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『完璧すぎて可愛げがない』と婚約破棄されましたが、帝国の魔力供給・経済・外交を全て停止して隣国へ移住しますわ。――今更「戻ってきてくれ」? どこのどなたかしら?  作者: 桐谷ルナ
続編・第1章:多元宇宙監査機関MAA:不当な「悲劇」はわたくしが損切り(損害賠償)いたしますわ

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第34話:次元M&Aの罠。……敵対的買収には、毒薬条項(ポイズンピル)で対抗します

「……シグルド様? 起きてください。……っ、ふざけないで。わたくしの計算尺に、あなたの『存在消失』なんて、一単位も、一秒も……記録させないと言ったはずですわ!」


 膝を突いた黄金の龍王。その逞しい指先が、空気に溶ける氷のように透けていく。

 わたくしは、震える手でシグルド様の頬を包み込みました。かつてあれほど熱く、力強かった彼の鼓動が、次元の「容量制限(リソース不足)」という非情なシステムの前に、消えかかっています。


「……はは……エルゼ……。なんだ……泣いているのか……? そんな顔……君の美学に……反するだろ……」


「黙りなさい。……。泣いてなどいませんわ。……。これは、過剰な水分を排出して……脳の演算効率を上げているだけですの!」


 嘘ですわ。視界が歪んで、コンソールの数値が読めない。

 シグルド様という存在は、あまりに強大すぎました。彼をこの「ダークファンタジー世界」一ヶ所に留めておくためのコストが、世界の限界を超えてしまった。管理委員会の執行官アグニは、その「脆弱性」を突いてきたのです。


『――無意味だ、エルゼ。……。その「バグ」は、この世界の処理能力を食いつぶす癌細胞に過ぎない。……。今、彼を消去デリートしなければ、この世界そのものがサーバーダウンする。……。さあ、離れるがいい。……。それが最も合理的な「損切り」だ』


 空から降り注ぐ、執行官の冷徹な宣告。

 アグニが掲げた黄金の鎌が、無防備なシグルド様の首筋へと振り下ろされます。


「――損切り、ですって?」


 わたくしの喉の奥から、乾いた笑いが漏れました。

 ゆっくりと立ち上がり、アグニを……その背後にいる「次元管理委員会」という組織の傲慢を、燃えるような瞳で射抜きます。


「わたくしに『合理性』を語るなんて、一万年早くてよ。……。リィン! ネア! サトミ様! 全子会社の接続リンクを承認しなさい!」


「承認済みです、エルゼ様! ……。次元監査船アシュバッハ号、全エネルギーをバイパスします!」


 虚空に、わたくしがこれまでに「買収」してきた世界のホログラムが浮かび上がりました。

 第1部の帝国、第2部の学園ラブコメ世界。それぞれの世界を維持する演算リソースが、わたくしの計算尺を通じて、一本の太いラインへと収束していきます。


「アグニ様。……。わたくし、先ほどシグルド様という資産を、わたくしが保有する全世界の『共通インフラ』として再定義マージいたしましたわ。……。いわば、これは全次元を巻き込んだ『資産統合』ですの」


『な……っ、何を馬鹿なことを! そんなことをすれば、彼が消える時、君の所有する全世界が共倒れになるぞ!』


「ええ、その通りですわ。……。これこそが、わたくしの打った『毒薬条項ポイズンピル』。……。今、シグルド様を消去してみなさいな。……。その瞬間、わたくしの管理下にある全世界のサーバーが連鎖的に物理クラッシュし、あなた方の『次元市場』は二度と立ち直れないほどの致命的な大暴落を引き起こしますわよ?」


 アグニの鎌が、空中でピタリと止まりました。

 シグルド様一人を消すためのコストが、数千億の命と数多の世界の消滅という、委員会にとっても「許容できない損失」へと跳ね上がったのです。


「……。さあ、どうしましたの? ……。執行しなさいな。……。それとも、わたくしの提示した『和解案(買収提案)』、お聞きになる気になりまして?」


 わたくしは、シグルド様の透けかけた胸元に手を当て、自らの魔力を――いいえ、買収した全世界の「期待値」を流し込みました。

 

 ――$[Rebooting Subject: Sigurd]$

 ――$[Asset Status: Multi-Dimensional Entity]$


 シグルド様の身体に、再び黄金の輝きが戻ります。

 それは単なる一世界の住人としての輝きではありません。複数の物語を股にかける、文字通りの「次元龍」としての新生。


「……。ふぅ。……。ひどい女だな、エルゼ。……。俺の命を、そんな物騒な爆弾に変えるなんて」


 シグルド様が、力強い手でわたくしの腰を抱き寄せ、立ち上がりました。

 その黄金の瞳は、もはや眠気など一単位も残っていません。


「……。あら。……。わたくしの所有物ですもの。……。世界の一つや二つと無理心中させるくらいの価値、当然ありますわ」


「……。はは。……。ああ、光栄すぎて涙が出る。……。おい、執行官。……。お前のオーナーに伝えておけ。……。今この瞬間、俺たちの『敵対的買収』のターゲットは、お前たちの総本山……次元管理委員会そのものに切り替わったとな!」


 シグルド様が黄金の剣を抜き放ち、次元の壁を……委員会の本部へと続く「最短ルート」を、物理的にこじ開けました。

 

 準備は、すべて整いましたわ。

 

 次元管理委員会の皆様。……。わたくしの「愛」という名の不良債権、あなた方の古いシステムで、どこまで耐えられるか試して差し上げますわよ!

シグルド様の消滅という最大の危機を、「全世界の連鎖爆破ポイズンピル」というあまりに過激な経営判断で回避したエルゼ様。

「あなたを救うためなら、世界を道連れにする」。これこそが、エルゼ様流の究極の愛の形ですわね。


シグルド様も「次元龍」として再起動し、矛先はついに次元の最高意思決定機関へと向けられました。


次回、第35話(最終話)。

「監査完了:絶望の精算。……明日からの運営は、わたくしの規約に従っていただきます」。

全次元を買い叩く女王の、最後の一単位の狂いもない「精算ざまぁ」を見届けなさい!


エルゼ様の物語、いよいよグランドフィナーレですわ!

最後まで応援してくださる投資家の皆様、ぜひ【ブックマーク】と【評価】をお願いいたしますわ。

皆様の投資(評価)が、エルゼ様が全次元の頂点に立つための、最後の一押しになるのですから!

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