クロスファイア
空気が震える。サイクロプスの咆哮。そして、特殊作戦群の第三中隊、第四中隊が南北戦争の十字砲火さながらに渦から顔を出すサイクロプスに銃弾の雨を降らせる。
などと格好つけてはいるが、俺は隣で沖田さんが機関銃のトリガーを引く度に、低い破裂音が耳から入ってきて脳を揺らされ、それどころではない。右を第三中隊、左を第四中隊に挟まれ、中央にいる俺たちの特等席、その前を空薬莢が跳ねて転がって通り過ぎ、その視線の先で銃弾を浴びるサイクロプスが、右手と顔だけを出してもがくように暴れている。
「あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ーーーー」
サイクロプスに傷を負わせているのは大型の重火器だけだった。隊員たちが持つ小銃は、確かに着弾はしているが肌が変色するだけで傷を負わせているとは思えない。何発、何十発か同じ場所に当たれば或いはという程度の擦り傷だ。
「マジかよ……」
いよいよ自分の抱える〇一の出番が近いと土方さんが武者震いをしている。沖田さんは、機関銃に付いている蝶番のようなトリガーを軽く触って一発、一発を確実に着弾させて行く。
「M2重機関銃だぞ……。普通、腕が消し飛ぶぞ?」
サイクロプスの硬い皮膚は出血こそしてはいるが、致命傷には程遠い。蜂や虻に刺されたのではないかと言う程度のダメージに、冷静な沖田さんが毒づいた。
「目を狙え!目だ!」
その刹那、俺と伊佐美の後ろで芹澤さんが叫ぶ。その姿は野球場のネット裏の野次親父か、リングサイドのセコンドか微妙な所だ。しかし、伊佐美が芹澤さんの着眼点を的確にフォローして、芹澤さんの叫びに意味を持たせる。
「サイクロプスは瞬きをしてないよ!」
その伊佐美の声は咆哮の合図だった。特殊作戦群の十字砲火は、サイクロプスの大きな目へと集中していく。目を瞑ることができないサイクロプスの白目に沖田さんの重機関銃の一撃が突き刺さった。
「ぐあ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!!」
サイクロプスの叫び声が響く。先ほどまでの威嚇のような叫び声ではなく、痛みから来る苦痛の叫びだ。叫び声を上げるサイクロプスは、自身の急所をその右手で覆い隠す。
「土方ぁー!」
沖田さんが叫んだ。その声に俺が土方さんを見ると、土方さんが肩に担いでいる〇一を撃つ直前だった。火薬の匂いと破裂音と一緒に砲弾が現れた。
俺には一瞬、空中に砲弾が浮かんだように見えた。その錯覚に疑問を感じた瞬間。白煙をあげ、轟音とともに砲弾がサイクロプスの顔に向かって直行していく。
「くらえや!一つ目野郎!」
土方さんの、お世辞にも品がいいとはいい難いセリフと共に、砲弾はサイクロプスの右手に着弾した。
「ぎゃ゙あ゙あ゙ぁ゙あ゙あ゙ーーー!!!」
轟音に耳鳴りがして、頭がくらくらする。白煙が立ち込め着弾地点を目視は出来ない。が、攻撃が効いたのかどうかは、サイクロプスの叫び声と新宿駅の白いタイルを赤く染める大量の血が教えてくれた。
「よっしゃーー!」
土方さんがガッツポーズをしている。咆哮は止み、皆が白煙の向こう側に目を凝らしている。白煙が霧散し始めて現れたのは右腕を失ったサイクロプスの影だ。俺たちは土方さんに倣い、雄叫びを上げる。
「「「「よっしゃーー!」」」」
そして、サイクロプスの影が動く。右腕を失ったサイクロプスが左手を振りかざし、膝立ちになっている。その影が動いた。




