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『完璧すぎて可愛げがない』と婚約破棄されましたが、帝国の魔力供給・経済・外交を全て停止して隣国へ移住しますわ。――今更「戻ってきてくれ」? どこのどなたかしら?  作者: 桐谷ルナ
続編・第1章:多元宇宙監査機関MAA:不当な「悲劇」はわたくしが損切り(損害賠償)いたしますわ

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第24話:物語の廃棄処分。……未完のハッピーエンドなんて、負債でしかありませんわ

「――お待ちになって。誰が勝手に『清算』を完了させていいと言いましたの?」


 視界を埋め尽くす真っ白な虚無。校舎も、夕日も、喧騒も、すべてが「無」へと還り、足元には剥き出しのグレーの格子模様――世界のソースコード――が広がる中、わたくしは計算尺を指揮棒のように振るいました。

 隣ではシグルド様が、消えゆこうとする空間のヘリを黄金の魔力で強引に繋ぎ止め、不敵な笑みを浮かべています。


「エルゼ、この『管理者』とやらは、負けが込むと盤面をひっくり返すタイプらしいな。……実に非効率で、かつ臆病な経営だ」


「左様ですわ、シグルド様。……管理者様、わたくしの査定では、今のあなたの行動は『計画倒産』という名の犯罪的背信行為ですわよ?」


 わたくしが虚空を睨むと、ノイズの中から少女の姿をした「神」が、涙目で姿を現しました。彼女の周囲には、ゴミ箱(削除フォルダ)に放り込まれようとしている物語の残骸が漂っています。


『うるさいわね……! もう無茶苦茶よ! メインヒロインは発狂し、ヒーローは再起不能。物語プロットとしての価値はゼロよ! 消すしかないじゃない!』


「……。価値がゼロ? ……。あら。……。一単位の市場調査もできないなんて、神を辞めて今すぐ再教育センターへ入りなさいな」


 わたくしは、空中を流れる「虚無のデータ」を指先で掴み取り、計算尺でその『真価』を解析しました。


「確かに、あなたの書いた『ラブコメ』としての価値はゴミ同然ですわ。ですが、わたくしが介入し、サトミ様が覚醒したことで生まれた『逆転劇』という名の新しい需要。……。そして、この崩壊しかけた世界の『土地(サーバー容量)』と『システム基盤』。……。これらを適切にリブランディングすれば、莫大な利益を生む『次元拠点』に生まれ変わりますのよ」


『な……何を言っているの……?』


「わたくしが、この破綻した世界を『一ゴールド』で買い叩いて差し上げますわ。……。ただし、条件がありますの。……。管理者様。あなたは本日を以て『神』を失職。……。わたくしの下で、この世界のメンテナンスを担当する『契約社員』として再雇用して差し上げます」


 わたくしは、虚空に燃えるような青い契約書を投影しました。

 それは、神としての権限をエルゼ・フォン・アシュバッハに譲渡し、以後、彼女の指示なしに一行のプロットも書き換えないことを誓う、奴隷契約……失礼、極めて合理的な業務委託契約です。


『……っ、ふざけないで! 私が、一介のキャラクターの部下になるなんて……!』


「――オーナーに口を答えするな。……。それとも、このまま消え去って、永遠の孤独(キャッシュ削除)を味わいたいか?」


 シグルド様が剣を彼女の喉元に突きつけました。龍の魔圧が、管理者の「存在」そのものを物理的に圧迫します。

 わたくしは追い打ちをかけるように、計算尺をパチンと弾きました。


「……。サトミ様。……。あなた、この世界の『新しいCEO』として、彼女を使いこなす自信はありますこと?」


 わたくしの背後で、消えゆく世界の中でも毅然と立っていたサトミ様が、力強く頷きました。


「……。はい、エルゼ様。……。私、自分の人生を誰かの書き置き(シナリオ)になんてさせない。……。この世界を、私が私らしくいられる場所に作り変えてみせます!」


 サトミ様の言葉。それが、物語の「住民の意志」として、世界のシステムに最終的な決定権ルートアクセスを与えました。

 

 観念した管理者が、震える手で青い契約書に触れました。

 その瞬間、真っ白だった虚無が激しく明滅し、再び色を取り戻し始めます。

 

 剥き出しだったグレーの格子模様に、サトミ様の意志に基づいた新しいテクスチャが上書きされていく。

 校舎はより頑丈に。空はより鮮やかに。

 そして何より、登場人物たちの頭上にあった不自由な「運命の糸」が、すべてわたくしの「管理ログ」へと統合されました。


「……。ふふ。……。買収完了クローズドですわ。……。サトミ様、おめでとうございます。本日を以て、あなたは『当て馬』から『世界の所有者』へと昇格いたしましたわ」


 元の姿に戻った屋上で、わたくしは優雅に一礼しました。

 目の前には、サトミ様と、すっかり毒気を抜かれて「……。お、お疲れ様です、社長……」と小声で呟く、元・神の少女。


「……。さて、シグルド様。……。一つの市場ジャンルを制圧したところで、次へ参りましょうか」


「……。ああ。……。ようやくこの世界の仕組みが分かってきたぞ。……。次も、君の横で剣を振るうのが楽しみだ」


 わたくしの視界に、新しいノイズが走りました。

 ――$[Search Initiated. Target Genre: Grimdark Fantasy / Gacha Game World]$

 ――$[Investment Opportunity: High. Misery Rate: 99%]$


 準備は、すべて整いましたわ。

 

 次の世界の皆様。……。不条理に泣き、悲劇に酔いしれている暇などございませんわよ。

 わたくしの監査、一単位の逃げ場もなく、すぐそこまで迫っておりますわ!

「神」を契約社員として再雇用し、世界そのものを買収する。

第2部・学園ラブコメ編、これにて完璧な「再建」を以て幕引きですわ!

サトミ様は自分の人生のオーナーとなり、エルゼ様は多元宇宙を跨ぐ「超巨大企業」への第一歩を踏み出しました。


シグルド様も、現代世界の物理法則(と焼きそば)に慣れてきたようで、コンビとしての連携ももはや神の次元ですわね。


さて、次回からはいよいよ新章突入!

第25話「次なる監査対象は――。……あら、『ホラーの世界』はコスパが悪そうですわね」。

エルゼ様が次に目をつけたのは、あまりに悲劇が多すぎて「資産価値がマイナス」になっている、とある絶望の世界。

一兆回死んでも終わらないループや、ガシャという名の不当景品に、エルゼ様の監査のメスが入ります!


エルゼ様の「多元宇宙M&A」を応援してくださる投資家の皆様、ぜひ【ブックマーク】と【評価】をお願いいたしますわ。

皆様の投資アクションこそが、エルゼ様の次元監査船を、次の不条理な世界へと加速させるのですから!

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