表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『完璧すぎて可愛げがない』と婚約破棄されましたが、帝国の魔力供給・経済・外交を全て停止して隣国へ移住しますわ。――今更「戻ってきてくれ」? どこのどなたかしら?  作者: 桐谷ルナ
続編・第1章:多元宇宙監査機関MAA:不当な「悲劇」はわたくしが損切り(損害賠償)いたしますわ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/91

第38話:福利厚生:次元旅行。……シグルド様、そんなに見つめられては演算が乱れますわ

「――あら。これが『救済された世界』の成れの果てかしら? 一単位の活気もなく、ただ甘ったるい香香アロマだけが充満している……。わたくしの基準では、ここは楽園ではなく『終末期のホスピス』に見えますわよ」


 次元監査船アシュバッハ号から降り立った先。

 そこは、空が淡いピンク色に染まり、人々が穏やかな笑みを浮かべて歌を歌っている、一見すれば平和そのものの宇宙でした。

 ですが、わたくしは鼻をつくような「合成された幸福」の匂いに、思わず扇子で顔を覆いました。


「……。エルゼ。……。ここはおかしいぞ。……。風が吹いていない。……。いや、魔力の流れが一定の『リズム』に強制されている。……。まるで、巨大な肺の中に閉じ込められているようだ」


 シグルド様が、わたくしの腰をしっかりと引き寄せ、黄金の瞳で周囲を警戒しました。

 彼の纏う龍の威圧感すら、この世界の不気味な「静寂」に吸い込まれていくようです。


「ええ、シグルド様。……。ここ、第三十八次元宇宙『ルミナ』。……。公式記録では、聖女マリアによって飢餓と戦争から救われた『奇跡の星』とされていますけれど……。わたくしの計算尺によれば、この世界の『存続コスト』、完全に他所から補填されていますわ」


 わたくしが銀の計算尺を空間に翳すと、平穏に暮らす住人たちの背後に、ドロドロとした赤い数値の羅列が浮かび上がりました。

 

「――お待ちください、異邦の監査官様!」


 白金に輝く法衣を纏った司祭が、わたくしたちの前に駆け寄ってきました。その表情には、狂信的なまでの歓喜が張り付いています。


「ここでは聖女様の『慈愛』によって、誰もが病から解き放たれ、永遠の安らぎを得ているのです! あの方の奇跡に、一体何の不備があると言うのですか!」


「……。奇跡? ……。ふふ。……。司祭様、あなた、その『奇跡』のランニングコストをご存知ありませんの?」


 わたくしは、近くで微笑んでいる老婆を指差しました。

 

「彼女、本来の寿命であれば三日前に絶命しているはずですわ。……。ですが、聖女マリアのシステムが、彼女の『魂の所有権』を担保に、他次元から奪ったエネルギーを無理やり注入インフレして生かしている。……。これ、延命措置ではなく『不良債権の先送り』ですわよ」


「な……っ、何を不敬なことを!」


「不敬なのは、あなたたちの会計感覚ですわ。……。ご覧なさい。……。この世界の住人の瞳が濁っているのは、魂が既に『空っぽの器』になっているから。……。聖女様は、彼らを救ったのではなく、自分を崇めるための『使い捨てのバッテリー』として再利用しているだけ。……。リィン、この世界の『減価償却費』を全住民分、即座に算出しなさい」


「承知いたしました。……。抽出完了。……。現在の負債総額は、この宇宙三回分に相当します」


 リィンの無機質な声が響くと同時に、わたくしの計算尺から放たれた青い波動が、街の中央にある「聖女の像」を直撃しました。

 すると、像から溢れていた「癒やしの光」が剥がれ落ち、中から現れたのは……。

 住人たちの生気を吸い取り、黒い煙を吐き出す、無骨な「次元吸い出しポンプ」でした。


「ひ……っ、聖女様の像が……!? あ、ありえない! これは天の恵みではなかったのか!?」


「――気付きましたか。……。一単位の救いもない、ただの『強制徴収』ですわ。……。シグルド様、わたくし、この不誠実な景観が我慢なりませんの。……。福利厚生の次元旅行、予定を変更して『不良資産の強制解体』に切り替えてよろしいかしら?」


「……。はは。……。ああ、望むところだ、エルゼ。……。お前が笑わない世界など、俺にとってはゴミ溜めと同じだ」


 シグルド様が黄金の剣を抜こうとした、その時。

 天から降り注いだのは、聖歌の調べ。

 空が割れ、そこから真っ白な甲冑に身を包んだ、翼を持つ騎士たちが次々と降臨しました。


『――不遜なる監査官よ。……。聖女様の庭を汚すノイズは、これより「聖なる清算」の対象とする。……。聖女直属、第一聖騎士団……推参』


「……。あら。……。ようやく現れましたわね、マリア様の『取り立て屋』たち。……。シグルド様、彼らの装備……オリハルコンの偽物メッキですわよ。……。一単位の容赦もなく、スクラップにして差し上げて?」


 準備は、すべて整いましたわ。

 

 偽りの救済を売る聖騎士様。……。わたくしの「愛」と「資本」の前に、そのメッキ剥げた正義がどこまで耐えられるか、じっくりと査定して差し上げますわよ!

「楽園」の正体は、魂の寿命を担保にした「自転車操業」の家畜小屋……。

エルゼ様の放つ会計学のメスが、聖女マリアの美しき「偽装工作」を容赦なく引き剥がしましたわ!

シグルド様も、愛する妻の不機嫌を察して、黄金の剣を抜く準備は万端のようですわね。


しかし、現れたのは聖女マリアの懐刀「第一聖騎士団」。

彼らの放つ「聖なる暴力」に対し、エルゼ様はどうやって「規約違反」を突きつけ、完封するのでしょうか。


次回、第39話。

「不当な信仰。……わたくしが欲しいのは祈りではなく、確かな「実績」ですの」。

シグルド様 vs 聖騎士団、次元を揺るがす「暴力の監査」が始まりますわよ!


エルゼ様の「再開ブースト」を応援してくださる投資家の皆様、ぜひ【ブックマーク】と【評価】をお願いいたしますわ。

皆様の投資(評価)こそが、エルゼ様の監査船に「対・聖騎士用」の最新兵装を実装させるのですから!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ