二人っきりのお食事
交差点のあたりで待っていると見慣れた車が来た。小走りで走り寄って乗り込む。
「お疲れ様です。」
「お疲れ様。待った?」
「いえ、そんなに。」
「よかった。」
恋人みたいな会話だな。心臓が飛び跳ねているようだ。
「山の上にあるパスタやさんとかどう?景色がきれいなんだ。」
「そうなんですか。是非行きたいです。」
行くお店まで考えてくれているなんて。アレックス先生のいいところしか見えなくなりそうだ。
駐車場に車を停めるころには、日はすっかり落ちていた。
「どうぞ。」
車のドアを開けてくれる。エスコートですか!?私から誘ったのにエスコートあるんですか!?差し出された左ひじに動揺を隠しながら手をかけた。
入り口につくと、ドアを開けてくれる。生まれて初めてのエスコートに舞い上がる。
一瞬お先にどうぞっと後輩魂が顔を出したが、何かを言う前に手でどうぞとされてスムーズに入ることができた。まさか、こんなスマートにエスコートされるなんて。さすがイギリス紳士!まいりました。
席に案内された。夜景の見える席だった。
こんなロマンチックなことが私に起こるなんて。夢見心地だった。
「アレックス先生の・・・」
「プライベートではアレックスと呼んでください。瑠衣さん。」
え?いいの?本当に?誤解するよ。
「じ、じゃあ、アレックス、アレックスの故郷ってどんなところなんですか?」
「僕の故郷はですね。国でいうとウェールズにあります。見た目は、有名なところだと、モンサンミッシェルがちかいでしょうか??」
「そうなんですね。想像しかできないですが、素敵なところみたいですね。」
「写真をお見せできたらいいんですが、島の中で写真を撮っても何も映らないようになっているんですよ。」
「見たかったです。残念です。」
「いつか招待できたらいいですね。」
「はい。行ってみたいです。」
招待!?招待ってどういうこと。待て待て。落ち着け。勘違い女子になるなよ。
パスタが運ばれてきて、パスタを食べる。
「瑠衣さんの故郷はどんなところですか?」
「私の故郷、と言いましても、学校から一時間ぐらいのところです。ちょっと田舎なぐらいですかね。」
「そうなんですね。また案内してくださいね。」
「はい。」
だめだ。勘違いしちゃう。冷静になるんだ。
パスタを食べ終わり、デザートを食べる。レモンのシャーベットだった。
アレックス先生の職場とは違う雰囲気に動揺が止まらない。一回トイレにいって冷静になろう。
「ちょっとお手洗いに行ってきますね。」
「はい。」
洗面台の前で深呼吸をする。落ち着け。初めてのエスコートやイキナリの名前呼びに動揺するな。ハタチ超えてるんだぞ。瑠衣!大人の女性の余裕を・・・無理ぃ。普段も優しくて素敵紳士の職場とのギャップにもう骨抜きになりそうだ。
何とか、動揺を心の中にしまい込み席に戻る。
「お待たせしました。」
「いえ。待ってないですよ。じゃあ行きましょうか。」
「はい。」
またさりげなく出された左ひじに戸惑う。ん?っと首をかしげるしぐさまでかっこいいとか。右手で右手をひっぱり、手はここですよというように左ひじに誘導される。
そのままお店をでた。
「あの、お会計・・・」
さて?と首をかしげられ、助手席のドアを開けられる。ご馳走してくれるってことかな?
「あ、あの、ごちそうさまでした。」
「いいえ。」
車に乗り込んだ。もういっぱいいっぱいだ。家まだ送ってもらう間に何を話したのか覚えていない。
「また明日。」
「はい。また明日。今日はありがとうございました。」
「いいえ。では。」
車が見えなくなるまで見送った。今夜は寝れる自信がない。
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