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提案

うもーん。

昨日も更新できんかった……

 --ビゼンが羊になってしまった。


 といっても俺が契約の途中に中途半端なことを考えてしまったからなのだが。


「ま、まぁ姿の問題じゃないよな。うん。」


 精霊だし、姿に囚われずに力を発揮出来るはずだ。きっとそうだ。


『確かに僕からすれば姿形はそこまで重要じゃないけど、精霊を使う側にとってはこの姿を元にして力を行使することになるからねー。』


 なんてこった。やっちまった感が半端ない。


「ちなみにやり直しは……」

『コウの存在を消してしまえば契約は破棄されるけど、もう一度生き返る自信、ある?』


 そんな自信あるわけがない。畜生、後悔先に立たずとはこのことか。


「ほっほっほ、慣れてしまえば可愛いではないか。」

「いや可愛いとかってそういう問題じゃ……」

「なに、要はお主がビゼンに頼らずとも強くなれば良いのじゃろう? それになにもビゼンの力が全く使えんわけでもあるまい。一朝一夕にはいかぬかもしれんが、お互いをもっと良く知り、力を合わせれば良いのじゃよ。」

『おー、レインがまともなこと言ってる。年は取るもんだねえ。』


 それはそれで言う通りなのだが。とは言っても羊の姿での精霊行使かぁ。そもそも精霊の使い方なんてわからないけど、そこはレイン爺さんの言う通り、ビゼンのことをもっとよく知る必要があるんだろうな。


「さて、コウよ。話は理解した。そしてお主が別の世界から来たということも今は信じざるを得まい。そして頼む、お主の目的ついでで構わん。フラッグの奴めを懲らしめてくれんかの。それがワシらの悲願でもある。」


 ついででどうにかなる相手でもなさそうだが、俺が言い出したことだしな。それに奴とは皮肉なことに運命めいた繋がりを感じる。恐らくまた出会うんだろう。


「もちろん、俺もアイツとは妙な縁を感じるしな。ビゼンの力がどう使えるかはまだ分からないが、微力は尽くさせてもらうよ。」

「それで十分じゃ。それにワシからも提案がある。」

「提案?」


 あれ? そんな話の流れだったっけ?


「うむ、先刻手を合わせて思ったのじゃが、お主の動きには無駄が多い。いくら双剣士じゃとは言えな。それにビゼンの力の使いこなすための時間も必要じゃろう。幸いここは先にも言ったように大陸から忘れられた街じゃ。フラッグの奴もワシらがこんなところにおるとは思っとらんじゃろう。」

「そういえばさっきも言ってたけど、忘れ去られた街ってどういうことなんだ?」


 よくあるパターンで言えば地図にない街ということだろうか。


「言葉の意味そのままじゃよ。この街は過去フラッグの襲撃を受け、大陸から切り離されてしまったんじゃ。おかげで孤島のような状態になっておってな。たまたま船が難破して流れ着いてくるような人間達が集まって街の形を成しとるが、流通もほとんどなにもない。寂れた街じゃよ。」

「大陸から切り離すとか化けもんか。」

「腐っても神じゃからの。それくらいはやるじゃろう。じゃがお主はそれに渡り合うことが出来る存在だということも事実じゃ。大きすぎる力はやがて切り離される。この街のようにの。ゆめゆめそのことは忘れるでないぞ。」


 確か前にも同じようなことを言われた気がするな。俺自身がちゃんと自覚してないこともあるだろうが、言っていることは理解出来る。


「そのためにも力は必要な時に必要なだけ発揮出来るようにコントロールすることが肝要じゃ。それが先の提案に繋がるのじゃが。」

「ああそうだった。ごめん、話を逸らしちゃったな。」

「なに、構わんよ。それで提案なのじゃが、お主ワシの元で剣を学んで行かんか? 幸いにもお主には決まった型などがないように見受ける。恐らくはムラクモめが何か意図を持ってそうしたのじゃろう。もしかしたらワシの元にたどり着くことを予見していたのかもしれんの。」

「師範が?」

「うむ、剣の型、クセというものは一度ついたらなかなか変えることが出来んのじゃよ。もちろんそれが悪いとは言わぬが、それぞれには適した動きというものがある。ワシの勝手な予想じゃが、お主の動きとムラクモの剣術は相性が良いものではないんじゃろう。あやつめの剣は見た目に反して威力の高いものが多かったからの。」


 イガさんとは相性バッチリってことか。そう考えると師範は一体何者なんだろうってことにもなるが、今は考える必要はないか。


「俺は願ってもない話だ。そもそもここがどこかもよく分かってないし、闇雲に動いても仕方ないだろうしな。それに爺さんの剣を学んで強くなれるなら俺からもお願いしたい。俺はフラッグを倒さなきゃいけないしな。」


 アラン達には悪いが、少し時間を貰うとしよう。今の俺じゃただ和気藹々と旅をした挙げ句、いずれフラッグと出会って今度こそ皆殺しにされてしまうのがオチだ。なら少しでも強くなって皆を守れるくらいにはならないと。


「ほっほっほ、いい目じゃのう。昔のクラウドを思い出すわい。」

「父さんを?」

「うむ、クラウドはお主と違って人付き合いが苦手なようじゃったが、それでも何かを守ろうとする時にはお主のような目をしておった。結果としてワシらはそのクラウドに助けられたわけじゃがの。」

「父さんが……とは言っても父さんは魔法が苦手だったってビゼンが言ってたし、剣を使えるようには見えなかったけど。」

「クラウドはの、武力といった強さは持っておらんかった。よくて駆け出しの冒険者と同等くらいじゃろうな。じゃがなコウよ。人間の強さとは腕っぷしのみならぬ、秘めた意志の力というものがある。それがムラクモをはじめとして、ストームを、ヴィオラを、そしてワシを繋ぎ、ついにはフラッグの力を封じることに成功したんじゃよ。あやつがおらんかったら今頃人は平和を享受することは出来んかったじゃろうな。」


 全くもって寝耳に水である。そうか、それでフラッグの楔は皆の武器に……


「それとこれはお願いなんじゃが、ワシがお主に剣を教える間、少し頼まれて欲しいことがあるんじゃがのう。」

「なんだ? もちろんタダで教わろうなんて思ってないし、俺に出来ることなら言ってくれていい。」

「そうか、それは助かるのう。お願いというのはサニーちゃんのことなんじゃが……」

「娘か剣かどっちだよ!?」


 自分でつけた名前なんだからどっちかくらいちゃんとハッキリしてから言え。娘のサニーとか。


「娘に決まっとるじゃろう!?」

「いやなんでアンタが怒ってんの!?」


 しかも逆ギレされた。なんだこのジジイ。


「まぁよいわ。それでサニーちゃんのことなんじゃが、ほれ、さっき見とったじゃろう? あの子は魔法師を目指しておるんじゃ。」

「ああ、確かに見た。爺さんが剣術を教えるって言ってフラれたところもな。」

「ぐすん。」

「泣くなよ!?」


 本当にこの爺さんに教わっていいんだろうか。ちょっと心配になってきちゃったじゃないか。


「冗談じゃ。まぁお願いというのは他でもない。サニーちゃんに魔法を教えてやってくれんかのう?」

「俺が? いいけど爺さんはそれでいいのか?」


 剣術教えたがってたしな。


「良いも何も本人が剣術ではなく魔法を選ぶというんじゃからの。で、あれば本職に教わる方が良いじゃろう。ワシは剣術はともかく、魔法には疎いんじゃ。」

「ああ、じゃあ彼女。サニーが使ってた魔法は独学で?」

「サニーちゃんと呼べこのクソ虫が!!」

「いやだからなんでそう娘の話になると沸点低いわけ!?」


 もうやだこのジジイ。


「うむ、どこで覚えたのかは分からんがのう。もしかしたら街の住人に教えて貰ったのやもしれん。ただ使える魔法は初級魔法のボルトだけ。しかも属性の相性か火の魔法しか使えんようなんじゃ。流石に不憫でワシも剣術を教えようと思ったのじゃが、見ての通り頑固での。一向に諦めようとせん。」


 まあ初級の基本魔法は体系化されてるからな。一度発動に成功さえしてしまえば結構誰でも使えたりするし。


「じゃからお主のような魔法師に教えを受け、それでも芽が出ないようであればあの子も諦めるじゃろう。結果が出るようであればそれはそれで良し。本人も満足するじゃろうて。」

「なるほど、だけど俺も基本魔法は中級までしか使えない。あとは全部俺のオリジナルだしな。それでもいいならってことになるけど。」

「構わんよ。中級魔法が使えるか使えないかでも素質の有無は判断がつくじゃろう。あの子ももう幼子ではないんじゃからの。」

「ならオーケーだ。俺もビゼンの使い方を考えながらだからそこまで時間はとれないかもしれないけど、請け負うからにはちゃんと教えるよ。」

「すまぬの。サニーちゃんにはワシから話しておこう。」


 まあ俺の言うことを聞いてくれるかは分からないが、性格キツそうだったもんな。


「なら今日はもう遅い。コウの剣の修行も、サニーちゃんの魔法の修行も明日からにするとしようかの。ワシの部屋の隣が空いておるからそこを好きに使うといい。どれだけの時間を要するか分からぬが急いでも逆に結果は出ぬ。ゆっくりしていくがよい。」

「ああ、助かるよ。ありがとうな。レイン爺さん。」

「なに、礼を言うのはこっちの方じゃ。久しぶりに旧友にも出会えたし、クラウド達の話も聞けたしの。長く生きてきたが久々に若かった頃の記憶が甦ってきたわい。」

「そう言ってもらえると助かるよ。それじゃすまないが俺は休ませて貰う。」

「うむ、夕食の時間になったら呼びに行こう。その時にサニーちゃんには話をするつもりじゃからよろしくの。」

「了解、それじゃまたあとで。」


 割り当てられた部屋に入り、少し傷みが伺えるベッドに腰かける。


 --さて、明日からはまた忙しくなりそうだな。少し横になるとしよう。


 アラン達は俺を探しているだろうか。いや、あっちはあっちで王都の復興が大変だろうしそれどころじゃないか。ミリィもいるし尚更だろうな。


 そんなことを考えながら、いつしか俺は睡魔に教われて眠りについてしまった。

不定期になってしまって申し訳ありません。

できれば毎日、あるいは隔日ペースで投稿頑張ります。

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