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修行

今日も書けました。

「フッ!!」


 小さく息を吐き、片手の剣を突き入れる。決して無駄な力は入れない。ただ相手の少し向こう側を狙って剣を突き出した。


「残念、こっちじゃよ。」


 くそっ、フェイントか。だが俺もやられてばかりじゃない。フェイントにも対応出来るように力は抜いてある。


「そこかっ!」


 もう片方の剣で剣を薙ぐ、ただしこれも前に切り出す斬撃ではなく、前から手前に引き戻すような横薙ぎにする。攻撃のリーチは狭まるが、その分前方に放つ斬撃に比べて隙は小さくなるし、到達点が自分の身体だから攻撃後に武器を弾かれる心配も減るからだ。


 とは言っても切り払いの途中で弾かれてしまっては意味がない。なので引き戻すことによってグリップを強くする。


「惜しい惜しい、しかし困ったのう。そう縮こまられてはなかなか攻めれんではないか。」

「誉め言葉として受け取っておくよ。」


 既にレイン爺さんの指導を受けてから三ヶ月ほどだろうか。最初の頃はどう攻撃してもかわされてカウンターからの連続攻撃で体勢を崩され続けてギブアップ。というパターンが多かったが、今はカウンターを貰わないように常に相手の出鼻を挫く。あるいは先手をとって攻撃を繰り出すことで相手に不安定な体勢からの攻撃を誘うことで逆にカウンターを狙う。という動きがとれるようになってきた。


 言ってしまえばレイン爺さんの真似だが、これが予想以上にしっくりくる。いつしかタイミングをズラしたフェイントは意識することなく、相手が回避しようとしたところに一撃を繰り出し、それを更に回避しようとしたところにまた一撃、と相手の隙を作るコツを掴み始めていた。


 あとは経験の差か。未だに一本をとることが出来ないでいる。


「ほっほっほ、しかしコウも上達したのう。これなら魔法師と言わず双剣士と名乗っても良いじゃろうて。ではそろそろ行くぞい。今日こそはこの攻撃をかわしてみせい。」


 来るか。例の攻撃。


 先程俺がやったように突きが飛んでくる。速度はそれほどではないが、剣で切り払おうとした時にはあろうことか剣から手を放し、懐に入り込まれて一撃を入れられてしまった。


 その次は突きを横に回避したが、回避した前方から斬撃が飛んできて、慌てて下に屈んで回避したら突きの体勢から下に降り下ろされて一撃入れられた。


 そんなことを繰り返しながらずっと考えてきた。どう動いても次の行動にあわせて剣が飛んでくる。恐らくは経験から相手がどう動くかのパターンを組み立てて、最適な軌道で剣を振るえるように修練してきたのだろう。それも400年、いくらなんでも経験が違いすぎる。


 だからといって俺も諦めるわけにはいかない。例え剣の才能がそれほどなくても、それでもこれまで剣を振るってきたんだから。


「つっ!!」

「ほっ、そう来るか。」


 突きに対してあえて前に出る。剣が頬を掠めるが気にしない。


「じゃがのう、それも予想の範疇じゃよ。」


 そう言ってレイン爺さんがもう片方の剣も突き出してくる。だが先の一撃をギリギリで回避したことが功を奏し、まだ俺の体勢は崩れていない。腹を狙ったその一撃を横に身体を捻ることで脇腹を掠めながらも回避し、爺さんの懐に入り込もうとする。


「やるのう。恐らくはその動きが最善手じゃろうて。じゃがワシもまだ負けるわけにはいかんからのう。ちょっぴり本気を出すぞい。」


 爺さんの言葉を無視して横を向いたまま肘打ちを狙う。この体勢では剣を振るうにしても更に半転しなくてはいけない。それではせっかく掴んだ刹那の時間が無駄になってしまうからだ。


 --よし、入る!!


 半ば確信し、この後の攻撃の組み立てを思考する。肘が入ったらあとは密着して剣を巻き付けるように横薙ぎ、そこから……


「残念じゃがまだ青いの。入ってもいない攻撃の後のことを考えてはいかんよ。」


 声が聞こえた時には爺さんの姿は目の前にない。


 --待て、今どこから聞こえた?


「がっ!?」


 首の後ろに強い衝撃を感じ、思わず苦痛の声を上げてしまう。何故後ろから声が、攻撃が飛んでくるんだ!?


「惜しかったのう。ワシも今のは危なかったぞい。」

「いつつ……爺さん、今のは?」


 どう考えてもおかしいだろう。爺さんは突きの連続で最初の突きもまだ引き戻せてなかったはずだ。体勢が崩れた、とは言いがたいが、それでも俺の攻撃が当たらないわけが……


「別に剣を振るうだけが剣術というわけではないからのう。さっきのように肘が飛んでくる場合もいわば想定内じゃ。で、あればそれに適した回避方法もあるというもんじゃて。」

「適した方法?」

「うむ、剣や槍、斧じゃったら刃に切られて終わりじゃが、拳や蹴り、肘打ちであれば、多少食らったとしても斬られることはないからの。もちろん武術家が相手であればまた話は違うじゃろうが。」


 爺さんが説明してくれる。


「今のはお主の肘を機転に衝撃を受け流し、そのままお主の身体に密着したまま後ろに回ったんじゃよ。言ってみれば布が身体に巻き付くような感じかの。」


 なるほど分からん。


「いや、なんとなく動きの予想はつくんだが、そんなのいきなりやろうと思ってやれるもんじゃないだろう?」

「そこはほれ、ジジイの歴史というやつじゃ。」


 どうやら400年は伊達ではないようだ。このジジイも十分に化け物である。


「くっそ、今日こそ一本とれると思ったのに。」

「ほっほっほ、まぁそう悲観するものであるまい。この三ヶ月間、お主の上達振りには驚かされておる。実際そんじょそこらの剣士に負けるようなことはないじゃろう。じゃがお主の敵は並どころの話ではない。出来うる限りの技を磨き、実力をつけて損はないじゃろう。」


 まあ確かに魔法一辺倒で勝てるような相手ではない。実際前の戦いでも魔法でトドメを刺しきれず、最後は剣術に頼ることになったからな。


「ビゼンがおるから剣を使っての戦闘も可能じゃろう。それに戦いの幅が広がればそれだけお主の魔法も活きてこよう。精進は怠らぬことじゃな。」

「そうだな。確かに今は剣術ばっかりだけど、魔力を温存する意味でも剣術だけで戦えるならそれに越したこともないしな。」

「そういうことじゃ。」


 今の動きは俺にも出来るだろうか。次の立ち会いの時は見ることに重点を置くとするかな。


「さて、今日の修行はここまでじゃ。ではこの後サニーちゃんの方をよろしく頼むぞい。」

「ああ、分かった。」


 レイン爺さんとの剣の修行が終われば今度は俺が先生役になる。サニーの魔法の修行の時間だ。


「よろしくお願いします先生!!」

「だから先生って言うなって何度も言ってるだろ? 俺はお前の爺さんにも歯が立たないんだから。コウでいいよ。」


 そう、何故か俺のことを先生と呼ぶ上に敬語なんだ。爺さんに対してはクソジジイって呼ぶのにな。


「いえ、先生の魔法は凄いです。見たことも聞いたこともない魔法ばかり。あんなクソジジイなんて先生の魔法があれば一発で……」


 但し過激なところは地のようだ。


「俺の魔法は確かにほとんどがオリジナルだからなぁ。でも基本魔法は中級魔法までしか使えないし、現にサニーもアローやスフィアなら使えるようになっただろ?」

「それは……確かに使えるようにはなりましたが、先生の魔法とはドラゴンとゴブリンほどの差があります。」

「器と魔力はなぁ。魔法を使ってきた時間も違うだろうから、サニーはこれからだよ。」


 ちなみにサニーを教えることになった当日、すっかり魔力の回復した俺は調子に乗ってベレッタからファイアボルトを全開で撃ってしまった。


 結果、上空に放ったファイアボルトは雲を散らそうかというくらいの勢いで空に向かって飛んでいき、それを見たサニーが間抜けな顔をしていたことは今でも記憶に新しい。


「それで先生、今日は何の魔法を練習するんですか?」


 おっと、思考が逸れてしまっていた。そうだなぁサニーは火属性と一番相性がいいけど、実は風属性とも相性がよく、俺と似たような状況だ。


「うん、今日はちょっと試してみたいことがあってね。」

「試してみたいこと?」


 これは俺の興味本意の実験でもある。


「今日は二属性同時に発動してみようか。最初は複合せずに右手と左手で違う属性を放出するような感じで、ファイアボルトとウィンドボルトを同時に発動させるんだ。」

「えっ!? そんなことが出来るんですか?」


 サニーが驚いている。確かにこの複数属性同時発動は使い手が少ない。俺が使える理由もよく分からないが、成功することは稀なんだとか。だが俺の場合、このスキルは今の生まれ変わった俺、如月巧が得た能力ではなく、前世のコウ=キサラギが得た能力だ。身体が変わっても使えるということは発動のプロセス、あるいはイメージ力に左右される物なんだろう。


「じゃあ試しに俺が使ってみるよ。見てて。」


 右手にデザート・イーグル。左手にベレッタを構える。


「いつ見てもそれ。銃って言うんでしたっけ。なんというかその。か、カッコいいですよね!」

「おっ、分かる? やっぱりこれカッコいいよね。」


 少し気分が良くなる。この世界にも二丁拳銃の良さが分かる人がいたか。早速魔素を取り込み魔力を変換させる。右手に風属性、左手に火属性を送り込んでいく。


「それにその……も……」


 うん? 何か言ったかな。銃がカッコいいときてそれに、と続けばやはりこの日本刀だろうか。ビゼンはともかく、刀としての備前はカッコいいもんな。


「よし、じゃあ撃つよ。よく見てて。」


 --ドンッ。ドシュッ。


 僅かに異なる発砲音を伴い、右手からはファイアボルトが、左手からはウィンドボルトが放たれる。タイミングはほぼ同時だ。


「と、こんな感じ。これが出来るようになれば魔力を組み合わせて複合魔法も使えるようになると思うけど、まずは別の属性を同時に発動することが出来てからだ。」


 それにいきなり無理して腕とか吹っ飛んでも困るし。


「す、すごい……やっぱり先生はすごいです!!」


 また手放しで誉められてしまう。素直な子だな。


「まあまあ、感動するのはそれくらいにして練習しよう。まずは取り込んだ魔素を火と風に同時に変換する練習からだ。」

「はい!! やってみます!!」


 うん、いい返事だ。


 そしてこの練習は二時間ほどしたところでサニーが魔力を練れなくなり、終了した。


 結局成功しなかったが、意外と出来そうな気がする。しばらくの間、根気強く練習してみるかな。


明日から遅番三連続なので帰宅が遅くなります。

なので投稿は怪しいですがなんとか頑張ります。

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