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コク旨〜!黄世界《キセカイ》転生!〜料理の才能ゼロな私が、聖獣(サバトラ猫)と究極のカレー作っちゃいます〜  作者: 水蕾(みらい)


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銀狼亭の目覚め、グレーゾーンの先へ

「コココッコー!!」


突然の大きな鳴き声で、郁乃はハッと目を覚ました。


見慣れない天井に自分が異なる世界に来たことを思い出す。今は何時だろうか?


まだ少し眠かったが、下からカタカタ音が聞こえたので身なりを整えて降りていく。カルも後ろをついてきた。


「あ! 郁乃お姉ちゃん、おはよう。早いね」


「おはよう。音が聞こえたから降りてきちゃったの。ルルちゃんこそ早いね」


「食堂まかされてるから準備がね、エヘヘ」


そこに、ふいに後ろに気配を感じてヒャッと驚いた。まだ眠かったせいもあったのだろう、気がつくのが遅れた。


「だめにゃ! こっそりパーソナルスペースに入るんじゃないにゃ。ふいに近づきすぎだにゃ!」


フスッとカルが鼻を鳴らし、クレームを入れる。


「パソ……なんだって……? ごめんごめん、びっくりさせて悪かったよ。しかし起きるのが早いな。コココの鳴き声で起きたくちだな。あの鳥の声は不必要にけたたましいからな」


とマルコがカラリと笑う。


その隣でシンが、静かに軽く頭を下げるような動作をしたように見えた。


(相変わらず無口な人だな……でもなんだか気になるんだよね……)


そこへ、ルルの母親のシナモンさんも出てきた。


「みなさん、おはようございます。朝食は早めに取りますか?」


「うむ、今日はギルドに頼まれた品物を早めに納めたいから、そうしてもらえるとありがたい。それと昨夜の宿代がまだだったな。先払いするところついうっかりして、申し訳ない。今ここで払ってもいいかな?」


(あっ……、私……、この世界のお金がない……!)


予想だにせず転生したので、持ち合わせがなく目が泳ぐ。


商人の勘で戸惑いを察したのか、


「全員分まとめて払うからな」


とマルコが言ってくれたおかげで、ホッと胸を撫でおろす。


「ありがとうございます。実はお金の持ち合わせがなくて……」


「そうなのかい。なら、これから先はどうするつもりだい? それに、その独特の格好も目立つよなぁ」


あらためて言われ、郁乃は自分の姿に視線を落とした。


(これから本当にどうしよう……それと、確かに……この姿はすごくこの世界で浮いてるよね……)


悩みが深まり郁乃が黙りこくったところをすかさずカルがフォローする。


「まずはリサーチにゃ! ギルドのある街に行って情報収集にゃ!」


「うん、まずは行ってから考えるとするか。しかし衣装はどうしたものかな」


と、マルコが腕を組んで考え込む。


「私の着古した服でよければ……見たところ背丈もほぼ同じだしきっと大丈夫だわ。譲るからあとで着てみるのはどうかしら?」


いつの間にかルルの姉のローリエさんが食堂に来ていた。試すと幸い体にあうようだったので、お言葉に甘えて譲ってもらった。素朴な麻のポンチョとロングスカートに着替え、この世界にどうにか馴染む姿になった。さらには替えの下着や、足元も目立つからと靴まで譲ってもらえることになり、とてもありがたかった。


さっそく着替えを済ませ、脱いだ衣類とスニーカーをカバンのメインスペースへ入れる段になって気がついた。吸い込まれるように収まっていく……マジックバッグ化しているのだ。マイボトルと木ベラはサイドポケットから、古書は背面ポケットから、ガラス瓶は小物ポケットから出し入れしていたので、メインスペースがこんな事になっているなんて今まで気づかなかった。おかげでパンパンに膨らむと思ったカバンが形状を保っている。これも【鈴蘭の祝福】の力に違いない。騒がれたくないので、この発見は胸に秘めておくことにした。


この先まだ不安だらけではあるけれど、ひとまずマルコとローリエさんの優しさに助けられ、次へ進む準備が整った。銀狼亭を立つ時は、クローブおじいさんと末娘のアニスちゃん、それに銀狼アルと白狼タエも加わり、総出で見送ってくれたのがとても嬉しかった。


そして今、ギルドの街の門の前に並んでいる。


「次! うむ。次、止まれ! よし! 次! 通れ!」


前にいた荷車と人が次々と門を通っていく。身分証のようなものをチェックしているようだった。


(私、身分証なんて持ってないよ……どうしよう……)


「止まれ!」


マルコの荷車の番になり、呼び止められる。


「ご苦労さん、マルコ、シン。例の荷物かな?」


門番とは見知った仲のようだ。


「役目だから、一応中を見させてもらうよ」


(ああ! 私が乗ってるのがばれちゃう……)


みかけはこの世界に馴染んだとは思うが、身分証を持っていないのが見つかるとまずいと思い、荷物の影にそっと身を潜めた。しかし、あっさりと見つけられてしまった。


「おいおい!女の子がいるじゃないか。それと小さな獣も」


「ああ、俺の姪とそいつのペットなんだ。初めて街に連れてきたんだが、入って問題ないよな?」


「うーん……、まあ、お前さんのことはよく知ってるし、間違いはないと思うが……、それじゃ特別に計らうとするか。そのかわり……な」


マルコが何か包みを渡したようだった。


よくわかってるじゃないかと門番がニヤリと笑う。


「それじゃ通っていいぞ! よし! 次!」


(ひゃぁぁぁ……、なんとかなったみたい)


「グレーゾーン突破、あっぱれにゃ!」


見ると、振り向いた御者台のマルコの手にカルが肉球をポンとハイタッチしていた。


「よし! それじゃ納品先の商業ギルドへ行くとするか。そこで身分証も作るといい。次からはドキドキしなくていいようにな! ふはははは……」


(もう、意地悪……。本当にドキドキだったよ……)


「マルコさん。色々と助けてくれてありがたいです。ありがとうございます」


(……シンさんも……ありがとう……)


ガタガタと進みだした荷車の中でカルを抱き、のどを撫でる。「ゴロゴロ」と鳴いているのを聞くと気持ちが落ち着くのだ。身分証を作れば、また一歩この世界に馴染めるに違いない。まだまだ不安は尽きないけれど、この仲間たちと一緒なら、きっと大丈夫。そう自分に思い聞かせるのだった。

最後までお読みいただきありがとうございました!


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引き続きよろしくお願いいたします。

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