テスト前
中間試験の一週間前となった。生徒たちは休み時間も放課後も勉強をしている。えらい。
今日は、留学生科の職員の三学年合同会議だ。テレパシーを使える生徒もいるため、カンニング防止が必要なのだ。
そのため、学年の違う3人を一セットとし、12組を作る。そして、それに1人ずつ教員が試験監督としてつくのだ。ちょうど教員も12人。ぴったりだ。毎日2時間連続の試験監督で、質問も受け付けられないが。
信じましょうじゃないんだね。まあ、やるような子じゃなくても、この一問が・・・ってなるかもだしね。
当日は校内の様々な場所にある空き教室でテストを受けるのだが、私は迷わないようにと近くの教室にしてもらあえた。ありがたい。
会議が終わり職員室に戻った。ベテランの国語の先生である花村先生にお願いして見てもらったテストの直し作業に戻る。頑張るぞと気合を入れてパソコンを起動した。
17時だ。下校のチャイムが鳴る。就業時間だ。瑞穂高校は働き方改革が行われていて、残業に関して厳しい。この辺で帰らないと教頭先生が追い出しに来る。別の学校の友人は、21時まで残業してるところもあるらしい。恐ろしい。ある時、花村先生に言われた。
「定時に帰れるようにお仕事しないとだめよ。」
と。ふわふわっと優しくお話になるのに確かな意思を感じた。でも、あと少しだけ。教頭先生が追い出しに来るまで頑張りたかった。もうすぐ完成しそうなのだ。
18時30分、職員室のドアが開いた。来た。頑張りすぎた。
「今帰りますっ!」
急いで片づける。
「水川先生?」
入ってきたのはアレックス先生だった。
「あれ?アレックス先生?」
「教頭先生だと思いましたか?」
「はい。「帰りなさーい」とおっしゃりにきたと思いました。」
「ははは。教頭先生はもうお帰りになったよ。」
「よかった。」
「でも、もう帰ったら?」
「そうですね。帰ります。先生も帰られますか?」
「うん。帰るよ。」
「そうですか。じゃあ戸締りしますね。」
職員室は最後に帰る人が戸締りをする決まりだ。二人で鍵を閉める。
「水川先生、テストできました。」
「はい。さっきお直しが終わりました。」
「そっか。お疲れ様。」
「ありがとうございます。」
職員室の鍵を鍵置き場に置き、靴箱へ向かう。もう5月の半ばなので外はきれいな夕焼けだ。校内の緑色であるはずの廊下が茜色に染まっている。茜色の壁、茜色の靴箱・・・
「アレックス先生、晩御飯ってどうされてるんですか?」
「寮で食べるか、適当に食べに行くか気分だよ。」
「そうなんですね。今日はどうされるんですか?」
「ん?」
「あの、よかったら一緒に夕食でも・・・」
言ってしまった。夕焼けを見ていたらつるっと言葉が出てきた。
アレックス先生が一瞬驚いた顔をして、笑った。見たことない笑顔だ。
「いいよ。車で行く?」
「はい。」
「じゃあ車取ってくるから、下の交差点で待ってて。」
「はい。」
言ってしまった。しかもいいって。本当に!?心臓がすごくはやく動いている。高揚感というのだろうか。顔赤かったかな。でも、校内もオレンジ色だったし大丈夫だよね。
足早に待ち合わせ先に向かった。
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