表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『完璧すぎて可愛げがない』と婚約破棄されましたが、帝国の魔力供給・経済・外交を全て停止して隣国へ移住しますわ。――今更「戻ってきてくれ」? どこのどなたかしら?  作者: 桐谷ルナ
続編・第1章:多元宇宙監査機関MAA:不当な「悲劇」はわたくしが損切り(損害賠償)いたしますわ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/91

第28話:「勇者ガシャ」の不正操作。……排出率〇%の希望なんて負債ですわ

「――チャリン、チャリン……五月蝿うるさいですわね。その安っぽいコインの音、わたくしの計算の邪魔ですわよ」


 魔王の玉座がスクラップと化した静寂の中、地下から響いてくる不快な音。

 わたくしは計算尺を閉じ、リィンに視線で指示を出しました。

 床に展開された魔法陣が、脈動するように七色に光り輝いています。ですが、その輝きは聖なるものではなく、射幸心を煽るための「毒」の色でした。


「エルゼ。……地下に、大量の『魂』が詰め込まれた箱がある。……そして、その箱が空くたびに、外側の奴らが歓喜している気配がするな」


 シグルド様が黄金の瞳を床へと向け、不快そうに牙を剥きました。

 龍の直感。それは、この世界のエネルギー循環が「博博ギャンブル」によって成り立っていることを正確に捉えていました。


『――おめでとうございます! 絶望の積み上げにより、召喚ポイントが満了しました! さあ、一%の希望を掴み取れ! レッツ、ブレイブ・召喚!』


 空虚な合成音声が響き渡ります。

 リリアナ様が、青ざめた顔で魔法陣を見つめていました。


「……これ、私たちが死ぬたびに、新しい『勇者』を呼ぶためのポイントが溜まってたの? ……私たちの命は、誰かの遊び(ガシャ)のチップだったっていうの……?」


「左様ですわ、リリアナ様。……不当な抱き合わせ販売、および確率の不透明性。……わたくし、このビジネスモデルを看過するほどお人好しではありませんの」


 わたくしは魔法陣の中央へと歩み寄り、計算尺を突き立てました。

 ――$[Audit Mode: Probability Analysis]$

 視界に溢れ出すのは、おぞましいほどに操作された乱数の羅列でした。


| 項目 | 表記確率 | 実効確率(実測値) | 補正要因 |

| :--- | :--- | :--- | :--- |

| **SSR 聖剣の勇者** | 1.0% | 0.0003% | 運営による「絞り」 |

| **SR 魔導の賢者** | 5.0% | 0.2% | 特定条件下でのみ排出 |

| **R 鉄屑の戦士** | 94.0% | 99.7997% | 在庫処分のための水増し |


「……あら、驚きましたわね。一%と謳いながら、実際には三万回に一回も当たらない計算。……これはもはや『確率』ではなく、『詐欺スキーム』と呼ぶべきものですわ」


 わたくしの指摘に、空間が激しく明滅し、管理者(ネアの元同僚のような影)が姿を現しました。


『――ふ、ふん。確率とはそういうものだ! 運が悪いだけだろう? 文句があるなら、当たるまで魂(課金)を注ぎ込めばいい!』


「運、ですか。……ふふ。……シグルド様。この不遜な管理者に、『物理的な乱数調整』というものを教えて差し上げて」


「……承知した、エルゼ。……要するに、その『当たり』が出るまで、この魔法陣を叩き壊し続ければいいんだな?」


 シグルド様が黄金の剣を逆手に持ち、魔法陣の「心臓部」へと突き立てました。

 凄まじい衝撃波。ですが、魔法陣は壊れるどころか、シグルド様の圧倒的な魔力を「コイン」と誤認し、猛烈な勢いで回転を始めました。


『――エラー! エラー! 異常な入金を検知! 一兆連ガチャを開始します!』


「――さて、管理者様。……これより、わたくしがこの祭壇の『在庫ボックス』をすべて差し押さえさせていただきます。……確率は、収束させるものではありません。……資本の力で、物理的に固定フィックスするものですわ!」


 わたくしは計算尺を最大まで引き伸ばし、召喚システムの「天井(保証)」をゼロに書き換えました。

 

$$P_{success} = 1 - (1 - p)^n$$


 通常、試行回数 $n$ を増やしても成功確率 $P$ は $1$ に漸近するのみ。……ですが、わたくしの監査は、この数式そのものを破壊します。

 わたくしが適用したパッチにより、成功確率 $p$ は強制的に $1$ へと固定されました。


「――全抜き(テイクオーバー)。……召喚された勇者たちを、わたくしの『人的資産』として一括計上いたしますわ!」


 光が溢れ出しました。

 虹色の光が、一度、十度、百度……数千回、数万回。

 魔法陣から、かつて絶望の中で死んでいったはずの「SSR勇者」たちが、実体を持って次々と吐き出されていきます。


「な……ななな、何をした! 在庫が、数百年分の景品が空になる!」


「あら、在庫処分をお手伝いしただけですわよ。……。リリアナ様、ご覧なさい。……。あなたの『死』をチップにして溜め込まれた資産、すべてわたくしたちが回収いたしましたわ」


 処刑場を埋め尽くす、伝説の武具を纏った勇者たちの軍勢。

 ですが……。

 現れた彼らの瞳には、感謝の光ではなく、システムに組み込まれたままの「狂気」と「戦意」が宿っていました。


「……エルゼ。……少しばかり、在庫の状態が悪いようだな。……。こいつら、自分たちが『解放された』ことに気づいていない。……。まだゲーム(殺し合い)の最中だと思っているぞ」


 勇者たちが剣を抜き、わたくしたちを囲みます。

 

 準備は、すべて整いましたわ。

 

 確率の次は、不良在庫(狂った勇者)の品質改善ですの?

 よろしいですわ。……。わたくしの経営方針に逆らう社員(勇者)には、一単位の猶予もない『再教育』を執行させていただきますわよ!

「確率」を資本でねじ伏せ、ボックスを全抜きする……。

エルゼ様の強引な買収により、ダークファンタジー世界を支配していた「ガシャ」の祭壇は崩壊いたしましたわ!

シグルド様の無限魔力が「コイン」代わりに使われるという、まさに規格外の攻略法ですわね。


しかし、吐き出された景品(勇者)たちは、長年の運営により心が壊れた「不良資産」……。

彼らをどうやって「使い物になる人材」へと更生させるのか、エルゼ様の手腕が問われます。


次回、第29話。

「魂の減価償却。……死ぬたびに価値が落ちることに気づきませんの?」。

狂った勇者たちを、エルゼ様が「資産価値」の観点から一喝。

真のハッピーエンドに向けた、地獄の社員研修が始まりますわよ!


エルゼ様の「全抜き・ざまぁ」にシビれた方は、ぜひ【ブックマーク】と【評価】をお願いいたしますわ。

皆様の投資(評価)が、エルゼ様の「確定排出」の権限をさらに強化するのですから!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ