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115話 転生者サブロー、哀れな末路



 勇者エレンによって、転生者サブローは撃退された。


 その数日後の夜。

 サブローはひとり、村から離れた森の中にいた。


「クソ! クソッ! 許せないぞあのクソ勇者ぁああああああ!」


 森のなかにあった湖のそばに、サブローがいる。

 エレンの炎を受け、吹っ飛ばされた後、森の中を悶え苦しみながら歩いた。


 そして運良く湖にたどり着き、炎を消すことに成功。

 動けるようになるまで、数日を要した。


「よくも拙者のハーレム村を破壊しやがって……! 許せん! 絶対に許さんぞぉエレぇえええええええン!」


 のそのそ、と重たい体をひきずりながら、サブローは元いた村を目指す。


「殺してやる……! この無敵の触手で、ぶっ殺してやるぅう!」


 サブローの尾てい骨のあたりからは、タコの触手が数本、生えていた。


 今は力をなくしたように、だらりとぶら下がっている。


「おまえさえいなければ! 拙者は女にモテモテうはうはなハーレムライフを送れたんだ! それを! 邪魔しやがって! 復讐だ……復讐してやるぅ!」


 にぃ……と邪悪にサブローが邪悪に笑う。


「あのガキの女ふたり……たしかアスナとティナとか言ったなぁ」


 ぐへへへ、と気色の悪い笑みを浮かべながら、のそのそとサブローが歩く。


「あのガキの前でぇ、大事な女2人を犯してやるぜぇ……でゅふっ♡ 拙者のこの触手の媚薬でなぁ……!」


 勝ち誇った表情で高らかに言う。


「そうだぁ! この間の戦闘では、触手の力をフルに使っていなかった! この【万能触手】はなぁ! 媚薬を分泌するだけが能力じゃあねえんだよぉ! 思い知らせてやるよぉ……転生者のチート能力をなぁ!」


 ややあって。

 サブローは村へと帰還を果たした。


 村の通りには、若い女達がわきあいあいと話し合いながら歩いている。


「おらぁ……! 村長が帰ってきたぞぉ……! 出迎えろ雌豚どもぉ……!」


 ……愚かにも、サブローはまだ、女達が支配下にあると思ってしまっていた。


「……なにあれ」「……気色悪っ」


 ざわざわ……と村の女達が、サブローに嫌悪のまなざしを向けてくる。


 ……それは、元いた世界で散々浴びせられたもの。


「ど、どうしたおまえらぁ……! なにこそこそしてるんだぁ……! 早くもてなせぼけなすがぁ!」


 近くにいた女の元へと、サブローが近づく。


「……キモいんですけど」

「なっ!?」


 ドンッ、と突き飛ばされる。


「マジキモい、なにこれ人間?」

「きっしょ、豚かよ」


 女達の顔には、明確な侮蔑の表情が浮かんでいる。


「ど、どういうことだっ!? ま、まさか洗脳が解けたのか……!?」

 

 その通りだった。

 勇者エレンは、あのあと村に掛かっていたサブローの媚薬による洗脳を解いていたのである。


「あの勇者がやったのか!? ちくしょー! 余計なことしやがってぇ!」


 洗脳の解けた村人達が、サブローの元へと集まってくる。


「まあいい! また新たに拙者の性奴隷に変えればいいだけのことぉ! ゆけー! 拙者自慢の触手たーーーーーーーん!」


 しーん……。


「なっ、なぜだぁ!? 触手ぅ! なぜ動かないぃいいいいいい!?」


 尾てい骨からぶら下がっている触手は、力を失ったようにぶら下がったままだ。


「マジきしょい」

「つーかこいつ……もしかしてサブローとかいう豚じゃね……?」


 村人がサブローの顔を見て言う。


「うっわ、たしかによく見るとあの豚だわ」

「火傷でわかりにくかったけど、たしかにそうだわ」


 村人達の顔が、軽蔑から憤怒へと変わる。

 そう、今まで村人は、サブローを認識していなかったのだ。


 さもありなん。

 今の彼は、もとより醜い容姿に加えて、火傷によるダメージを負っていた。


 ひふがただれ、数日風呂に入っていないせいで、気づかれなかったのである。


「くそっ! くそっ! 触手! 動けよぉ……!」


 と、そのときだった。


 ガツンッ! と誰かがサブローの後頭部を殴ったのだ。


「痛え! な、なにするんだぁ……!?」


 そこにいたのは若い女ではなかった。


「てめえ……よくもおれたちの女にひでえことしやがったな……!」


「げえ……! お、おまえら!?」


 元々この村にいた男衆だ。

 サブローが捕まえて、魔物ひしめく森の中に、放り込んだはずである。


「どうしてここにいる!?」

「エレン様が我々も助けて、解放してくださったんだ!」


 村の男達が怒りの表情を浮かべ、サブローに近づいてくる。


「よくもおれの嫁に!」「恋人に!」「「ひでえことしてくれたなぁ、この醜い豚野郎!」」


 男達からは怒鳴られ、女達からは蔑まれる。

 ……サブローの、蓋をしていた記憶が蘇る。


 高校時代、彼はクラス内のカースト最下位にいた。


 陽キャ男子たちからはいじめられ、女子たちからは豚と気持ち悪がられた。


「い、いやぁああああああああああ!」


 トラウマが蘇り、サブローは半狂乱になって叫ぶ。


「触手ぅ! 触手ぅうう! こいつらを皆殺しにしろおぉ!」


 だがいくら命令しても、女神から与えられたチート触手は反応を示さない。


 ……さもありなん。

 スキルの使用権限を剥奪されているからだ。


「拙者は! 拙者は生まれ変わったんだ! もうあの頃の豚じゃないんだ! 触手! そうだろぉ!」


「うるせえよ!」


 ガンッ! と村の男に蹴飛ばされる。


「よくもおれの女に手を出したなクソ豚!」

「許されると思ってるのかこのカス!」


 ドガッ! ボゴッ! とサブローは村の男達に袋だたきにされる。


「げほっ! ごほっ! な、なんでだぁ……どうしてこっちの世界でも……こんなことされなきゃいけないんだよぉ~……がはっ!」


 涙を流しながら、サブローが情けない声を上げる。


「夢の異世界に来て、やり直せると思ったのに……チクショウ……ちくしょぉお……」


 ……ややあって。


 ボロ雑巾になったサブローは、村の外に放り出される。


「二度来るんじゃねえぞゴミカス」

「次この村に手を出してみろ? エレン様に報告しておまえを滅してもらうからな」


 ぺっ……! と村の男どもにつばを吐きつけられた。


 しばらく、サブローは1人、森の中で涙を流す。


「ちきしょぉ……ひどすぎる……なんて、ひどい仕打ちだ……」


 ふらふらと立ち上がって、森の中をさまよい歩く。


「異世界に来てやり直すつもりが……力を奪われて、ボコボコにされる……こんな異世界転生……間違ってる……」


 ぐすぐす……と涙を流しながら、痛む体を引きずって進む。


「どうなってるんだよ……異世界ここは、主人公せっしゃにとって都合のいい世界のはずだろぉ……くそ、こんなの、おかしいよぉ……」


 と、そのときだった。


「あの……もしもし、大丈夫ですか……?」


 誰かが、サブローに声をかけてきた。

 声のした方を見ると、銀髪で幼女のシスターがいた。


「ぐふっ……♡ きた……きたきたきたぁあああああああああああ!」


 シスターは不安げな表情で、サブローに近づいてくる。


「そうだよ! 現実やるじゃん! こういうこと! ピンチの主人公の元に訪れるかわいいヒロインに癒される! そういう展開を待っているわけなんだよぉお!」


 血走った目で、サブローはシスターの肩を掴む。


「きゃっ」

「さぁお嬢ちゃんぅうううう……! せ、拙者の傷を癒してくれるかぁああい?」


「そこまでだ、悪魔」


 ザシュッ……! 


「………………へ?」


 ボトッ、とサブローの腕が切り落とされる。


「あ、あぁあああああああ!? 腕が! せ、拙者の腕がぁあああああああああ!」


 切断された右腕から、激しく血が吹き出る。


「【マリアベール様】、お怪我はありませんか?」


 銀髪幼女のとなりに、白装束の騎士が立っていた。


「【マルコー】。はい、大丈夫です」


 マリアベールは、騎士に微笑みかける。


「貴様、この御方をどなたと心得る? 恐れ多くも神聖皇国の大司教【聖少女マリアベール】様であらせられるぞッ!」


「し、神聖皇国……だって!? あの、悪魔狩りで有名な……!」


 この世界にある国家の1つだ。

 宗教国家であり、神とその被造物である人間以外、すべて敵と見なす恐ろしい国家だと……聞いたことがあった。


「数日前、近隣の村がタコの悪魔に襲われていると聞いてな。駆けつけてみるがもぬけの殻。さて帰ろうとした矢先に……見つけたぞ、タコの悪魔」


 マルコーが説明する。


 どうやら神聖皇国の聖なる騎士たちは、もともとサブローを討伐するべく、皇国からやってきたところらしかった。


「マリアベール様、こやつは悪魔です。【浄化】が必要と判断します」


「そうですね、わかりました。マルコー、みなさん、彼を捕らえなさい」


 幼女の後ろに控えていた聖騎士たちが、サブローを取り囲む。


 凄まじい早さで四肢を切り飛ばし、動けなくする。


「うぎゃぁあああああ! なんてことするんだぁあああああああ! せ、拙者は! 拙者は人間だぞぉおおおお!」


 マルコーはフンッ……! と鼻を鳴らし、嫌悪感丸出しにして言う。


「貴様の、どこが人間だというのだ。ぶくぶくに太り、皮膚はただれ。目は欲望で濁りきっている。異能で女の心を操ったときくぞ。……まったく、おぞましいことこの上ない!」


「そ、そんな……」


 タコの触手よりも、もともとの容姿と、そして自分の行いに対しておぞましいと断じられ、ショックを受けるサブロー。


「貴様の醜い心が悪魔の温床となったのだ! しかし、我らが聖少女は寛容であらせる」


 銀髪幼女シスターは微笑みながら、サブローの前に佇立する。


「あなたに、救いあれ」


 まるで母のように、優しい笑みを向ける。

 焼けただれた両の頬を、手で包んでくれる。


「お、おお……聖少女様……拙者を……許してくれるのですか……?」


 ニコッと、彼女が笑う。


「いいえ、許しません」

「……………………え?」


 そのときだった。


 ボッ……! とサブローの体が、突如として燃えだしたのだ。


「うぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああ!」


 業火に焼かれ、サブローは悶え苦しむ。

 勇者エレンは、手加減をしていた。


 悪人とはいえ人は人。

 ゆえにサブローが死なないように配慮していた。


 だが、この炎は違う。

 確実に、サブローを滅しようと、一切の手加減なく焼いてくる。


「なんでぇええええええ!? なあぁんでぇえええええええええ!?」


「あなたの体は欲望という名の悪魔にとらわれてしまっていました。だから炎で肉体を焼き払い、その魂を悪魔から救済してあげるのです」


「うぎゃぁあああああああああ!」


 激しい炎に焼かれ、肉も骨も炭化していく。


「悔い改めなさい。悪魔はあなたの肥大した欲望を糧として生まれたのです。灰になり、塵となり、天に召され……そして生まれ変わるのです。まっとうな人間に」


「拙者はぁああああああ! 人間だぁあああああああああああああああ!」


 幼女に腕を伸ばす、だが彼女はニコッと笑って言う。


「あなたみたいな心の醜い人間、この世にいるわけないでしょう?」


「うぎゃぁあああああああああ!」


 激しい炎に飲まれて、サブローは燃えかすとなった。


「これで彼の魂も浄化されたことでしょう」


「さすがマリアベール様! ……しかし村を救ったという勇者の少年は、いずこへ行ったのでしょうか?」


 マルコーが首をかしげる。

 一方で、マリアベールは頬を赤く染めていう。


「悪鬼から無償で人を助ける、なんて素敵な御方なのでしょう……勇者様……♡ ぜひ、お会いしたいです」


========

よしよし、上手いことあの豚を処分できたね。


神聖皇国の聖騎士たちが向かっているのがわかってたからね、彼らを誘導して、うまく引き合わせることができたよ。


しかし聖少女、それに聖騎士か。

まあエレンに好意的なようだし許してあげるけど、もしも楯突くようなら……どんな相手だろうと容赦しないからね?


========

【※お知らせ】


新作の短編、書きました!

時間がある方はぜひ読んでみてくださいー!


※タイトル

「宮廷【獣医】、国外追放のち獣の国で幸せになる~森で会った神獣を治療したら、臣下のケモ耳少女たちから好待遇で雇われました。え?動物たちが言うことを聞かないから帰ってこい?いやちょっと無理ですね」


※URL

https://ncode.syosetu.com/n0216go/


広告下にもリンク貼ってあります!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] カースト再開 って…
[良い点] 神聖皇国の聖騎士に世直し旅口上取られちゃった(笑) エルフのティナともめなきゃいいけど。 [気になる点] 誤字報告です、ごめんなさい ・高校時代、彼はクラス内のカースト再会に→最下位に ・…
[一言] 次はハジメか。
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