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黄金のファフニール  作者: とっぴんぱらりのぷ〜
第3章 光を追って
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シルトと仲間達

 途中休憩を挟みながら転移を繰り返し、すべての素材を運び終わった頃にはすでに日が暮れていた。アーシェとミーニャは十層にいた冒険者達を連れて戻ってきていた。


「待たせたな。問題なく帰ってこれたか?」


「はい。戦闘は何回かありましたが、特に怪我人もなく戻ってこれました」


「ミツハルさん……。その……。ちょっとお話が……」


 やっと二人のところに戻ったと思った矢先にマウが話しかけてくる。素材の鑑定結果だろう。


「いくらになったんだ?」


「えーっとですね」


 言いづらそうにして最終的には耳打ちで教えてくる。


「白金貨十万枚?何それ?白金貨って初めて聞いたんだけど」


「しー!よくない人達に聞かれたら大変ですよ!白金貨は金貨の十倍の価値があるんです。貴族や大商人くらいしか扱ってません。しかも、これは大まかな鑑定結果でして、もっと上がるかもしれません」


「えーっと……。買い取りできる?」


「「できません!」」


 ラウとマウが即答する。ギルドの物置に置かせてもらっているが重さでボロギルドが崩れそうになっている。買い取りも出来ないとなるといつまでも置かせてもらうわけにはいかない。


「素材全部で白金貨十万枚だそうだ。半分こでいいだろ?」


「!?」


 チャラ男達が目を丸くする。


「あ、あれはあんたらが仕留めたヤツだろ……。俺達にもらう権利なんかない……」


 意外にもチャラ男は申し出を断る。律義なヤツだ。


「いや、お前達が見つけて戦闘したんだ。俺達が発見できたのはお前達のおかげだよ。十分にもらう権利がある」


「いや、しかし……」


「あんなにあっても困るんだよ!頼むからもらってくれ!」


 俺は手を合わせて本気でお願いする。


「わかった……。ありがとう。それと、昨日は生意気言ってすみませんでした」


 チャラ男が深々と頭を下げる。


「昨日って?今日会ったばかりじゃないのか?」


「えぇ!?昨日ブリジットのオススメ亭で……」


 あ!と思い出す。そういえばチャラい男に絡まれた記憶がある。攻略で頭がいっぱいだったからすっかり忘れてた。


「マジっすか……ホントに忘れてたんスね」


「わるいわるい。本気で忘れてたよ。あ、それと素材の分配方法とか決めたいからさ、一緒にメシでも食っていくか?えーっと……、名前なんだっけ?」


「まだ名乗ってなかったっス。俺はシルトって言います」


 いつも開店休業の北区ギルドが今日は賑やかになる。食べ物はラウとマウが用意してくれエールや葡萄酒も振舞われ宴会状態だ。


「アニキ!アニキの魔法凄いっスね!」


 シルトが酔っ払って絡んでくる。いつからお前のアニキになったんだよ。でも、わるい気はしない。アーシェもミーニャもそれぞれ他のメンバーに捕まってるが、それなりに楽しそうに見える。

 メトに入ってから攻略ばかりで騒いだり同年代と話することもなかったからな。


「魔法というか手品みたいなもんだ。色々なタネがあるんだよ。真似しようとしてもできないからな?ところで、仲いいみたいだけどお前らはみんな同じ出身なのか?」


 チャラ男ことシルトのパーティメンバーは男四人女二人の全員で六人。リーダーで戦士のシルト、体格の大きいもう一人の戦士ガブ、シーフのエリック、狩人のミリー、魔術士のハット、神官のマリア

 ジョブだけ見ればかなりバランスのいいパーティだ。ネトゲなら即レベリングに行ける。


「俺達はずっと東にあるアズールっていう村から来たっス。ガキの頃から遊んでて大人になったらメトで冒険者するのが夢だったんス」


「冒険者になって半年だっけ?半年で十層くらいが普通なのか?」


「そうっスね。同じ時期に冒険者になったヤツも大体そのくらいっスから、普通じゃないっスかね?」


「そういえば、中央の“黄金バット”とかいうクランに入ってるって言ってなかったか?大きいクランなのか?」


「“黄金伝説”っス。中央ギルドでは最大のクランっスよ。所属メンバーが二百人くらいいるっス」


「そんなにいるのにお前らだけで攻略してるのか?一人くらい高レベルがいたほうが効率いいだろ」


「高レベルのメンバーは一緒には行動しないっス。自分達でレベルを上げて認めてもらうしかないんスよ。クラン所属料も払わなきゃいけないっスからレベル上げしてる余裕ないんスよ。だからシュティーアでも狩って食べ物だけは確保しようとしてたんスけど、あのザマっス」


 クランに所属するのに料金が発生するのかよ。ネトゲでもたまにいたな……。そういうヤツは決まって持ち逃げするんだ。ろくなヤツがいない。


「ラウ。“黄金伝説”ってクラン知ってるか?」


「はい!中央ギルド最大人数のクランですよ。三年ほど前から四十五層を攻略中ですが未だ四十六層には到達できていません。それと、あまりいい噂も聞きませんね」


「どんな噂だ?」


「死者数が多いんです。四十五層は五十人ほどのパーティで挑むようですが、毎回半数近くの人が亡くなっているとか……。酷い時はリーダーと数人の幹部しか帰ってこなかった事もあるようです」


 ラウの話を聞きシルト達の顔が青ざめる。ラウの話だけ聞けばリーダーは無能。おそらくは自分達以外を肉盾にして攻略しようとしているのだろう。ネトゲにゾンビアタックなんて言葉があるが、ここでは蘇生の魔法はないのでただの無駄死にだ。


「お前ら、そこのクラン抜けたほうがいいぞ?いずれレベルが上がれば肉盾にされて終わりだ。おそらくそこのクランじゃ四十五層は一生攻略できない」


「四十五層に行った事あるんスか?現在の最高到達層っスよ?」


「あぁ、何度も挑戦してるがまだ未攻略だ。それと最高到達は五十層だろ?北区の“赤いキツネ”が攻略済みだぞ?」


「赤いキツネ……。聞いた事ないっス。中央ギルドでは“黄金伝説”と“流星群”クランしか到達できてないって聞いてるっス」


「「なんですって!?」」


 シルトの言葉にラウとマウが反応する。かなりお怒りのようだ。


「到達層はキチンと報告してるんです!」


 とラウ。


「赤いキツネを知らないですって!?」


 とマウ。


 二人でシルトに詰め寄る。


「いや……。中央ギルドではそうなってるってだけっスから……。なぁ?」


 タジタジになって仲間に相槌を求める。他のメンバーも“赤いキツネ”知らない様子だ。


「中央のギルド長なら他のギルドの功績を揉み消して自分のとこのクランの宣伝くらいやりそうだからな」


「ですね」


 意外にもアーシェが賛同する。あのギルドにはかなりご立腹なのだろう。


「ま、それはガルドの意見を聞いてからでもいいだろ?あんまり功績とか名誉とかこだわらなそうだしな。とりあえず死にたくなかったら今いるクランはやめておけ。移籍できるならギルドも他にしとけ。全く信用できないだろ?」


「そうっスね……。みんなと相談して考えてみるっス」


 結局、素材の処理については決まらなかったが、とりあえずは北区のギルドが潰れるまで置いてもらう事になった。明日はアダマンタイトで剣を作れるかゼルテに相談しに行く予定だ。なんだかんだと宴会も夜中まで続いてお開きになった。


 他人から頼られたりするのも悪くないな……。




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