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114話 女だけの村



 ぼくたちは世直しの旅に出発した。


 ある日のこと。

 ぼくらが森にさしかかると、神狼フェンリルのランが鼻をひくつかせる。


『若様、血と魔物の匂いでございます』

「了解! 急ごう!」


 現場へとぼくらは駆け足で向かう。


 すると森の中で、小さな女の子が、数体の魔物に囲まれていた。


『グレー・エイプですね。Bランク程度の雑魚モンスターです』


 灰色の毛のサルが女の子を襲おうとしている。


「待て!」


 ぼくはそいつらの前へと向かう。

 サルたちはぼくを見やると、ぎょっ……! と目をむいて逃げ出した。


「すごい……モンスターが逃げていくわ」

「アタシが隠蔽魔法をかけていても、野生の勘でエレンがヤバいってことを悟ったのね。さすがエレンね」


 アスナさん達が感心したようにうなずく。


 ぼくは倒れている女の子に近づく。


「…………」


 10歳くらいの女の子だ。

 ビクッ! とぼくを見るなり体を硬直させる。


「……女の、子?」


 だがすぐに彼女はぼくを見やると、ホッ、と安堵の吐息をつく。


「あ、あはは……」


 童顔だから結構女の子に間違えられやすいんだよね……。

 まあ警戒心を解いてくれたからいいけど。


 その後ぼくは素早く治療を行う。


「……ありがと」

「どういたしまして。君、名前は?」


「……【イチゴ】」

「イチゴちゃんか。どうしてこんな森の中にひとりでいたの? 両親は?」


 ふるふる、とイチゴちゃんは首を振る。

 たぶんぼくと一緒で、両親は死んでしまったのだろう。


「そっか……どこから来たの? 家まで送ろうか」


「いやっ……!」


 イチゴちゃんは強く首を振る。

 あまり感情を表に出さそうとしないこの子が、こんなにも強く拒絶するなんて。


 いったいどうしたんだろう……と思っていた、そのときだ。


「イチゴ! どこにいるの、イチゴー!?」


 木々をかき分けて、アスナさんと同い年くらいの女性がやってきた。


「……おねえちゃん」


 イチゴちゃんがぼそっとつぶやく。

 良かったぁ……天涯孤独じゃなくって!


「イチゴ! ああ良かった、こんなところにいたなんて! 魔物に襲われたらどうするの!?」


「……へーき。この人が追い払った」


 妹を心配してくれる優しいお姉さんとの再会。

 けれど……イチゴちゃんは、あんまり嬉しそうじゃなかった。


 どうしたんだろう?


「ありがとうございます! ぜひお礼をしたいので、【村】まできてください!」


「どうする?」


 ティナの問いかけに、ぼくはうなずく。


「せっかくだし、村によっていこう」


 別に休みたいからとかそういうのじゃない。

 イチゴちゃんの様子がなんだか変で、気になったからだ。


 その後、ぼくはイチゴちゃんのお姉ちゃんとともに、近くの村を訪れる。


 村はごくありふれた感じの見た目、なんだけど……。


「こんにちはー☆」「あらかわいいぼうやね」「やーん、ちょーかわいー!」


 村人達が、旅人であるぼくらを珍しがって声をかけてくる。


「なんだか女の子しかいないわね」

「しかもみーんな若い女ばっか」


 そう、その全てが10代くらいの子ばっかりなのだ。


 お年寄りや、男の人はまるで見かけない。

 どこにいるのだろう……?


「あの、どこへ向かっているのですか?」

「まずは村長様のお家にご案内いたします」


「村長も女なのかしら?」

「いいえ、素敵な殿方でございますよ……」


 ティナの質問に、お姉ちゃんはうっとりとした表情でつぶやく。


 なんだ、男の人もちゃんといるんだ……と安堵する。

 一方で、イチゴちゃんはさらに表情を暗くしていた。


 ……なにかあるのかな?


 しばらくして、ぼくたちは村長のお家にお呼ばれする。


 村の中で一際大きな屋敷だった。


 畳の大きな部屋に通された、のだけど……。


「でゅ、でゅふふふっ! よ、よよく来たねぐふふふ♡」


 村長は太って、眼鏡をかけた男の人だった。


「……うげー、オークみたい」

「……てぃ、ティナっ。だめでしょそんなこといっちゃっ」


 アスナさん達の反応は良くなかった。

 一方で村長は彼女たちを見ると、じゅるりと舌なめずりする。


「……でゅ、でゅふふっ♡ いい、きみらとってもいいよ……♡ あとでせ、拙者のものになると思うと……でゅふふふふっ♡」


 早口で何かを言っていたけど、小さくて聞き取れなかった。


「村長様、この御方はイチゴを助けてくださりました。ぜひとも歓待したく存じます」


「い、いいんじゃないかな。拙者はいっこうにかまわんよ。お客人、裏に温泉があるから浸かるといいですよぬるふふふこぽぉ……!」


「あ、ありがとうございます……」


 どうにも村長さんのテンションに、ついていけない。

 終始イチゴちゃんは暗いまま、一方でお姉ちゃんはそんな村長さんにしなだれかかっていた。


「さ、さぁ彼らを案内してあげなさい」

「はーい♡ 村長様ぁ~♡」


 イチゴちゃんのお姉さんは、人前だというのに村長とき、キスしていた。


 わ、わわ……こ、恋人同士だったのかな。

 でも……イチゴちゃん、辛そう。


 ややあって。


 ぼくは脱衣所へとやってきた。


「イチゴちゃん、どうしたんだろう……聞き出すタイミングがあればいんだけど……」


 すると、がらり、と脱衣所のドアが開く。

 ぼくが服を脱ぎかけていると、小さな女の子が入ってくる。


「わわっ! ど、どうしたの……イチゴちゃん?」


「……逃げて」


「え……?」


 ぐいっ、とイチゴちゃんがぼくの手を引っ張る。


「……この村は、おかしい。みんな、村長におかしくされてるの」


「村長に……おかしく? いったい、どういうことだい?」


 と、そのときだった。


 バリンッ……! と脱衣所の壁が突如として破壊される。


 入ってきたのは、何か巨大な、黒くてぬめり気のあるものだった。


「ひっ……! に、にげ……きゃああ!」


 イチゴちゃんはその黒い何かに胴体をまかれて、突如として消え去った。


「大変だ!」


 ぼくは空いた穴から外に出る。

 露天風呂になっているそこのおくに、村長がいた。


「でゅふ、だめでしょうイチゴ氏~。村の秘密をしゃべっちゃ~……♡」


 村長の背後からは、巨大な黒いタコの触手が、何本も生えていた。


 イチゴちゃんは体中に触手をまかれている。


「いや……いや……!」

「その子を離せ!」


 バッ、とぼくは手を伸ばす。

 火矢を放とうとすると、村長がパチン、と指を鳴らす。


 ぞろぞろ……と村の女性達が、露天風呂へとやってきた。


 しかも、みんな全裸だった。


「なっ!?」

「でゅふっ♡ 良い眺めだろうぉ? これぞ桃源郷、眼福ですなぁぬほほほほほっ♡」


 村人達は裸体を男の前にさらしているというのに、みんなうれしそうだった。


『エレンよ、この者らは操られているようじゃぞ』


「何をしたっ!?」


 タコの触手がぬるりと伸びて、女性達の体をなで回す。


「拙者の触手に含まれると、特殊な粘液の効果でゅふっ♡ 強い媚薬となっており、皮膚から摂取するだけでせ、拙者の愛の奴隷になるという寸法でござるよぉぬほほほっ、こぽぉ……!」


 村の女性達は、みんな喜んでタコの触手に頬ずりしている。


「お姉ちゃん……! 目を覚ましてよ!」


 イチゴちゃんが悲痛なる叫び声を上げる。

 だがお姉ちゃんはイチゴちゃんを無視して、触手を舐めていた。


「せ、拙者ロリコンの気はないでござる。いずれ美人になるまで待とうと思ったけど……余計な口にはぶっといこの触手を突っ込んで肉人形にしてあげようかしらぬほほほっ!」


「いや……たすけ、て……」


 ぼくはギリッ、と歯がみする。


「……人の心をもてあそびやがって! 最低だぞ!」


「ふんっ! なにが最低だ。この子達は自分で進んで拙者に身を捧げてるんだぞぉ?」


「ふざけるな! 媚薬で洗脳しているだけじゃないか! 許せない……ぼくは、絶対に許さない!」


「ふ、ふんっ! ガキが。拙者を怒らすとどうなるか思い知らせてやるでござーる! ゆけ! 拙者の女ども! あのガキを捕まえろ!」


 村の女性達が、いっせいにぼく向かって走ってくる。


「ぬほっ! どうだぁ、女を切れるか? 

殺せるかぁ~?」


 村人を操ってぼくを引っ捕らえようとしているのだろう。


 なんて……なんて卑劣なんだ!


「待ってて、すぐに目を覚ませてあげる!」 


「でゅふっ! 無理無理~。拙者の触手が分泌する毒は、拙者にしか絶対に解毒できない転生者の強力なチート能力! 解除できるわけがあないのだぁ!」


 ぼくは不死鳥の翼を生やして、その場からジャンプ。


 女性達がぼくの足下で集まっている。


 バサッ……! と翼を羽ばたかせる。

 炎の羽が彼女らに降り注ぐ。


 くらり……と彼女たちはその場で崩れ落ちる。


「お、おい! なにをしたっ!? なにをしたのだー!?」


「呪いを解いただけだ!」



 ちょうどそのとき、眠っていた村人達が立ち上がる。


「う、うう……ここは……?」「あたしたち、いったいなにを……?」


 目覚めた村人達に、村長が叫ぶ。


「おい何グズグズしてるんだ雌豚ども! さっさとそのガキを捕まえろ!」


 だが……。


「は? なんであんたの言うことなんて、聞かなきゃいけないわけ?」


 村人の一人が、村長に向かって蔑んだ目を向ける。


「つーか、キモっ」

「なにあれ、オーク?」

「やだぁ、ちょーぶっさいくぅ~」


 どうやら洗脳が溶けたようだ。


「そ、そんなばかなぁ!? 拙者の毒がなぜ!?」


『バカめ。エレンの癒やしの炎は、この程度の毒くらい解除可能なほど強力なのだ。さすがはエレン、見事じゃよ』


「おねえちゃん! 逃げてっ!」


 イチゴちゃんのお姉ちゃんが、とらわれの妹に気づく。


「イチゴ!? イチゴー!」


 お姉ちゃんが妹へと駆け寄ろうとする。


「く、くそぉお! まあいい! またおまえらを毒で洗脳すればいいだけのことー!」


 ずぉ……! と村長が触手をのばし、お姉ちゃんと、そしてぼくに向かって伸ばしてくる。


「【不死鳥の羽撃フェニックス・ブロウ】!」


 翼をはばたかせ、炎を発せさせる。

 それは大量に襲いかかる触手だけを焼き殺す。


「うげぇああああああああああああ!」


 触手が焼かれ、イチゴちゃんが落ちる。

 彼女をぼくは空中でキャッチ。


「大丈夫かい?」

「う、うん!」


 やっと、イチゴちゃんは笑顔を見せてくれた。良かった……。


 ぼくはイチゴちゃんを連れて、お姉ちゃんの元へ向かう。


「イチゴ! ごめん、ごめんねぇ!」

「おねえちゃん! よかったー!」


 ふたりが笑顔で抱き合っているのをみて、ぼくは満足だった。


「どこのどなたが存じませんが、どうもありがとうございました!」

「ありがとー!」


========

ふふっ♡ いやぁ、やっぱりエレンは凄い! 転生者なんて相手じゃないよ!


今回僕なんにもしてないし、神子として、勇者としての力は日に日に増してるようだね。うんうん、素晴らしいことだ!


……さて、醜くこんがり焼かれた豚こと村長サブローくんには、ペナルティをちゃあんと与えてあげないとね。


========

【※お知らせ】


新作の短編、書きました!

時間がある方はぜひ読んでみてくださいー!


※タイトル

「宮廷【獣医】、国外追放のち獣の国で幸せになる~森で会った神獣を治療したら、臣下のケモ耳少女たちから好待遇で雇われました。え?動物たちが言うことを聞かないから帰ってこい?いやちょっと無理ですね」


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[良い点] 感想が面白い(笑)もちろん悪い意味で(笑)(笑) [気になる点] 人様の作品内容をパクってるみたいだが恥ずかしくないの?
[気になる点] すみません誤字報告です。 ・けれど……イチゴちゃんは、あんまり憂いそうじゃなかった。→あんまり嬉しそうじゃなかった [一言] 「世直し旅の旅」って見事に公言しましたな。 ランとカレンも…
[一言] 魅了魔法殺すべし慈悲はない
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