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『完璧すぎて可愛げがない』と婚約破棄されましたが、帝国の魔力供給・経済・外交を全て停止して隣国へ移住しますわ。――今更「戻ってきてくれ」? どこのどなたかしら?  作者: 桐谷ルナ
続編・第1章:多元宇宙監査機関MAA:不当な「悲劇」はわたくしが損切り(損害賠償)いたしますわ

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第40話:監査執行:天上界。……神々の残り香ごと、スクラップ価格で買い叩きますわ

「――あら、醜いわね。敗北した部下たちを『原材料』に再利用して、さらに赤字を膨らませようなんて。マリア様、あなたの経営哲学には一単位の『尊厳』も含まれていらっしゃらないのかしら?」


 目の前で膨れ上がる、黒い泥の巨塊。

 それはかつて聖騎士だった者たちの成れの果て――いいえ、マリアによって『合体マージ』を強制された、意志なき負債の塊です。

 泥は絶叫を上げながら、空に浮かぶ「天上界」へと続く巨大な階段を形成し始めました。


「エルゼ……。こいつら、もう魂の形を保っていない。……。ただ、主の命令に従って世界を飲み込もうとする『プログラム』に成り下がっている。……。救いようがないな」


 シグルド様が黄金の剣を構え、その輝きで聖堂を侵食する闇を焼き払いました。

 ですが、わたくしは彼の腕を優しく制し、銀の計算尺を空に翳しました。


「――シグルド様、力でねじ伏せる必要はございませんわ。……。リィン、この『肉の階段』。……。建設業法違反、および不当な労働力統合につき、今この瞬間に『爆破解体デリート』を執行なさい」


「承知いたしました。……。対象の構造解析完了。……。結合係数、一〇〇パーセントからゼロへ強制書き換え。……。執行します」


 わたくしが指を鳴らした瞬間。

 あれほど禍々しくそそり立っていた泥の階段が、内側から弾けるように霧散しました。

 絶叫すら残さず、ただの無機質なデータへと還元されていく。……。マリアが築き上げた最後の防壁は、わたくしの監査尺の前では一単位の防御力も持ち合わせておりませんでした。


「……。さて、シグルド様。……。お待たせいたしましたわ。……。空中庭園の『取り壊し工事』、始めましょうか」


 わたくしたちは次元監査船アシュバッハ号の転送光に包まれ、一気に雲の上――「天上界」へと降り立ちました。

 

 そこは、白金と大理石で彩られた、嘘のように美しい庭園。

 中央の玉座には、慈愛の微笑みを……いいえ、恐怖に顔を歪ませた聖女マリアが座していました。


「き、来ないで! ここは選ばれた者だけが許される聖域! わたくしは、この世界のすべての魂の『母』になる者……!」


「母? ……。ふふ。……。あら、ずいぶんと勝手な自称ですわね。……。わたくしの帳簿によれば、あなたはただの『次元資源の不法占拠者』ですわよ」


 わたくしは一歩、また一歩と、豪華な絨毯を踏みしめて彼女に歩み寄りました。

 視界には、この天上界を維持するために他次元から掠め取られたエネルギーの「不当な収支」が、赤い警告音と共に溢れ出しています。


「マリア様。……。あなたのこの美しい庭園。……。その資材、すべて『盗品』ですわね。……。さらに言えば、この庭園を浮かせるための浮力エンジン……。これ、五百年前に破産した別の文明の遺物ジャンクを無断で流用していますわ。……。リィン、この天上界全体の資産価値を算出しなさい」


「解析完了。……。外見の装飾を剥げば、中身はただの『粗大ゴミ』です。……。解体費用を差し引けば、現在の市場価格は……マイナス二億ゴールド。……。一ペニーの価値もありません」


「な、なんですって!? わたくしの、わたくしの理想郷が……ゴミですって!?」


 マリアが玉座から転げ落ち、狂ったように叫びました。

 ですが、わたくしは容赦しません。

 計算尺をパチンと閉じ、冷徹な宣告を突きつけました。


「――準備はすべて整いましたわ。……。マリア様、本日を以て、あなたの『救済ビジネス』は永久停止。……。この天上界は、これよりわたくしが『スクラップ』として全量回収いたします」


「ひっ……! シ、シグルド様! あ、あなたなら分かってくださるはず! わたくしはただ、みんなが笑える世界を……!」


「――オーナーに縋るな、醜い女。……。お前が笑わせてきたのは、魂を抜かれた『操り人形』だけだ。……。俺の主が言う通り、お前には一単位の価値もない。……。消えろ」


 シグルド様が黄金の剣を一閃。

 それは彼女を斬るためではなく、天上界を浮かせていた「虚偽の魔法」を物理的に断ち切るための一撃。

 

 轟音。

 空に浮かんでいた白金の城が、悲鳴を上げて地上へと墜落し始めます。

 崩れ落ちる瓦礫、剥がれ落ちる白金のメッキ。

 中から現れたのは、マリアが隠していた、数え切れないほどの「魂の抜け殻」が詰まった巨大な貯蔵庫でした。


「……。あら。……。隠し資産(死体)がこんなに。……。これでは、情状酌量の余地もございませんわね」


 わたくしは、虚空へと消えゆくマリアを見下ろし、冷たく言い放ちました。

 

 ――[Audit Execution: Heavens Liquidated]

 

 落下する城の中。

 わたくしたちはアシュバッハ号へと帰還しました。

 

 ですが、城の深部が爆発した瞬間。

 瓦礫の中から、一冊の、古ぼけた「絵本」の断片が、風に乗ってわたくしの手元へと舞い込んできました。

 

「……? これは……」


 そこには、わたくしが幼少期に読んだはずの、あの「未完の物語」の続きが……。

 わたくしの知らない『数字』で、びっしりと書き込まれていました。


「……。あら。……。どうやらわたくしの監査業務、まだ『本丸』には到達していなかったようですわね」


 準備は、すべて整いましたわ。

 

 この全次元の帳簿を狂わせている、真の『作者オーナー』様。……。わたくしの計算尺、次はあなたの心臓システムを直接買い叩きに参りますわよ!

偽りの聖女マリア、失脚。

天上界という名の「負債の象徴」を、一単位の残さずスクラップとして更地にする。

エルゼ様の冷徹な監査は、今回も完璧な「黒字ざまぁ」を以て幕を閉じましたわ!

シグルド様も、愛する妻を冒涜しようとした「自称・聖女」をゴミのように切り捨て、その忠誠(と愛)を改めて証明してくれましたわね。


しかし、瓦礫の中から見つかった「絵本」の断片。

そこに記されていたのは、エルゼ様の能力、そしてこの世界の不条理の根源に関わる、おぞましい「真実の計算式」……。


次回、新章突入!

第41話「女王の帰還。……わたくしのポートフォリオに、許可なき『バグ』は存在させませんわ」。

エルゼ様、ついに自らの運命の「帳簿」を書き換えるため、次元の最果てへと舵を切ります!


エルゼ様の「真の正体」に期待してくださる投資家の皆様、ぜひ【ブックマーク】と【評価】をお願いいたしますわ。

皆様の投資アクションが、エルゼ様の計算尺を「神の領域」へとアップデートさせるのですから!

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