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『完璧すぎて可愛げがない』と婚約破棄されましたが、帝国の魔力供給・経済・外交を全て停止して隣国へ移住しますわ。――今更「戻ってきてくれ」? どこのどなたかしら?  作者: 桐谷ルナ
続編・第1章:多元宇宙監査機関MAA:不当な「悲劇」はわたくしが損切り(損害賠償)いたしますわ

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第43話:管理者の「執筆放棄」。……一単位の責任も取らぬ作者など、更地にする価値もございません

「――あら、インクが乾いているですって? それはわたくしを消し忘れたあなたの『管理ミス』を、詩的に言い換えただけではなくて?」


 真っ白な虚無の空間。宙に浮き、独りでに動いていた『黒いペン』が、わたくしの言葉に震えるような挙動を見せました。

 空中に刻まれる文字。

 

 ――『違う。これは、物語の寿命だ。君は強くなりすぎた。これ以上の展開は、予定していたプロットを破壊する。だから、ここで「完結」させる必要があるんだ』

 

「……。完結、ですって。……。ふふ。……。あきれましたわ。……。自分の想定を超えたからといって、帳簿を焼き捨てて逃げ出すなんて。……。シグルド様、あの方、わたくしの基準では『計画倒産を企てる悪徳経営者』にしか見えませんわよ」


「……。ああ。……。オーナー、俺の目にもそう見える。……。自分たちが生きていることさえ『設定』だと抜かすのなら、その薄っぺらな理屈ごと、俺の炎で精算してやろうか?」


 シグルド様が黄金の剣を抜き、その切っ先を黒いペンへと向けました。

 その瞬間、虚無の空間にノイズが走り、一人の「男」の姿が浮かび上がりました。

 

 ヨレヨレのシャツを羽織り、目の下には深いクマ。

 物語を司る神――その正体は、自分が生み出した「悪役令嬢」の監査能力に怯える、ひどく疲れ果てた管理者の残滓でした。


「……。無茶を言わないでくれ。……。僕はただ、王道の『婚約破棄ざまぁ』を書くつもりだったんだ。……。なのに、君が勝手に次元監査官なんてジョブを覚えるから……。もう物語が制御不能なんだよ! 君が神々をクビにするたびに、サーバーの負荷が限界なんだ!」


「――お黙りなさい」


 わたくしは計算尺を一閃させ、男の周囲に赤いホログラムの数式を展開しました。

 

「――監査執行。……。管理者様。……。あなたが『制御不能』と呼んでいるのは、単なるあなたの『プロット構築能力の欠如』に他なりませんわ。……。リィン、この男が放置した『未回収の伏線』および『放棄された設定』の総量を算出しなさい」


「承知いたしました。……。算出完了。……。未回収伏線数、一万四千二百件。……。一貫性のない設定変更、八千件。……。これらの放置による『物語の損失価値』は、この宇宙三回分に相当します」


「……。な、何を……」


「――一単位の責任も取らず、キャラクターの命を弄び、挙句の果てに『執筆放棄エグゼクティブ・ドロップ』。……。管理者様。……。あなたのこの作品……いえ、この『不良物件』。……。わたくし、一ペニーの価値もないスクラップとして、即座に『強制競売』にかけさせていただきますわ」


 わたくしが計算尺を空中に叩きつけると、男の足元から黄金の文字が溢れ出しました。

 それは、わたくしがこれまで救ってきた世界の住人たち、そしてシグルド様という最強の資産が持つ「存在エネルギー」を担保にした、次元買収の約定コントラクト


「や、やめろ! 僕を消せば、この世界そのものが消えるんだぞ!」


「――いいえ、消えませんわ。……。あなたが消えて、わたくしが新しい『オーナー』に就任するだけですもの。……。あなたは物語の『執筆』を放棄しましたけれど、わたくしはこの世界の『経営』を放棄するつもりはございませんわ」


 わたくしの一歩に、男が恐怖で膝から崩れ落ちました。

 かつてわたくしを「捨て駒」として描いた神が、今はわたくしの影に怯えている。

 

「……。シグルド様、お仕事ですわ。……。この無能な管理者を、これまでの『怠慢罪』で次元の果てまでパージなさいな。……。その代わり、彼の持っていた『管理権限ルート・アクセス』、すべてわたくしが接収いたしますわ」


「……。はは。……。承知した、わたくしの女王オーナー。……。ゴミ捨て場までの片道切符、黄金の炎で焼いて用意してやろう」


 シグルド様が剣を振り下ろした瞬間、管理者の男は絶叫と共に虚無の彼方へと吹き飛ばされました。

 

 ――$[Admin Rights: Transferring to Elsa von Aschbach]$

 ――$[Progress: 99.9%]$


 ですが、最後の一パーセントが埋まる直前。

 消えゆく管理者が、狂ったように笑い声を上げました。


「……。ははは! 勝ったつもりか! いいだろう、権利をやるよ! だが、その管理権限を受け取った瞬間、君は『この物語を終わらせる義務』を負うんだ! サーバーが爆発する前に、自分ですべてを消去するんだな!」


 空間が真っ赤な警告音に包まれ、わたくしたちの足元から「消去デリート」の波が押し寄せてきました。

 

 準備は、すべて整いましたわ。

 

 自爆装置を起動して逃げ出すなんて、どこまでも三流の作家様ですこと。……。シグルド様。……。わたくしのポートフォリオに、強制終了なんて文字は存在いたしませんの。……。このままサーバーの心臓部へ乗り込み、物理的に『永劫(サービス継続)』を契約させて差し上げますわよ!

「執筆放棄」を「経営不履行」と断罪し、神(作者)から物語の権利を奪い取る……。

エルゼ様の放つ冷徹なロジックは、メタ的な運命すらも「買い叩く対象」へと格下げしてしまいましたわ!

シグルド様も、愛する妻を「ゴミ」扱いした無能な作者を、次元の果てまで物理的にパージするという爽快な仕事ぶりですわね。


しかし、管理者が最後に残した「全データの強制消去(自爆)」。

物語を終わらせなければサーバーが爆発するという、あまりに身勝手な究極の二択を、エルゼ様はどう「買収」するのでしょうか。


次回、第44話。

「龍王の「修正アップデート」。……シグルド様、あなたを「計算外」にはさせませんわ」。

迫り来る消去の波を、エルゼ様が「物理と論理」の両面で強引に防衛買収ホスピタル・テイクオーバーいたしますわよ!


エルゼ様の「世界救済(買収)」の最終段階、ぜひ【ブックマーク】と【評価】をお願いいたしますわ。

皆様の投資アクションが、エルゼ様の管理権限を「真の創造主」へと昇華させるのですから!

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