表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『完璧すぎて可愛げがない』と婚約破棄されましたが、帝国の魔力供給・経済・外交を全て停止して隣国へ移住しますわ。――今更「戻ってきてくれ」? どこのどなたかしら?  作者: 桐谷ルナ
続編・第1章:多元宇宙監査機関MAA:不当な「悲劇」はわたくしが損切り(損害賠償)いたしますわ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/76

第33話:龍王の「守備範囲」。……一単位の損害も出さないのが、わたくしの美学ですわ

「――天秤は釣り合わず、因果は清算される。……次元管理委員会・特別執行官『アグニ』。監査官エルゼ、君の存在そのものを、全次元のデータベースから削除パージする」


 空を覆う巨大な天秤から降臨したのは、顔のない黄金の鎧を纏った存在でした。

 彼が指を鳴らすと、世界から「色」が消え、空間そのものが砂のように崩れ去り始めます。それは物理攻撃などではなく、世界の「定義」を書き換える上位の権限。


「エルゼ……っ!」


 リリアナ様が悲鳴を上げ、勇者たちが剣を構えますが、彼らの武器は触れることもできずに光となって散りました。

 シグルド様が即座にわたくしを庇い、黄金の魔力で防御壁を張りますが、その壁さえも砂のように風化していきます。


「……ッ、この力は……! 魔法でも物理でもない、世界の『設定』そのものを食い破る性質か!」


 シグルド様の息が荒くなります。彼の肌に浮かぶ龍の紋章が、過負荷に耐えかねて嫌な音を立てていました。

 この空間において、彼の「最強」というスペックは、管理者の権限の前では「高負荷なエラー」として処理されようとしているのです。


「シグルド様、下がって。……この攻撃、力で受ける必要はありませんわ」


 わたくしは扇子で飛来する「削除の光」をそっと弾き返しました。

 光はわたくしの目の前でパチンと音を立てて消滅します。

 執行官アグニが、初めて驚愕に動きを止めました。


「――なぜだ。私の権限に干渉できるはずがない……!」


「権限? ふふ。……ベルフェ様から学びましたわ。この委員会とやらは、自らのルールすら守れない『無能な経営陣』ですのね」


 わたくしは計算尺で、空間に巨大な「次元雇用契約書」を投影しました。

 そこには、アグニたち執行官に適用されているはずの「業務規定」がびっしりと記されています。


「アグニ様。……。規定第七項第四条。『執行にあたっては、対象世界の知的財産権および、現地住民の生命資産を保護すること』。……。あなたは今、私を消すためにこの世界を砂に変えましたわね? ……。それは明らかな『契約違反』。……わたくしは今この瞬間、あなたたちの『法的な攻撃権』を、差止命令インジャンクションによって凍結いたしましたわ」


「な……ッ、法だの条項だの、そんなものは次元を超越する私には通用しない!」


「いいえ。……。このマルチバースの理を『物語』として定義したのはあなた方ですわ。……。物語である以上、そこには『因果の帳簿』が存在する。……。あなたが今の権限を行使し続ければ、あなたたちの組織の『信用格付け』は最低水準まで下落し、全次元のスポンサー(読者)からの支援が打ち切られますわよ?」


 わたくしは執行官の背後に漂う「組織の信用ログ」を、計算尺で赤く染め上げました。

 わたくしという「商品」を消そうとすれば、委員会そのものが「破綻」するという論理的ジレンマ。

 アグニの鎧が、自身の論理に耐えかねて亀裂を走らせます。


「……くっ、この狂った令嬢が……! ならば力ずくで……!」


「シグルド様。……。お時間ですわ」


 わたくしの指示と同時に、シグルド様が次元の壁を突き破る一撃を見舞いました。

 執行官の剣を、ただの「鞘」で叩き折り、黄金の魔力でその権限を一時的に麻痺させます。

 物理と論理の、完璧なダブル・コンボ。


「……はぁ……はぁ……。エルゼ。……。これで、どうだ」


 シグルド様が肩で息をしています。

 彼の背中から、先ほどまでの黄金の輝きがスッと消え、代わりに、まるで枯れ木のような白さが肌に広がっていました。

 

 ――$[Warning: Energy Storage Depleted. Critical System Failure]$

 わたくしの視界に、最悪の警告が点滅します。


「……シグルド様……?」


「……。ああ……。少し……。眠いな……。この世界、思った以上に『燃費』が悪い……。エルゼ……。俺、少しだけ……」


 巨大な黄金の龍王が、まるで壊れた人形のように膝をつきました。

 彼の手から、聖剣が音を立てて消滅します。

 執行官アグニが、好機とばかりに再び鎌を構える中、わたくしの手の中でシグルド様の肌が、透けるように薄くなっていく。


「……。シグルド様!? ……。ダメですわ、ダメですわよ! ……。わたくしの経営計画書に、あなたの退職(消滅)なんて一項目もございませんわ!」


 私の叫びも虚しく、彼の黄金の瞳がゆっくりと閉じられていきます。

 世界が、またしても不穏な音を立てて崩れようとしていました。

 守護者を失ったわたくしと、消えゆく最強の資産。

 

 ――$[System Message: All Assets Reset. The Final Audit begins]$

 

 準備は、まったく整っていませんわ。

 

 シグルド様。……。あなたを失うくらいなら、わたくしはこの全次元の株価を暴落させてでも、あなたを「買い戻して」差し上げますわよ!

次元執行官の攻撃を、法的手段で封じ込めるという離れ業!

エルゼ様の「ロジカル・防衛」は、もはや神の法廷ですら無力化してしまいましたわ。

しかし、その代償として、最強の盾であったシグルド様のエネルギーが限界を超えてしまいました。


黄金の鎧が色あせ、消えかけていくシグルド様。

エルゼ様にとって、計算を超えた唯一の「不確定要素」であり「最愛の資産」である彼を、消させたりするものですか!


次回、第34話。

「次元M&Aの罠。……敵対的買収には、毒薬条項ポイズンピルで対抗します」。

シグルド様の消滅を阻止するため、エルゼ様が全次元を巻き込んだ禁断の「資産統合」を敢行いたしますわ。


エルゼ様の「決死の買収劇」を見届けてくださる投資家の皆様、ぜひ【ブックマーク】と【評価】をお願いいたしますわ。

皆様の投資(評価)が、シグルド様の「魂の再起動リブート」に必要な、唯一の次元エネルギーになるのですから!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ