- Side Charlotte

お待たせしました。

書きたくて仕方のなかった、けれどもまだ書きたくなかったような……

「結局、また会えないのかな……」


 恐らくは彼だろうことは感じていた。だけど人が生き返るなんてことはない。それに外見だって違う。それなのにどうして彼だと信じられるというのか。


「大丈夫よ、彼はまた戻ってくるわ。信じてあげて頂戴。」


 ミリィさんがそう言って励ましてくれるが、その表情には少し曇っている。無理もないだろう。だってもうあの王都襲来から半年の時が経とうとしているんだから。


 ましてや王都に至っては半壊状態。現在も王以下の貴族、ギルド関係者や民衆に至るまでの総出で復興に当たっているが、決して被害は小さくはない。


 建物の損壊に比べ、死者の数はそれほどでもなかったようだが、それでも数千人の死者が出たと聞いている。王都だからこそこの被害で済んで良かったというべきなのか。はたまた王都にいた不幸を呪うべきなのか。


 家族を失った者、友人を失った者、その胸に去来する思いは如何なるものか。


「それにしてもアイツ、一体どこにいったんだろうな。俺も魔族とは戦ったが、そう簡単にアイツが遅れをとる相手だとも思えなかった。確かにそこらの魔物よりは遥かに強かったが、せめて逃げられない相手とはどうしても思えないんだ。」


 アランさんも彼が生きていることを信じているようだ。確かに私も見たが以前の彼とは違った。強力な魔法を連発し、空だって飛んでしまう。いくらなんでも規格外の存在となっていたんだから。


「坊主のことだ。今頃女のケツでも追っかけてんじゃねえか?」


 彼のことを坊主と呼ぶのはイガラシさん。この人も相当な実力者であることは知っている。なにせあのキングボアの首を一刀両断にするような人だ。


「コウさんが死ぬなんて考えられない! 私も探しに行く!!」

「アイラ、落ち着きなさい。私も、それにギルドも彼のことは探しているんです。貴女が一人どこかへ行ってしまったら、それこそ今度は貴女を探さなくてはいけなくなります。」

「うー……」


 アイラさんとアイサさんも彼のことが心配なようだ。特にアイラさんは毎日飛び出して行きそうになり、アイサさんにたしなめられている。ひょっとしてアイラさんは彼のことを……?


「それに情報を集めるのなら私の方が向いています。もし捜索に加われるのであれば私だってそうしています。」


 いや、それはアイサさんもか。日夜彼に関する目撃情報がないかを聞き回っていると聞いた。


「私も彼にはこの命を助けてもらっているからね。今や王都を離れられる立場ではないが、おかげで彼の捜索に職員やツテのある冒険者に頼むことも出来たんだ。彼には礼を言わないといけないね。」


 元冒険者の試験官だったというヒースさん。先日の王都襲来の件で元ギルド長が逃げ出したらしく、その後任となったらしい。


 元々人望もあり、且つ前線に立って指示を出し、自ら多くの魔物を相手どったその実力と姿勢を買われてたんだとか。


「ワシも心配じゃ。せっかく酒飲み友達が出来たと思ったのにのう。」

「いつも夜にこそこそ城を抜け出してたのはそういうわけですか……陛下、少しは立場を弁えてくださらぬか。」

「陛下ではない。今は友人を心配するただのオルデンさんじゃ。」

「だから姫様も……血は争えんということか。」


 この人達は……信じられないことだけど王様と騎士団長。どちらもそうそうお目にかかれる存在ではないはず。一体どうやってこんな偉い人達と仲良くなったんだろう?


「ふむ、我は僅かにコウの気配を感じるがのう? とは言っても遠く離れておるのか、上手く読み取れぬが。」

「僕もお兄さんは生きてると思うな。なんとなくだけど。」

「あのお兄さんがやられるわけないよ! だってすごい魔法師なんだから!!」

「ルルはともかく、ロロが言うなら間違いなさそうだな。ロッテ、そんなに心配しなくてもいいんじゃないか? 私も彼はひょっこり帰ってきそうな気がするよ。」


 ロロの気配察知に関しては確かに信憑性がある。ルルが言うように簡単にやられるようなこともないだろう。ジャックスもそう言ったが心配そうではある。


 それに……会って驚いたが、何故魔王がここにいるんだろう。本人にも話を聞いたところ、既に魔王ではないとのことだが。


 いずれにしても皆が皆、彼の生存を信じていることには違いない。私の中ではいつも飄々としていて、頼りない存在だったのに、何が彼をここまで変えたんだろうか。


 ……いや、頼りなかったのはそう見せていたから、だろうか。昔から何かあった時には常に彼が中心にいた気がする。それこそ良くも悪くも、だったけど。


「それにしてもオルデンさんよ。オレが言えた義理じゃねえかもしれねえが。王都ってもっと安全なもんじゃねえのか? それにしちゃ随分魔物が襲ってきてるじゃねえか。もしかしてなんか心当たりでもあるんじゃねえのか?」

「イガラシ! いくらなんでも言葉が過ぎるぞ!!」

「良い、ダンカン。イガラシよ、確かにお主の言う通り、元々王都はこの大陸でも魔物に教われることはほとんどない。平和な街じゃった。じゃが三年前。ミリシアが戻ってきた頃からかの。徐々に魔物が襲ってくるようになり、貴様も知っての通りベヒモスという魔物までぶつけてきよった。そして半年前の魔族侵攻じゃ。ワシもここまでの魔族どもの力の入れようを見るに、これは何かあるのだろうと思い、心当たりを探ってみた。」

「で、その心当たりってのに何か引っ掛かったってのか?」

「うむ、ダンカンよ。アレを持ってくるのじゃ。」

「しかし陛下……」

「よい、ちょうどいい機会じゃ。ミリシアもおることじゃし、知っておいて損はなかろう。」

「はっ、では持って参ります。」


 そう言って団長が席を外す。アレとはなんだろうか?


「お父様、アレとは?」

「うむ、我が王家に伝わる杖じゃ。先代勇者の仲間が使っていたと言われておる聖杖じゃよ。」

「聖杖……もしや……」

「ヴィエラ?」


 何故か魔王が反応を返していた。何か知ってるんだろうか。


「陛下、お待たせ致しました。」

「ご苦労。皆の者見るがいい。これが王家に伝わる聖杖、ハープじゃ。教会に伝わっておった聖剣、テンペストと合わせ、勇者の遺物が二つこの地に残されていたからこそ、今の王都に発展したと言っても過言ではないかもしれぬ。」

「ハープ……やはり姉様の……」

「ヴィエラ? さっきから貴女、この杖のことを知っているの?」

「ああ、その杖は……」

「愛するお姉様の杖だよねえ。ヴィエラ。それにボクの探し求めていた楔の一つでもある。」

「貴様は……」


 この声は聞いたことがある。それも一度だけ。たった一度だけ。だけど絶対に忘れられない。忘れてたまるものか。


「貴様は、フラッグか!!」


 そうだ、フラッグ。彼を殺した張本人。墜ちた神。


「おや、君達もボクのことを知ってるのかい? でも残念ながらボクは君達のことを覚えてないし、これから殺すから覚えるつもりもないよ。ゴメンね。」

「ふざけるな!! 貴様に折られた聖剣の恨み、俺はまだ忘れてはいない!!」

「聖剣? ああ、テンペストか。そういえばコウクンが来たときにテンペストを折ったね。あの時にテンペストを持っていたのがキミか。おかげで助かったよ。」

「貴様を倒すために今まで修行してきたんだ。覚悟してもらうぞ!」

「覚悟ねえ。キミにそれほどの力があるのかい? それにコウクンはいないのかい? 半年前に会ったばかりだけど。」

「おい、道化野郎。テメェ坊主のことを知ってるのか?」

「知ってるも何もキミ達も知ってるだろう? 半年前王都を魔族に襲わせたのはボクだし、その時にコウクンとも戦ったばかりだしね。」

「コウと戦った……ならコウはまた貴方に……」


 嫌だ。その先は聞きたくない。


「おや? 彼から聞いていないのかい? というよりも彼と会ってないようだね。半年前にボクとコウクンはここで戦った。残念ながら引き分け……いや、ボクが負けてたのかな? で、ボクは逃げ帰ってこうしてまた来たってわけ。そのハープを貰いにね。」


 逃げ帰った? なら彼は死んではいない。生きているということか。


「ならアイツは生きてるんだな。理由は分からないが今はここにはいない。だがお前に会わせる筋合いもないし、その杖を渡すつもりもない。お前はここで俺達が倒す。」

「なぁんだ。彼はいないんだね。ちょっとだけ安心したよ。彼との戦いは楽しいけど、正直ボクもあんな化け物とは何度も戦いたいとは思わないからね。」


 墜ちたとは言え神をして、化け物と言わせる彼は一体どんな経緯を経て戻ってきたんだろうか。


「おい道化野郎。坊主のことは気になるが、テメェさっき言ったな。殺すと。」

「言ったよ? だって事実だからね。それがどうかしたのかい?」

「なら遠慮はいらねえ。テメェが俺達を殺すって言うなら……殺すぜ。」


 その言葉を皮切りに、アランさんとイガラシさんがフラッグに斬りかかる。二人ともすごいスピードだ。


「お? 速いね。人間ってのはこうも速く動けるものなんだね。」


 だがその攻撃はかわされ、返す刃も素手で受け止められる。あの二人でもダメなのか。


「だけどボクを傷つけるには至らないかなー。普通の魔物だったら簡単に真っ二つだろうけどね。」


 そのまま蹴りを入れられて二人が吹っ飛ぶ。いけない! 早く回復しないと!!


 だがその心配をよそに、二人とも無事着地する。良かった。大した傷は負ってないみたいだ。


「くっ! ライトニング!!」

「やるじゃねえか。村雲流剣技、乱雲(みだれぐも)


 先程よりも速い動きでフラッグに肉薄する二人、流石にスピードについていけないのか。フラッグに攻撃が当たり始める。


「おや、やるじゃないか。特にキミのその攻撃にはムラクモの影が見えるね。本当、何百年も経つというのに忌まわしい男だよ。それにキミからはストームの匂いもする。尚更生かしておくわけにはいかないかな。」


 そう言ってイガラシさんの方を向き、手刀を振り上げる。いけない! あの攻撃を受けちゃ!!


「ハッ! 素手でオレをやろうってのか!! ふざけんのも大概にしやがれ!!」

「いけない! イガラシ、避けろ!!」


 アランさんが叫ぶが遅い。フラッグの手刀がイガラシさんに迫る。


「なっ!?」


 防御の構えを見せたイガラシさんの剣(刀と呼ぶらしい。)を切り裂き、そのままイガラシさんの胴体を切りつける。


 だが間一髪のところでかわせたようで、腹部から血が出ているものの、傷はそれほど深くないようだ。


「待ってて! ボク(・・)がすぐ回復するから!!」


 早く回復しないと!! 慌てて駆け寄っていく。


「やめろ! 嬢ちゃん来るんじゃねえ!!」

「なんだいキミは。チョロチョロと鬱陶しいなぁ。ボクは彼を殺さなきゃいけないんだから邪魔しないでよ。」


 気が付けばフラッグが眼前に迫っていた。あれ? この場面は確か前にもあったような……?


「じゃあね。苦しまないように首を跳ねてあげるよ。」


 --あぁ、確かあの時はあの人が助けてくれたんだっけ。


「コウさん……助けて……」


 フラッグの手刀が降り下ろされる。思わず目を閉じてしまう。


「どっせええええええええい!!」


 --ドガァッ


「むぐっ!」


 誰かの叫び声と衝撃音。それに続いてくぐもった声が聞こえた。首はまだ切られてはいない。


「よっし! 伝説のドロップキック炸裂!!」

「ああ、やっぱりキミか。なんだ、結局来ちゃったんだね。」

「それはこっちのセリフだ。何度も何度も俺の前に出てくるんじゃねえよ。」


 この声は。


「しっかしレイン爺さんの言った通りだったな。もうちょっと遅かったら色々手遅れになってたっぽいのが怖いわ。」

『一応僕も言ったはずだけどねー。』


 もう一人誰かの声が聞こえるが姿は見えない。彼は一体何と話してるんだろう。


「すまないなロッテ、怖い思いをさせて、でももう大丈夫だ。」

「コウさん、ボク……」

「あれ? ロッテまでボクっ娘に?」


 この場面で何を言ってるのかこの男は。


「いや、だからボクは……」

「うーん、ロッテの外見だとボクってイメージじゃないよなぁ。どっちかというとワタクシとか言ってそうなイメージなんだけど。」

「いや確かに外見は変わっちゃったと思うけど……」

「ミリィもそうだけど一人くらいですわー。とか言ってくれた方がキャラも分かりやすいんだけどなぁ。」


 --プッチンッ。


「コウさんのバカあああああ!!」

「ふぐぅっ!!」


 いけない。またやってしまった。成長して外見も変わったし、精神的にも成長したと思ったたけどこのクセだけは治らなかった。


「いってて……容赦のない威力、肝臓を抉るこの角度……もしかして……」

「やっと気付いたの? しかもこれでってのが納得出来ないよ!!」


 感動の再会が台無しだ!!


「冗談だ。やっと会えたな、シャル。」

「本当だよ……全く……遅いよ。」


 それでも私は必ず戻ってくると約束を守ってくれた彼を見て、溢れる涙を止めることは出来なかった。


この回は上手く書きたかったんだけどなぁ。もっと文章力があれば……

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