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『完璧すぎて可愛げがない』と婚約破棄されましたが、帝国の魔力供給・経済・外交を全て停止して隣国へ移住しますわ。――今更「戻ってきてくれ」? どこのどなたかしら?  作者: 桐谷ルナ
続編・第1章:多元宇宙監査機関MAA:不当な「悲劇」はわたくしが損切り(損害賠償)いたしますわ

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第23話:設定破壊(パッチ適用)。……「幼馴染」は、投資回収のフェーズに入りましたわ

「――キャアアアアアッ! な、何よこれ、何なのよぉ!」


 文化祭で賑わっていた廊下に、場違いな絶叫が突き刺さりました。

 わたくしの視界の端で、先ほどまで「焼きそばの売上」を表示していたグラフがノイズと共に消え、代わりにどす黒い警告文が埋め尽くしていきます。

 ――$[Genre Contamination: Love-Comedy 45% / Panic-Horror 55%]$


 教室の入り口。

 そこには、皮膚が灰色の粘土のようにただれ、眼球が不自然に肥大化した「何か」が、ズルリと這い入ってきていました。

 それは間違いなく、この学園ラブコメの世界には存在しないはずの――『異ジャンルの怪物』。


「ひ、ひぃぃぃっ! け、健一くん助けて! 怖い、怖いよぉ!」


 陽菜様がケンジ様の腕にしがみつき、なりふり構わず泣き叫びます。

 対するケンジ様も、足の震えが止まらず、腰が抜けたようにその場にへたり込んでいました。

 二人の間にあったはずの「運命の輝き」は、死の恐怖という名の圧倒的なコストの前に、見るも無残に霧散しています。


「……五月蝿うるさいですわね。シグルド様、その『産業廃棄物』がわたくしのドレスに触れる前に、適切に処理してくださる?」


 わたくしは紅茶のカップをソーサーに戻し、計算尺を静かに弾きました。


「……。ああ、エルゼ。……。ようやく俺の領分だな。……。エプロンのままなのは不本意だが、この程度の雑魚、瞬きする間に『清算』してやる」


 シグルド様がコテを置き、黄金の剣をゆっくりと引き抜きました。

 彼が放つ圧倒的な魔圧が、廊下に充満していた死臭を強引に上書きしていきます。


「……。待って。シグルド様、エルゼ様」


 その時。

 震える声で、けれど力強く、サトミ様が一歩前に踏み出しました。

 彼女も顔は青ざめ、膝は笑っています。ですが、その瞳はエルゼ・フォン・アシュバッハが授けた『経営者の視点』を失っていませんでした。


「……。サトミ様。……。恐怖によるリソースの浪費、感心いたしませんわよ?」


「……。分かってます。……。でも、私が今逃げたら、この店(教室)の売上が……みんなで作った在庫が、全部『損失』になっちゃう。……。エルゼ様、私に指示をください。……。私、このバグに負けたくない!」


 サトミ様は、泣き叫ぶ陽菜様を一瞥し、そして……はっきりと、憐れむような目を向けました。

 それは、物語の『主役』を演じることしか能のない、薄っぺらな資産への決別。


「……。ふふ。……。よろしいですわ。……。サトミ様、あなたは客の避難誘導と『備品の保全』を。……。シグルド様、あなたは廊下のゴミを全て『不法投棄物』として破棄。……。わたくしは、このジャンル違いの不法侵入を招いた、元凶の管理責任コンプライアンスを問いに行きますわ」


 シグルド様が剣を一閃させた瞬間、教室に侵入しようとした怪物は、一声も上げずに黄金の光に飲み込まれ、粒子となって霧散しました。

 戦いですらありません。単なる『システムのデバッグ』です。


「――おやおや。……。これでもまだ『ハッピーエンド』を続けるつもりですの?」


 空中から、不機嫌そうな管理者の声が響きます。

 わたくしの足元。床が不自然に波打ち、廊下のテクスチャが「グレーの格子模様」に剥がれ始めました。


「管理者様。……。このホラー演出、わたくしの査定では『演出過剰による客離れ』が確定しておりますわ。……。本来のターゲット層を無視した急な路線変更は、コンテンツの自殺行為ですわよ?」


『うるさいわね! ……。もういいわ、この世界ごと消去デリートしてやる! ……。あなたたちと一緒に、ゴミ箱へ行きなさい!』


 その言葉と共に、窓の外の景色が真っ黒な「虚無」に飲み込まれ始めました。

 校舎が、空中に浮いたまま、端から順に消えていく。


「……。エルゼ。……。床がなくなっているぞ。……。さすがにこれは、剣で斬れる範囲を超えているな」


 シグルド様がわたくしの腰を抱き寄せました。

 床の消失。重力の崩壊。

 ですが、わたくしは震えもしませんでした。


「……。サトミ様。……。わたくしの手を握りなさい。……。あなたの『十年間』という名の累積投資、一単位も無駄にさせないと言いましたわね? ……。わたくし、一度手に入れた資産は、たとえ世界が消えても手放しませんの」


 わたくしは計算尺を最大まで引き伸ばし、世界のコードへと直接、最後の一撃パッチを打ち込みました。


「――全権掌握テイクオーバー。……。管理者様。この世界を、わたくしがまるごと『買い叩かせて』いただきますわ!」


 世界が白光に包まれます。

 

 準備は、すべて整いましたわ。

 

 ラブコメもホラーも、すべてはわたくしの『ポートフォリオ』の一部。

 物語の終わりを告げる「消去」ですら、わたくしの利益の前では単なる『清算プロセス』に過ぎませんのよ。

ホラー展開を「産業廃棄物の処理」として一蹴し、ついに世界の「運営権」そのものを力技で買収しにかかるエルゼ様。

もはや彼女を縛れるジャンルも、ルールも、この次元には存在いたしませんわ。


恐怖を克服し、冷徹に「損益計算」を行ったサトミ様。彼女もまた、エルゼ様という最強の経営者の下で、本物の「ヒロイン(資産)」へと羽化を遂げました。


しかし、怒り狂った管理者が発動した「世界消去」。

真っ白な虚無に包まれた学園で、エルゼ様が次に打ち出す「再建計画」とは……?


次回、第24話。

「物語の廃棄処分。……未完のハッピーエンドなんて、負債でしかありませんわ」。

世界の消去すらも「合併買収(M&A)」の一環! エルゼ様の次元監査、ついに物語の「骨組み」を剥き出しにしますわよ!


エルゼ様の「世界買収」を見届けたい方は、ぜひ【ブックマーク】と【評価】をお願いいたしますわ。

皆様の投資アクションが、エルゼ様の監査能力を「全次元対応」へとアップデートさせるのですから!

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