第36話:女王の初仕事。……無法な介入者には、一単位の慈悲も不要ですわ
「お待たせいたしましたわ、皆様。
一単位の狂いもなく、全次元のハッピーエンドを約定させたあの日から……少しばかり時間が経ちましたわね。
わたくし、エルゼ・フォン・アシュバッハ。
皆様の熱烈な投資(応援)のおかげで、わたくしの監査尺は再び、新たなる『不条理』を指し示しております。
完結後の余韻に浸っている暇などございませんわよ?
これから始まるのは、わたくしが手に入れた『完璧な世界』を脅かす、野蛮な侵略者たちへの徹底的な清算ですわ。
準備はすべて整いましたわ。……さあ、次元監査の第二幕、開演ですわよ」
「――誓いのキスを、一単位の遅延もなく遂行なさいな」
全次元の祝福を一身に浴びた、純白の聖堂。
わたくしは、愛しき旦那様――次元龍王シグルド様の首に腕を回し、至福の「確定申告」を行おうとしていました。
ですが。
触れ合う直前、わたくしの網膜に、あってはならない『ノイズ』が走りました。
――$[Warning: External Interference Detected. Illegal Data Inflow: 0.003%]$
「……あら。……わたくしのウェディングに、無断で『不純物』を混入させるなんて。……ずいぶんと礼儀知らずな客がいらっしゃったようですわね」
わたくしはシグルド様の胸を軽く押し、優雅に身を翻しました。
聖堂のステンドグラスが、内側からではなく「外側」の虚無から突き破られ、そこから黒い霧のようなものが溢れ出してきます。
「……チッ。……エルゼ、せっかくのいいところを。……この世界の『外側』から、俺の魔圧さえ無視して入り込んできた不届き者がいるらしいな」
シグルド様が黄金の瞳を細め、不快そうに牙を剥きました。
彼が指を弾くと、わたくしたちを囲んでいた祝福の花びらが、一瞬で鋭い「黄金の障壁」へと姿を変えます。
「ええ、シグルド様。……。ですが、ご安心なさい。……わたくしのポートフォリオに、許可なく『負債』を持ち込む輩は、一単位の例外もなく社会的……いえ、存在そのものを抹殺すると決めておりますの」
黒い霧の中から現れたのは、奇妙な服装をした者たちでした。
彼らは次元管理委員会の法衣ではなく、もっと野蛮で、けれど高度に洗練された「記号」を纏っています。
『――こちら次元開拓団、コード:ブラボー。……。未登録の「高密度エネルギー宇宙」を発見。……。原住民の抵抗を確認。……。これより「資源回収」を開始する』
彼らが掲げたのは、魔法の杖でも剣でもありません。
次元そのものを「圧縮」し、燃料として吸い取るための、おぞましい『吸引機』。
「資源回収、ですって? ……ふふ。……。笑わせないで。……。わたくしが心血を注いで黒字化させたこの宇宙を、勝手に『未登録の資源』と呼ぶなんて。……。あなた方のその傲慢、わたくしの基準では『不法占拠および強盗未遂』に該当しますわ」
わたくしはウェディングドレスの裾を大胆に裂き、ガーターベルトに仕込んでいた銀の計算尺を抜き放ちました。
――$[Audit Mode: Expanded Domain. Asset Protection Law Applied]$
「シグルド様。……。あの方々、わたくしたちの『新婚旅行予算』を勝手に削ろうとしているようですわ。……。一単位の慈悲も不要です。……。その身勝手な吸引機ごと、次元のゴミ箱へスクラップとして廃棄して差し上げて」
「……。了解だ、我が女王。……。新婚の初仕事が『不法投棄物の処理』とはな。……。だが、お前を怒らせた罪、万死に値すると教えてやろう!」
シグルド様が黄金の剣を振るった瞬間、聖堂を侵食していた黒い霧が、絶叫と共に消し飛ばされました。
ですが、これはまだ「予兆」に過ぎません。
わたくしの視界の端で、別の宇宙から続く『不当な導管』が、次々と接続されようとしています。
準備は、すべて整いましたわ。
全次元を買い叩いた女王の力を、知らぬ存ぜぬで済ませられると思わないことですわ。
わたくしの市場を荒らすノイズは、たとえ神の領域の外側から来た者だろうと、根こそぎ『強制清算』して差し上げますわよ!
再開第1話、お楽しみいただけましたかしら?
平和な結婚式を「資源回収」と称して邪魔する野蛮な侵略者たち……。
エルゼ様の怒りの計算尺が、再び次元の理を書き換え始めますわよ!
シグルド様も、新婚の邪魔をされて心底不機嫌なご様子。
彼らの圧倒的な「夫婦漫才(物理)」の再開ですわ!
次回、第37話。
「『慈愛』という名のマルチ商法。……その聖女、営業停止処分ですわね」。
侵略者たちの背後に潜む、不気味な「聖女」の正体とは……?
再開を祝して、ぜひ【ブックマーク】と【評価】をお願いいたしますわ。
皆様のその「投資」が、エルゼ様のウェディングドレスのクリーニング代……ではなく、新たなる監査の軍資金になるのですから!




