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『完璧すぎて可愛げがない』と婚約破棄されましたが、帝国の魔力供給・経済・外交を全て停止して隣国へ移住しますわ。――今更「戻ってきてくれ」? どこのどなたかしら?  作者: 桐谷ルナ
続編・第1章:多元宇宙監査機関MAA:不当な「悲劇」はわたくしが損切り(損害賠償)いたしますわ

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第20話:監査執行:放課後の屋上。……告白のランニングコストを計算なさい

「――やめて。聞きたくありませんわ、そんな低コストなセリフ」


 オレンジ色の夕闇に染まった、学校の屋上。

 本来なら、ここでケンジ様が陽菜様に愛を誓い、サトミ様が物陰で涙を流す……そんな「不採算極まりないイベント」が執行される予定でした。

 

 今まさに口を開こうとしていたケンジ様の前に、わたくしは扇子を突きつけて割り込みました。


「な、なんだよまたあんたか! 空気を読めよ、今いいところなんだぞ!」


「いいところ? ……あら。……わたくしの計算では、あなたの今の脳内リソースの九割が『夕日の演出』と『BGM(幻聴)』による一時的なバグに占拠されていますわ。……そんな不安定な状態で人生の重要な契約(告白)を結ぶなんて、瑕疵かし物件を無知な消費者に売りつける詐欺行為と変わりませんわよ」


 わたくしは一歩踏み込み、ケンジ様の隣で「悲劇のヒロイン」を演じようとしていた陽菜様を冷徹に射貫きました。

 彼女の周囲では、前話よりもさらに濃い「運命の糸」がうごめいています。

 ――$[Warning: Event Trigger Forced. Logic Error 404]$


「……陽菜様。……あなたのその、潤んだ瞳。……一回につき周囲の男性の判断力を一五パーセント低下させる『補助金バフ』が働いていますわね。……ですが、残念でしたわ。わたくしの会計監査に、そんな情緒的な補正は一単位も通用いたしませんの」


「う、うるさいな……! 健一くん、行こう? この人、頭がおかしいよ……っ」


 陽菜様がケンジ様の腕に縋り付いた瞬間、屋上のフェンスがギチギチと音を立て、空間そのものが赤く点滅し始めました。

 世界のシステムが、「予定された結末」へと強引に導こうとしています。


「……シグルド様。……ノイズが、五月蝿うるさいですわ」


「……ああ。……この世界の『書き手』とやらは、よほど自分の台本通りにいかないのが気に入らないらしい。……エルゼ、あの不気味な糸、まとめて断ち切っていいか?」


 シグルド様が黄金の剣の柄に手をかけた瞬間、屋上に暴風が吹き荒れました。

 

 ですが、それよりも早く動いたのは――サトミ様でした。


「……健一くん。……もういいよ」


 物陰に隠れるはずだったサトミ様が、凛とした足取りで二人の前に進み出ました。

 その瞳にはもはや一滴の涙もなく、エルゼ・フォン・アシュバッハが授けた「資産としての自尊心」が燃えています。


「サ、サトミ……?」


「『一人で大丈夫』って言ったよね。……うん、その通りだった。……今の健一くんを見てると、私、なんであんなに必死に尽くしてたんだろうって……自分の投資判断の甘さに、吐き気がするの」


「な……っ!?」


「陽菜さん。……健一くんをあげる。……。でも、その前にエルゼ様から言われた『賠償金』の請求書、あなたの家の方にも届くようにしておいたから。……。愛があれば、十億円くらい安いでしょ?」


 サトミ様の放った、あまりにも合理的で、かつ冷酷な「損切り」。

 

 その瞬間、陽菜様を包んでいた「運命の光」がガラスのように砕け散りました。

 ヒロインとしての特権を支えていた『当て馬の絶望』という名のエネルギーが消失したからです。


「……ふふ。……素晴らしいですわ、サトミ様。……資産価値の最大化、完了ですわね」


 わたくしは満足げに計算尺を閉じました。

 

 崩れ落ちるケンジ様。ヒステリックに叫び始める陽菜様。

 もはやこの屋上に、甘酸っぱいラブコメの余韻など一単位も残っていません。

 あるのは、破綻した事業計画の残骸だけ。


 しかし。

 わたくしの視界に、かつてないほど巨大な黒いノイズが走りました。

 ――$[Critical Error: Plot Destroyed. Administrative Access Requesting...]$


『――エルゼ・フォン・アシュバッハ。……。あなた、やりすぎですわ。……。読者が求めているのは、こんな「冷徹な精算」ではありませんのよ?』


 空が割れ、そこから現れたのは。

 現代の女子高生の制服を着ているものの、その瞳に銀河を宿した「この世界の管理者」――。

 

 準備は、すべて整いましたわ。

 

 ラブコメの神様。……。わたくしの監査、ついに「経営陣への直接尋問」に移行させていただきますわよ。

「告白イベント」を、十億円の請求書で上書きする……。

エルゼ様の合理的なデバッグにより、ラブコメ世界の王道プロットが木っ端微塵に粉砕されましたわ!

サトミ様自身の口から放たれた「損切り」宣言、これこそが真の格付け完了ですわね。


シグルド様も、ついに姿を現した「管理者」の気配に、不敵な笑みを浮かべております。


次回、第21話。

「ラブコメの神(管理者)、降臨。……規約違反につき、この世界を差し押さえます」。

ついに始まった、エルゼ様vs世界の神。

物語を「商品」としてしか見ていない神に、エルゼ様が本当の『価値』を教え込みますわよ!


エルゼ様と神の真っ向勝負を期待してくださる皆様、ぜひ【ブックマーク】と【評価】をお願いいたしますわ。

皆様のその「投資アクション」が、エルゼ様の監査権限を神をも超えるレベルへとブーストさせるのですから!

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