chapter Ⅰ
この作品は、おじ様×おじ様の初カプのシチュエーションになります。
書いてみて思ったのが、おじ様カプだと私好みな切ないシーンがふんだんに使えるのだなと。
とはいえ、まだまだ未熟な文章ですしシチュエーションですが(ノД`)。
拙作でもご覧いただいてお楽しみくだされば幸いです。
――うろこ雲が幾重にも繋がり、果てしない青の空に浮かび上がっている。
広大なハミルトン城の庭園に色づいている、『いろは楓』にホースの柄を伸ばし、千種 紅緒は空を見上げながらほうっとため息をついた。
今日も空が高い。
手を伸ばしても届かない空はまるで紅緒が三十年間引き摺っている恋心と同じようだ……。
それでも紅緒は今日も、片想いをしている彼のために健気にも仕事を全うする。
紅緒の仕事は、父の代から引き継がれている庭師だ。
家族は三人。
紅緒の父親は日本人で、外国の庭について勉学のため、このイギリスにやって来た。そしてイギリス人の母親と恋に落ち、紅緒が生まれた。
おかげで紅緒の父親はちょっとした勉学のためにイギリスに在住していたのだが、こちらに国籍を移し、今ではすっかりイギリス人だ。
その父親はこの土地に腰を下ろしてもやはり庭師の職に就き、ひょんなことから五等爵の第三位の伯爵家の目に止まったのが、紅緒の恋のきっかけでもある。
紅緒の恋した相手は、千種家を専属の庭師として迎え入れてくれたハミルトン家の嫡男、ティボールトだ。
彼はとてもハンサムで、流石は外国人というだけのことはあり、日本人の血を持つ紅緒よりもずっと背が高い。均衡のとれた身体は四十二を過ぎた年齢でもまったく衰えていない引き締まった肉体とすらりとした長い足。麦畑を思わせる流れるようなブロンドは襟足までに切りそろえられ、清潔感がある。
紅緒が特に好きなのが、澄み切った空の蒼をした目だ。普段は鋭い双眸をしているが、ひとたび笑うと目尻には年相応の小皺が浮かぶ。優しく穏やかな表情へと変化するのだ。
茶色い目に髪。もやしのようにただ痩せ細っているだけの自分とはまったく違う。
ティボールトへの恋心は年を重ねるに連れて肥大する一方で、たとえ彼に愛する妻が現れても紅緒の恋に終止符はやって来なかった。
そして彼への執着は増していく。
まさかそれが原因でとは思わないが、彼の妻であるシャーリーンは結婚後八年目に他界した。
二人は子宝に恵まれず、シャーリーンの死から二年が経った今でもティボールトの胸には彼女への想いが締めている。
もともと笑顔を滅多に見せることがなかった彼だが、今ではすっかり笑わなくなった。
その彼に自分がしてやれることといえば、生前シャーリーンが好きだった楓の木々たちを守ることだけだ。
そして今日も紅緒はティボールトを喜ばせたくて彼の最愛の妻が好きないろは楓を守るため、こうして胸が張り裂けそうになる気持ちを押し殺し、仕事に精を出すのである。




